◎ Tears(3/3頁)
ぬる、と狭い入り口からは想像も出来ないほど柔らかい内壁に指を滑らせる。左手で尻尾をぐにぐにと揉み、右手で後孔を解している。奥村くんの両手はもうぺたりと力尽きたように布団の上に投げ出されていて、時折シーツを引っ掻いていた。
「あ、あっ…、んぁ…っ」
「まだ2本しか入ってへんけど、も、ええ?」
指を引き抜くと自分の勃ちあがったものを後孔に押し付ける。
蕩けた瞳と目が合い、小さく頷くと同時、だらしなく唾液を零す真っ赤な唇が「しま」と呼んだ。
「…廉造て、呼んでええよ」
なぜ急にそう言ったのか、自分でもわからなかった。
奥村くんのふわふわと快楽に酔ったように蕩けていた眼が、ぱちくりと大きく見開かれる。
「…いい、の…?」
ほろほろと零れる涙は、どうしようもなく俺の心臓の辺りをぐちゃぐちゃにかき乱す。
ぱくぱくと言葉を失ったように、唇だけで「れんぞう」と紡ぐそのしぐさがむず痒くて、その口を自分のそれで塞いだ。
ず、と狭い内壁を押し進めるように腰を押しつけると、悲鳴のようなくぐもった声が口内に響く。
一番奥を穿ったまま腰を止め、震える痩躯を抱きしめる。
唇を離せば、「れんぞう、れんぞう、」と舌っ足らずな声が何度も俺を呼んだ。
熱くて狭い奥村くんの胎内は、まるでぎゅうぎゅうと苦しいくらいに抱きしめられているみたいだった。
「れんぞう、すき、好き――れんぞ、っン、」
ツン、と痛みだした目頭に気付かないふりをして、奥村くんの体を欲望のままに揺さぶり始めた。
「あ、あぅ、っン、あ、あ」
奥村くんの顔が心配そうに歪められる。シーツの上に投げ出されていた手がゆっくりと持ち上がり、俺の頭を柔らかくくしゃりと抱いた。
「奥村くん、っ…っ、」
ギシギシと軋むベッドの音は、まるで俺の頭の中から鳴っているみたいで、奥村くんの腰を、まるでしがみ付くように抱きしめながらひたすら快感を貪ることに集中する。
「あぁああ…っあ、も、っっれんぞ、ぉ…!!」
甘い鳴き声が絡みつくように一層腰を重くさせる。
ぞわぞわと腰の付け根から突き上げるような快感に、1滴残らず白濁を熱くうねる体内へと吐き出した。
「――っは、あっ、」
「ふぁ…、れ、んぞ、」
どぷり、どぷりと注ぎ込まれる精液の感覚に腰を震わせ、奥村くんはふわふわと嬉しそうに笑った。
空虚が埋まっていく。
吐き出した精は奥村くんの胎内に受け止められて、それは何の意味も持たないことだったけれど俺は温かくなる胸に無性に泣きたくなってしまった。
(なんで、逃げへんかったんや――)
全身で感じる奥村くんの愛情は、ひたすら真っ直ぐに俺を射抜き、包む。
怖かった。
生まれた時から、喉から手が出るほど渇望していたものを与えられるのは、怖かった。
じわじわと体中に浸透していくその形のないものは、最高の薬であり、けれど俺にとっては毒でもあるのだ。
Tears
(涙)
志摩の中にはとっても弱い部分があるような。
渇望して絶望してひねくれたんだよアピールの回(え?)
次回一応最終話です!後日談は書く予定ですが、次回でハピエンでございます!
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