11 tears-2 | ナノ


Tears(2/3頁)

志摩が、泣いた。

ズキズキと心臓は痛かったけど、志摩はもっと痛いんだろう。


『もう、逃がしたるよ、奥村くん。』

丁度一週間前に言われた言葉が頭の中に蘇る。
疲れたように志摩が笑って、そう終わりを告げられた。

優しいキスと、疲れた声はちぐはぐで、なんだか志摩がどっかに行ってしまいそうな気がした。いつか来るんだと思っていたその終わりを告げられたことよりも、サラサラと崩れてしまいそうな志摩の方が怖かった。

ぱた、ぱた、と静かに落ちる涙を唇で拭ったけれど、次から次から溢れてきてしまう。
俺はどう頑張ったって、志摩の彼女にはなれない。
それでも許して欲しかった。傍に居ることを。
彼女の代わりでもいい、次に彼女が出来るまでの繋ぎでもいい。俺に八つ当たりしたっていいし、彼女を思い出さないための暇潰しでもいい。


「志摩の、傍に、居させて、」


気が付いたら志摩の涙が移ったみたいで、俺はしゃくり上げながら泣いていた。
泣きながら、志摩をぎゅうぎゅうと抱きしめていた。

「ええ加減にしときぃ、戻れんなんで、」

「戻れ、なくていい」

「…同情でも?」

「うん、いい。」

「…暇つぶしでも?」

「暇な時で、いいから」

「…穴埋めでも?」

「志摩の中に俺の居場所があるなら、嬉しい。」

じわり、と肩に温かい染みが広がっていく。

「…なんで、俺なん」

「…わかんねぇ」

本当に、わからなかった。
ただ、あの日、夕焼け色の瞳を見た日に恋に落ちたのだと思った。
あの一瞬を言葉で説明しようと思っても、できないのだ。

「なぁ奥村くん、えっちしよ、」

いつものように飄々とした風を装ったその声は、なぜか小さく震えていた。まるで、迷子の子供みたいだった。

「うん、」

ぎゅ、と志摩の首に手を回したまま、頷く。

「ふふ、あほやぁ、奥村くん。酷すんで、」

「いいよ、」

くるりと体を回転させられたと思ったら、ベッドに転がされていて、志摩が俺の腰に跨っていた。
ぷちぷちとシャツのボタンが外されていく。夏の夕方は明るくて、電気の付けていないこの保健室も、カーテンを抜けて入りこんでくる西日でオレンジ色に照らされていた。

そっと志摩の顔が降りてきて、志摩の鼻が俺の鼻を掠める。
夕焼け色の志摩の瞳を目に焼き付けて、俺はゆっくりと目を閉じた。





+++





柔らかい奥村くんの唇に自分のソレを重ね、ちゅ、ちゅと啄ばむように下唇を食む。
桜が色付くように頬や耳や首元が淡く朱に染まっていくのが好きだった。

このどうしようもない空虚な空っぽの体をどうにかしたくて、人と体を繋げるようになったのはいつからだっただろう。
たぶん、中1か中2か、まぁその辺だったと思う。初めてセックスした女は3歳上だったことだけは覚えているけど、顔は忘れてしまった。
誰でもよかったのだ、この空虚を一瞬でも感じることがなくなるのなら。

ぎゅう、と柔らかな、けれど女の子より骨ばった体を抱きしめる。じわりと伝わる体温が、俺の空虚を満たして行く。

「しま、」

優しい声が俺の鼓膜を震わせた。

――阿呆や。ほんまに、阿呆や、奥村くん。

俺の傍に居てどれだけ酷い目に遭ったのか、まるで忘れてしまったように優しい声で俺の首にぎこちなく手を回す。
さらさらとした素肌に手を這わせると、ぴくりぴくりと体が戦慄いた。

「っん、…っ」

小さな胸の飾りを指でくにくにと弄るとそこはすぐに固くなり、ぷくりと主張し出す。カリカリと爪先でひっかくようにすれば、押し殺せなかった声が喉奥で小さく鳴った。

「声、出して。」

「っぁ…っ、ここ…がっこ、っ」

学校や塾で何度もセックスしたというのに、未だに奥村くんは少し怯えたようにちらりとアコーディオンカーテンへと視線を彷徨わす。

「あぁ、そやなぁ…鍵もかけてへんしな、」

びく、と固くなった体をほぐすように胸に吸いつけば、緊張と快感の間で彷徨う奥村くんの腰が素直に揺れる。
快感に抗えたことなんてないくせに、と思いながらもするすると腰を撫でるように下肢に滑らせると、ぶわりと奥村くんの体温が上がった。

「っあ、しま……っ鍵、ッ」

「誰も入ってこんよう、祈っとき、」

そんな、と真っ赤になった顔で、けれど無理やりこの行為を終わらせようとするわけでもなく奥村くんが呟く。
ベルトを外してズボンを引き抜くと、ボクサーを押し上げるようにして主張するソレが視界に入った。明るいうちから晒される羞恥よりも、人に見つかるかもしれない恐怖よりも、緩い快感を鋭利に捉える体に少し苦笑を洩らす。
下着の上から竿の部分に弱く噛みつくと、ひ、という高い声が上がった。
とくとくと脈打つそれを食みながら上へと上っていく。先端からじわりと先走りが滲み、下着に染みを作った。

「あ…あ…しま、そんなの、あっ、やめ…っ」

震える手が弱弱しく俺の髪を掴んで、そこから離させようと軽く引っ張る。見上げれば羞恥に塗れた顔で奥村くんが俺を見ていた。その顔に少しだけ期待の色が滲んだのを見た俺は、先走りを滲ませる先端に下着の上から噛みつく。

「イあっ…!」

じわ、とまた先走りを滲ませる体は、多少の痛みも快感に擦りかえられるほど淫猥だった。

下着をずらすとふるりと姿を現した先端を口内へと導く。じわりと舌に乗った初めて味わう精液は、とろりとして少ししょっぱくて、そしてどこか甘かった。

「あぅ、あっ、あ、し、まぁっ…あぁぁ…」

びくびくと跳ねる太股に挟まれて、髪を掴むのをやめた指が震えるように頭皮を撫ぜる。口を離して下着を脱がせれば、竿から伝った俺の唾液と奥村くんの先走りが混ざったものが、とろりと後孔にまで伝い落ちた。
ひく、と一瞬収斂する入り口に、指を這わせる。

「あ…っ」

「奥村くんはコッチのが気持ちええ?」

くぷりと指を含ませた瞬間、全身が小さくふるりと震えた。



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