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男が奥の部屋に姿を消し、ワインを持ってこっちに戻ってきた時、反対側にある大きな扉が静かな音を立てて開いた。

コツ、コツという固い靴の音が、磨かれた床にぶつかって嫌な音を立てる。
天井から盛大に照らされた明かりの下で、アーサーは不敵に笑って俺に近づき、そして通り過ぎて煌びやかに飾られた大きな椅子に座った。
音もなく俺を案内した男が近づいて、グラスに静かにワインを注ぐ。

ぎり、と唇を噛みしめてアーサーを睨むと、斜め上から不敵な笑みが降ってくる。

「ここに膝を着け」

コツン、と鞘におさめられた剣の先で自分の目の前を示したアーサーに、ゆっくりと近づいていく。
足を切断された痛みを、肩から腰にかけて深く斬られた痛みを思い出して、嫌な汗が背中を伝う。
けれど歩みを止めるわけにはいかない。俺が拒否すれば、その矛先は全て雪男へ向かってしまう。

見おろすようにアーサーの目の前に立つと、ゆっくりと両膝を床に着けた。

「言うことがあるだろう?」

椅子に座り組んだ足先が、俺の顎にかかり、そのままぐいっと上を向かされる。

「…雪男には…何も、しねぇでくれ…頼む、」

顎にかかっていた爪先が外れた瞬間、ガツッと頬を蹴り飛ばされた。

「――っ、」

じんじんと痺れるように痛む頬骨を抑えていると、アーサーが小さく笑う。

「言葉がなってないな」

引いていく頬の痛みに反するように、心臓がぎゅうぎゅうと痛んだ。
悔しい、悔しい、悔しい。今の俺には、ただ従うしか、へつらうことしか出来ない。

「…っ、ゆきお、には…何も…しないで、ください…」

膝を折り、手を付いて、頭を下げて、請うことしかできないのだ。
悔しさにじわりと涙が浮かび、ぱたた、と張った水膜が雫になって床に零れた。

「いいだろう。」

組んでいた足を降ろしたアーサーに、今度は大きな手で顎を掴まれる。

「証明してみろ。お前が、俺に逆らわないという証明を。」

「…??」

意味が分からず見上げた俺に、また嘲笑するようにアーサーが哂う。

「ふ、本当にお前の脳みそは小鳥程度だな。」

そう言ってアーサーは掴んでいた俺の顎を放すと、特注の制服の前をはだけ、ベルトのバックルを外した。
その行動に、ぞわっと背筋に寒気が走る。

「これでお前にも意味が分かるだろう?その口で、咥えて奉仕しろと言ってるんだ。」

床に着いた手が震える。吐き気で胃がたまらなく気持ち悪かった。
動かないままの俺に、追い打ちのようにアーサーが言う。

「嫌なら貴様の弟が『対価』を支払うだけだが?」

「だめ、だ!」

弾かれたようにそう叫ぶと、カラカラに渇いた喉を潤すように唾液を喉へと送り込んだ。
震える手をアーサーの真っ白な制服へと伸ばす。
他人の、それも男の下着に手を突っ込むなんて、それだけで嫌悪感でいっぱいなのに。

「さっさとしろ。わざわざ俺の時間を割いてやってるんだ。」

こんなじわじわとした屈辱を与えられるなら、いっそ聖水をかけられた方がマシだった。
でもこれが、すぐに傷の癒えてしまう俺に対する、アーサーの考えた罰なのか。

俺の行動が全て雪男の命に関わる今、嫌だなんて言う権利は俺にはなかった。
覚悟を決めて、下着の中からアーサーのモノを取り出すと、未熟な自分のものとは違うそれに、また勝手に手が震えた。

「っ…」

ぎゅ、と目を瞑って、そろりと舌を伸ばす。
必死に吐き気を堪えてぴちゃり、ぴちゃりと先端を舐めれば、頭の上から大げさなため息が聞こえる。

パチン、とアーサーが指を鳴らしたと思ったら、隣に居た男がワインをテーブルに置いて近づいてくる。

「性行為は女性相手しか経験がありませんが。」

「大して変わらん。」

頭の上でかわされる意味不明な会話に呆けていると、止まっていた口淫に苛立ったアーサーに髪の毛を掴まれた。

「い゛っ…!ぐ、う゛ぅう…!!」

髪の毛を引っ張られると同時、口に触れていただけだったアーサーのモノが、舌を押さえつけるようにずぐずぐと入り込んでくる。
舌で押し出そうとしても、髪を掴まれたまま大した抵抗なんてできずにそのまま喉の奥まで突かれ、からっぽの胃から何かがせり上がってくるような酷い吐き気に襲われる。

「ん゛う!!う゛っぐ、ン、」

「歯を立てたら殺すぞ。」

何度も何度も喉の奥を突かれ、吐き気と苦しさでじわりと涙が滲む。
強制的に揺さぶられる頭もガンガンしてくる。
崩れそうな体を誰かに支えられるような感覚がして、あの男だと理解するよりも先に、ずるりとズボンと下着を引き下ろされた。

「んうう!!」

「エンジェル、少しの間だけ彼を動かさないでいただきたいのですが。」

抵抗するどころか、振り向くことすらできない俺の後ろで、この状況に全く合わないような穏やかな声がかけられる。
そしてその声と同時に、揺さぶられていた頭がピタリと止まる。けれど口の中に含まされたままで、吐き気のせいで溢れてくる唾液がぼたぼたと隙間から零れ落ちた。

「っぅんン…!」

尻の肉を広げられ、羞恥に目を瞑るしかできない。
数時間前に行われた、あの痛みを、灼熱を、苦しみを再現されるのかと冷や汗が流れた瞬間、ぬるり、と温かくてぬめった、まるで生き物のようなものがソコを這った。
ぬるぬると何度も行き来する何かが、ぬぷりとそこから入り込んでくる。

「ん!!んうう!!」

「早くしろ、つまらん。」

アーサーが俺の後ろに居る男に、心底つまらなさそうに言う。
ぬぷ、とぬめった何かが出て言って、代わりに冷たくて細長い何かがするすると押し込まれる。
体内を引っ掻くようなしぐさで、それが指だと分かった。

「魔神の仔。何をお前まで暇そうにしている。俺は奉仕しろと言ったはずだが?」

また、ぐいっと前髪を掴まれて、アーサーの冷たい眼が俺を見下ろす。
ずるりと口の中から引き抜かれ盛大に噎せていた俺を、下半身が勝手に痙攣するような、強烈な快感が襲った。

「あ、あぁあ…っ…!?」

内壁の腹側、そこを引っ掻かれると、びくびくと勝手に太股が痙攣する。

「な、なんで…っ」

じわりと熱を持ち始めた自身が理解できなくて、振り返って男を見た。
相変わらず柔らかく笑うその男は、全く表情を崩さない。

「ん、んっ、あ、ぁう…」

ふるりと全身が溶けそうな感覚に震える。
その瞬間、パシンッと乾いた音が鳴って、遅れて左頬がジンジンと痺れるように痛かった。

「もう快楽を覚えたか。獣め。」

かあっと羞恥で顔中に熱が溜まるのを抑えられない。

「ち、ちがっ…」

「お前がすべきことは何だ?」

掴まれた髪、頬に押しつけられるソレ。
こくりと喉を鳴らした俺は、またそっと赤黒くグロテスクなソレに舌を伸ばした。


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