偽りの泪 (5/6頁)
「ああ、あ、っう」
ぐちゅりぐちゅりと水音が嫌に耳に響く。雪男のせいえきの音だという。
昨日の夜から信じられないことだらけで、夢であってほしいのに全く覚めることのないリアル感。
寮という閉鎖的な空間はまるで世界から切り離されたみたいに、俺達以外の声や物音がしない。
内壁を擦られるとぞわぞわと背筋が痺れ、その中でも「ぜんりつせん」というものに雪男が触ると怖いほどの快感が脳天まで突き抜ける。
喉がカラカラに乾いて、もう何も言葉を出したくないのに、雪男の指が動くたび声が勝手に喉からこぼれていく。
その声も自分の口から出ているとは信じ難い、自分ですら聞いたことのない自分の声。
「っあああ!」
ぐりゅ、とまた強く「ぜんりつせん」を潰すように擦られて勝手に足が跳ねた。
手際良く括られた左手と左足を拘束するネクタイも外れそうにない。
足を動かせば手も引っ張られ、手で抵抗しようと思えば足が引っ掛かって動かせない。
根元でキツく戒められた自身は、ジンジンと限界を訴えていて。
そのうち頭の中までぐちゃぐちゃになって何も考えられなくなる。
「ぃあッ、あ、ンうあ、あ、っ」
何度も何度もそこを擦られ続け、ぶるぶると勝手に足が痙攣する。
腰の付け根から、何かが這い上がってくるような感じがして、思わず叫んだ。
「い、やだ、ゆき、こ、こわい…!」
「大丈夫だよ、兄さん。……後ろだけでイけそうだね」
「っあ、あ、や、」
まるで波に攫われるように、ソレはやってきた。
「や、ゆき、ゆきっ、う、ああぁぁああぁああア!!」
ビクビクと体が跳ね、何度も痙攣するように、腹筋と太ももが小さく波打つ。
「ふあ…あぁ、ぁ」
思考も感情も全てが攫われたままで、自分の中がからっぽになったような感じがした。
「っン!」
べろりと雪男が首筋を舐める感触にも体が跳ねる。
「ふふ、ねぇ、空イキってそんな気持ちいいの?」
すぐ近くで喋っているはずの雪男の声が、水の中で聞いているみたいにうわんうわんと揺れて聞こえる。
もしかしたら脳みそが溶けているからかもしれない。
「見て、兄さん。出してないんだよ」
「うぅあ!あああ!っや」
充血した自身をずりゅ、と擦られ、自分のそれがまだ、さっきと同じ状態であることを見せつけられる。
そんなわけない。だって、じゃあ、さっきのは何だったんだ。絶頂の上をいく快感は。
だけど、確かに射精感はずっと残ったままで、前は苦しいままだった。
「タマもパンパンに膨れてる。舐めてあげようか?」
「や、ぁア―――!!」
また、知らない快感に腰が引ける。
「も、もう、…ッ」
もういやだ。
吐き出したいという感情と、強すぎる快感から逃げたい感情と。
じわじわと視界が歪んできて、あぁ、涙か、とぼんやり思った。
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