◎ Period(4/4頁)
綺麗なものを汚した。
自分に近づいた嬉しさと、汚してしまった悲しさと。
『廉造、燐くんちょーだい』
『あかん』
あの日。
金兄の言葉に、気付いたら即答していた。
案の定「なんで?」と聞き返してきた金兄に、俺は答えに詰まった。
その答えは、触れずにいた1カ月まるまるかけても、出ることはなく。
痛み続ける胸は、昨日よりもさらに酷い痛みを俺に与えた。
(なんやねん…これ。)
奥村くんが持っていたタオルで適当に汚れた体を拭ってやると、ついでに汚した床も拭く。
「あー。このタオル、もー使われへんな。」
何も考えずにそう言っただけの言葉に、奥村くんは真っ赤になって泣きそうな顔をした。
「よ…汚して…ごめ、ん」
「いや、別に奥村くんのやし怒ってへんけど」
「あ、う、うん…」
「歩ける?」
小さく頷いたのを見て、先に歩き出した。奥の扉の向こうでピィーと笛の音が鳴ったから、そろそろ片付けが始まってしまう。
「はよ出な人来んで?」
震える手でベルトを締めて、よたよたと追いかけてくるその姿があまりにも哀れで。
入ってきた通路を抜け、渡り廊下の端にあったゴミ箱にタオルを捨てて、廊下を渡った右のトイレで手を洗う。
俺に倣うようにして手を洗っていた奥村くんの頬に、濡れたままの手を添えると、不思議そうに奥村くんが俺を見た。
また、無垢な顔をする。
ひどい。奥村くんは、ひどい。
(また、俺だけ汚いみたいやんか…)
いくら汚しても、一番真ん中は綺麗なままなのだ。彼を構成する核は、俺の手の届かないところにあって、いくら俺が干渉しようとも穢すことはできない。
汚れない彼に惹かれたのに、汚したと思ったら悲しくて、汚れないのだと知れば苦しい。
こんな感情、俺は知らない。
触れるべきじゃなかったのだ、最初から。
「…終わりにしよか。」
気付いたら、口が動いていた。
そうだ、これが俺の答えだ。考えるのに行き詰ったら、逃げてしまえばいい。
ぽかん、と。口を薄く開けたまま固まる彼にそっと口づける。
触れた時と同じようにそっと唇を離すと、自嘲するように俺はわらった。
「もう、逃がしたるよ、奥村くん。」
Period
(終止符)
は、はぴえんにします…よ…?(笑)
自分でもどうしてこうなった感満載ですが!
プロットなしで書くとこうなるか。
ケーキを食べる前はノンシュガーでみたいな。
今まで散々ブラックコーヒー飲ませてたくせに!
志摩くんからちゅっちゅさせたのがせめてもの甘さという(わからん)
次話から甘くします!たぶん!←
心残りはタイトルが前話とカブるということですね!誰も気にしてませんか!
だってこのワードがピッタリだったんだもの!
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