10 Period-ラスト | ナノ


Period(4/4頁)

綺麗なものを汚した。

自分に近づいた嬉しさと、汚してしまった悲しさと。



『廉造、燐くんちょーだい』

『あかん』

あの日。
金兄の言葉に、気付いたら即答していた。
案の定「なんで?」と聞き返してきた金兄に、俺は答えに詰まった。

その答えは、触れずにいた1カ月まるまるかけても、出ることはなく。

痛み続ける胸は、昨日よりもさらに酷い痛みを俺に与えた。

(なんやねん…これ。)



奥村くんが持っていたタオルで適当に汚れた体を拭ってやると、ついでに汚した床も拭く。

「あー。このタオル、もー使われへんな。」

何も考えずにそう言っただけの言葉に、奥村くんは真っ赤になって泣きそうな顔をした。

「よ…汚して…ごめ、ん」

「いや、別に奥村くんのやし怒ってへんけど」

「あ、う、うん…」

「歩ける?」

小さく頷いたのを見て、先に歩き出した。奥の扉の向こうでピィーと笛の音が鳴ったから、そろそろ片付けが始まってしまう。

「はよ出な人来んで?」

震える手でベルトを締めて、よたよたと追いかけてくるその姿があまりにも哀れで。



入ってきた通路を抜け、渡り廊下の端にあったゴミ箱にタオルを捨てて、廊下を渡った右のトイレで手を洗う。

俺に倣うようにして手を洗っていた奥村くんの頬に、濡れたままの手を添えると、不思議そうに奥村くんが俺を見た。


また、無垢な顔をする。

ひどい。奥村くんは、ひどい。

(また、俺だけ汚いみたいやんか…)

いくら汚しても、一番真ん中は綺麗なままなのだ。彼を構成する核は、俺の手の届かないところにあって、いくら俺が干渉しようとも穢すことはできない。

汚れない彼に惹かれたのに、汚したと思ったら悲しくて、汚れないのだと知れば苦しい。

こんな感情、俺は知らない。

触れるべきじゃなかったのだ、最初から。


「…終わりにしよか。」

気付いたら、口が動いていた。

そうだ、これが俺の答えだ。考えるのに行き詰ったら、逃げてしまえばいい。



ぽかん、と。口を薄く開けたまま固まる彼にそっと口づける。
触れた時と同じようにそっと唇を離すと、自嘲するように俺はわらった。



「もう、逃がしたるよ、奥村くん。」




Period

(終止符)






は、はぴえんにします…よ…?(笑)

自分でもどうしてこうなった感満載ですが!
プロットなしで書くとこうなるか。

ケーキを食べる前はノンシュガーでみたいな。
今まで散々ブラックコーヒー飲ませてたくせに!

志摩くんからちゅっちゅさせたのがせめてもの甘さという(わからん)

次話から甘くします!たぶん!←

心残りはタイトルが前話とカブるということですね!誰も気にしてませんか!
だってこのワードがピッタリだったんだもの!




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