◎ Period(2/4頁)
バタバタと鳴る複数の足音や、ダンっと踏みしめる音や、キュキュッとシューズと床が擦れる独特の音、それら全部が床を通じて響いてくる。
そして、すぐそばのコートで試合をしているクラスの声も。
「…ン、っんぅ」
そんなすぐ傍で、俺は下半身を肌蹴けさせ、奥村くんは俺の前に跪いて顔を埋めている。
暗闇でも分かるほどに紅くなった頬。ちろちろ見える頬よりずっと紅い舌。はあっ、と熱い息が苦しそうに漏れる。
扉の向こうから聞こえてくる学生の声や足音に、びくりと体を跳ねさせる奥村くんの、前髪を退かすように撫でると、俺のモノを咥えたまま、驚いて俺を見上げた後に恥ずかしそうに目を伏せた。
この学園の誰よりも酷いセックスをしているというのに、奥村くんはいつまでも無垢だった。少し上手くなった口淫が不似合いなほどに、無垢だった。
「奥村くん、口ン中、出して、ええ?」
「…ん、」
奥村くんは歯がぶつからないように小さく頷いた。
「飲んでくれる?」
「ん、」
今度は不思議そうに見上げてから頷いた。
そういえば、飲んで、と言うことはあっても、飲んでくれる?なんて聞いたことなんてなかった。
ゆるゆると奥村くんの口の動きに逆らうように腰を動かすと、時々喉の奥に先端がぶつかる。苦しそうな声が上がって、それがジンっと余計腰を重くさせた。
「はぁ、イきそ、」
まるで合図のように、奥村くんが俺のものを吸い上げた。
「、っ……は、」
ぶるりと背筋が痺れて、吸われるままに精液を口の中へと吐き出した。
ぎゅ、ときつく眼を瞑った奥村くんの喉が、こくりこくりと何度も動く。
じゅ、と最後まで絞り取るようにまた吸われて、ぞわっと腰が抜けそうな快感が走る。
「口ン中、見して。」
ずるりと奥村くんの口から自分のモノを引きずり出すと、かわりに右手の親指を突っ込んで舌を押す。
真っ赤な舌の上に、微かに俺の吐き出した精液が残っていたけれど、あとは全てちゃんと飲み込んだみたいだった。
「…噎せへんなってんな」
今までは飲み込ませたあとは絶対にげほごほと咳き込んで噎せていた。
くしゃりと髪を撫ぜてやると、精液を難なく飲み込めるようになった淫乱のくせに、また無垢な顔をして嬉しそうに笑った。
「後ろ向きぃ」
手を引いて体を起こさせると、跳び箱に上半身を預けさせる。ベルトを緩めてズボンを下着ごと一気に引き下ろすと、びく、と振り返る。
「そーいや、久しぶりやんなぁ。」
ぐに、と双丘を左右に広げるように割ると、何も知らないような入り口がちゃんと口を噤んでいた。
毎日していた頃は少し紅くなって膨れたようになっていたし、最後に見た時は閉じきれずに柘榴のように口を開いていた。
それでも、唾液で濡らした人差し指を入り口に宛がうと、ひくんと期待するように戦慄いた。
「ふは、…覚えてるんや、ここ。」
金兄が来たあの日から、1ヵ月以上触れもしなかったし、二人きりで会話もしなかった。
まるで性欲がどっか行ってしまったように奥村くんに触るのを止めた俺に、奥村くんは少し悲しそうな顔をしたけれど何も言わなかった。
罪悪感を感じるのに疲れた。
楽しくて気持ちいだけのはずのセックスが、じくじくとした胸の痛みを生むのが嫌だった。
そんなことを思いながら、二人きりで少し会話をしただけですぐに体を繋げたくなった自分に哂いたくなる。
ぬるりと指を忍び込ませた久々の胎内は柔らかくて、けれど入り口は初めての時のようにきつかった。
「っん、ぁあ…!」
前立腺に触れた瞬間、びくんと体が跳ねて高い声が上がる。
「声抑えな、あかんえ。」
はっとしたように両手で自分の口を塞ぐ奥村くんに、追い打ちをかけるようにぐりぐりと何度も前立腺を抉ってやる。
「んんんんぅ!!っっ、ん、ぅンッ」
がくがくと膝が面白いほどに笑い今にも崩れ落ちそうなのを、跳び箱に必死にしがみ付いて耐えていた。
ぎりぎりまで引き抜いて2本目を添えて入れようとしたけれど、指を唾液で少し濡らした程度の滑りでは、窄まったそこは受け入れそうにない。
少し考えて、腰を突き出したような格好になっている奥村くんのそこに顔を埋めるように、身を屈めて舌を伸ばした。
「んン…!!し…しま…っ」
震えた小さな声に名前を呼ばれて、ようやく自分でも、自分が何をしているか再確認した。
入り口を丹念に舐め、指をぎちぎちに咥えこんでいるそこへとゆっくりと差し込んでいく。
「ぅぁ、や…!!し、ま…ぁっ、そん、な、とこ…っ」
荒い息に切れ切れになりながらも、羞恥と快楽の間で揺れる声が俺を非難する。
そういえば、後ろを舐めてほぐすなんてことしたこと無かった気がする。むしろ、奥村くんのをフェラしてやったこともなかったと思い出す。
まぁええか。そう思って思考に終止符を打つのは、いつものことだ。
入り口から少し舌を差し込んで内壁を舐めると、ぼたぼたと先走りが床を汚す。
唾液をたっぷりと中に送り込んでから、舌を引き抜いてすぐに2本目の指を差し込んだ。
「っは、ぁう、」
「ナカ、舐められるん気持ちよかった?」
指を動かしたまま、背に圧し掛かるようにして奥村くんの顔を覗き込む。
奥村くんは噛みしめていた自分の指を口から外して、蕩けた顔で頷きながら「恥ずかしい、」と小さく呟いた。
じわ、と胸に広がる温かいこれはなんだ。
ずっとじくじくと疼いていた罪悪感が溶けていくような。
「まだ2本やけど、もー入れてええ?」
奥村くんが拒否するわけないことくらい、分かっていたけれど。
真っ赤になった耳を後ろから舐めあげれば、奥村くんは何度も何度も頷いた。
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