鎖 (2/3頁)
じゃら、とソレ――奥村燐につけられた首輪からは、重い鎖が伸びている。その先を手にとり力任せに引っ張ってやると、ぐしゃりと簡単にその痩躯が崩れ落ちた。
「ふん、いい格好だな…魔神の落胤よ。」
「っぐ…、」
猿轡を噛まされたまま苦しそうにソレは呻いた。
踏みつければ、足の下で強い眼光が鋭く私を射抜く。
思わず くつくつと哂いがこみ上げた。
憎しみを通り越した先に、こんな愉悦があるとは。
「…かつて望みはしなかったか?―――壊れない玩具を。」
そうして私は、私とを取り囲む男どもを見渡した。
名前も覚えていない者どもだ。
(覚える必要もないが。)
パチン、とと指を鳴らすと同時、よく躾けられた獣のように男共が魔神の仔に群がる。
「う…う…!うー!!」
獣の唸り声を聞きながら、その広場の最奥、階段が数段設けられた位置にある煌びやかな椅子へと腰かける。
そしてワインを運ばせるとグラスを片手に、複数の腕がソレに群がるのを見た。
「う、ううう゛…!!」
暴れる四肢を押さえつける無数の腕に、振るわれる暴力に本能的に怯える体がちいさく震えていた。
馬鹿な子供だ。
心身ともに痛めつけるには、もっと確かな方法があることも知らずに。
「聖騎士(パラディン)の後ろ盾がある限り我らに罰が下ることはない。まぁ…魔神の仔などどう扱ったとて罰など下るわけもないがな。」
奥村燐を囲んでいた数人の男の一人が哂う。
「ンなことよりさっさと始めよーぜぇ」
「っ、う、うー!!」
太い指が細い足首を掴む。その瞬間、人を越えた力で暴れ出した奥村燐に手を焼く男共を見て小さくため息をついた。
「―――――」
呪詛を唱えた瞬間、バチバチッとこの場をぐるりと囲むように立っている柱に黒い電気が走る。
「っ、う、ぐッ…」
悪魔を捕縛するための結界に近い呪詛。唯一それに反応した悪魔、奥村燐の体からがくりと力が抜けた。
「…手間をかけさせるな。」
「は…い、すみません。」
返事をしたのと別の男が、服からナイフを取り出す。
ゆらりと奥村燐の蒼い瞳に恐怖の色が走った。動かない体と目の前に翳されたナイフ。
ぎゅ、と瞑られた双眸ににたりと哂った男が、Tシャツの裾にナイフをかけた。
ビィっと繊維が鋭く裂かれていく音に、驚いたように閉じた眼がまた開かれる。
「っう…!?」
纏う布の全てを引き裂かれた後は、驚きと不安と羞恥が奥村燐を襲う。
「へへっ…初モンなんだろ、こいつ。」
「あと6歳若けりゃ俺好みだったんだがな」
「肌なんかそこらのクソビッチより全然手触りいいぜ」
「ふ…う、ぐ、…ぅう!?」
べたべたと素肌を這いまわる人の手に、暴力を覚悟していた眼が彷徨う。
ここに集められた幾人は皆「普通」とは程遠い性癖を持ったものばかり。
「さあ、始めようではないか。宴を。」
一番年長の男が声高々に叫ぶ。
肩から腹にかけて斬ったはずの深い傷は、とっくに癒えていた。
悪魔め、と苛立つ半面、愉しくもあった。
どんなに痛めつけてもソレは醜い傷跡など残さない。
「ぅう!?ンうー!!う゛!」
体をひっくり返され獣のように四つん這いにされ、武骨な手が無遠慮に性器に触れる。
痛みに呻いても余計男達を悦ばせるだけで、カシャカシャと力無き抵抗に鎖が鳴った。
「誰かローションか何か持ってねーの?」
「良くしてどうすんだよ。無理矢理突っ込めよ。」
「どうせすぐ治るんだろ、コレ。」
何をされるか少しも理解していない奥村燐はただ怯え、言葉の意味を必死に考えている。
どうせ答えが出るよりも早く、答えを教えられることになるというのに。
猿轡を噛まされ、飲み込めずにいた唾液を指で掬った男が、その僅かなぬめりだけを頼りに、躊躇うことなく後孔へと指を埋め込ませた。
「んぐぅ゛、う――!!」
「うお、狭ぇー」
触れられたこともないだろう、その小さな狭い孔に男が感嘆の声を上げる。
「う゛、ぅう゛――!!」
すぐに増やされた2本目の指に、苦しそうに奥村燐が呻いた。
ワインの芳醇な香りには、もっと高らかな悲鳴が合う。
「…外せ。」
唇に触れてそう言うと、男の一人が小さく頷き、奥村燐の髪を掴み猿轡に手をかけた。
「げほっ、げほ、っぐ、あ、ッ、ぬ、けよ…ッ何してんだ、あぐ!」
猿轡を外されたと同時、子犬のように吠えるソレに髪を掴んだ男が楽しげに哂う。
「『何してんだ』だって。教えてやればぁ?」
「じゃあ、貫通させちゃいますか。」
それに答えるように、後ろに居た男がずるりと指を引き抜いた。
「ひぐっ、、っは…」
引き攣れるような痛みに顔を顰めた奥村燐は、これから受ける衝撃も痛みも知らずに、一瞬安堵の息を小さく吐いた。
後ろから意識を反らして髪を掴まれた男を睨み上げている。
後ろでは男がベルトを外して猛ったグロテスクなモノを外気に晒していることになど気付きもせずに。
「はな、せ…っあ…?ぅあ、あぁあああ゛ぁア―――!!?」
ひたりと入口に寄せられた熱を理解する間もなく、男の怒張が子供の体を一番奥まで貫いた。
「ああああ、う!!い゛た、いっ…や、ああ!!」
ぼろぼろと双眸から透明な雫が零れ落ち、がくがくと痩躯が痛みに痙攣する。
この声だ。この声を待っていたのだ。
「―っ、狭すぎて動けねぇ、っ」
ずるずると無理矢理引き抜くと、真っ赤な内壁が絡みつくように捲れ、切れた入り口からは鮮血を滴らせた。
「うああっ、ひぐ!あ゛!」
容赦なく再び穿たれるそれに悲痛な叫び声が何度も何度も漏れる。
「あ、ちょっと動きやすくなってきた。」
「あんまズタズタにすんなよ、次俺なんだから。」
好き勝手始めた若い男2人に、痺れを切らしたように周りに居た男共が手を伸ばし始めた。
「っや…、さわ…んなっ…あうう」
女とは違う小さな胸の突起にしゃぶりつくのは確か、ベドフィリア(幼児愛好家)の男だ。
「ひあ゛!!あ゛!やああ!」
首筋、二の腕、脇腹。柔らかい部分の肉を千切れる寸前まで噛むという理解に苦しむ性癖の男も居る。
「ちょっと、こっち側に来ないでくれます?被写体が映らない。」
奥にはその様子をカメラに収める趣味の男。
「よく集めたものだな。」
空になった私のグラスにワインを注ぐ男に嘲笑と賛辞を込めてそう言えば、男は柔らかい笑みを浮かべ、小さく頭を下げた。
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