09 祓魔塾生




ふわり、と。

1羽の蝶が、眠る彼の髪に止まった。



「燐ってさ、神様に近いのかもしれないね。」

幸せそうに眠る奥村燐を見ながら、何を思ったのか杜山しえみがそう呟いた。



「はぁ?サタンの仔がどう神様に近いって言うのよ。」

そう言ったのは神木出雲。

別に悪意があるわけでもない。

彼女は一番に現実を受け止め、受け入れた。

そして今、不思議に思ったからそのまま言葉にしただけだ。



「悪魔っぽくはないですけど、神様ゆうんは…なんか…」

次に答えたのは三輪子猫丸。

葛藤の末に仲間だと信じ、信頼を築いてきた。

すやすやと眠る奥村燐を覗きこんで、真剣に答えている。



「まぁ、予想不可能な言動は神がかってはるけどなぁ」

続いたのは志摩廉造。

空に浮かぶ雲のように、流されているかと思えば自由で。

片肘を付きながら、純粋に気に入っているだろう、二つ前の席で眠る彼を見てそう言った。



「神さんに失礼すぎるやろ!」

全否定するように答えたのは勝呂竜士。

対極の位置に居るようで、一番 奥村燐に近しい。

不真面目な態度を一括するように、けれど眠る彼を起こさない程度の声音でそう言った。



「………」

誰にも関わろうとしない宝。

やはり何も言わないものの、興味はあるのか、ちらりと彼を一瞥した。



「ちょうちょさんがこんな安心して止まってるんだよ。だから、燐はクロみたいに、神様に近いのかもしれないよ。」

ふわり、ふわり、と。

羽根を休める蝶を見ながら、杜山しえみが謡うように話す。

それはまるでお伽話のようで、眠る彼はその本の挿絵のようで。


なぜか、小さな沈黙が教室を包んだ。



(やはり、この子たちは飽きませんねぇ)

ピンクの毛並みをふわりと揺らしながら、メフィスト・フェレスは、奥村燐の膝の上で欠伸をひとつ噛みしめた。





(蝶を見てなんとなく思いついた短文。


そしてこの場に雪男が居たら↓

「え、兄さんが神様?ははは、そんなわけないじゃないですか。兄さんは全知全能ではありませんから。まぁ、天使ですけどね。この穢れのない寝顔、天使としか言いようがないでしょう?美しい羽根を持つこの蝶も兄さんを引き立てる髪飾りにしか…

という雰囲気ぶっ潰しのセリフしか思い浮かばなかったので外しました(笑)



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