ふたりの部屋1 | ナノ


ふたりの部屋(1/3頁)

隣では、すうすうと穏やかな寝息が聞こえる。僕は8度目のため息をついて隣を見た。
兄さんの左頬の下には、皺になった重なるプリント。そのプリントには口端から垂れた涎が小さな水たまりを作っている。

明日は定期的に行われる祓魔塾の小テストが5科目で行われる。僕が担当する悪魔薬学も然り。今日くらいは小テストに向けて勉強しなくちゃね、なんて言っていたのはつい1時間前の話だ。

「どうせ寝るなら、我慢する意味も無いよね?」

音を立てないように席を立つと、机に突っ伏して眠る兄さんの後ろに回り込む。
そうして、ちゅうっと首筋に吸いついた。

「――ッひゃっ!!」

「いたっ」

奇妙な声を上げて飛び起きた兄さんのせいで、思いっきり鼻を兄さんの後頭部にぶつけてしまった。

「もー、急に飛び起きないでよ。」

「お、お前が起きるようなこと、したんだろっ」

顔を朱に染めて首の後ろを押さえた兄さんが じとりと睨んできたので、今度はちゃんと唇に口づけをプレゼントする。

「〜っ!今日は、シないって、っンぅ!ん…っん、ぅ」

ぬるりと舌を忍び込ませればすぐに鼻から抜けるような蕩けた声を漏らすくせに。

椅子に座ったままの兄さんの顎を掴んで上を向かせ、覆いかぶさるようにして繋がる舌から唾液を流し込んでやる。小さく何度も喉を嚥下させては溢れないように飲み込んでいく兄さんは、こんな所だけ器用だ。

「…おいで。」

唇を離して、それでも息がかかるくらい近くで、潤む蒼い瞳から少しも視線を外さずに。

とろん、と兄さんの蒼が揺れた気がした。






*





兄さんの胎内に入れた僕の2本の指が、空気を含んで ぐちぐちと厭らしい音を立てている。
毎日セックスをするようになってから、ずいぶんと兄さんの後孔は柔らかくなった。初めての頃の、指1本にすら冷や汗を浮かべていた兄さんはもういない。

「あっ、あ…っう、んン…!っやあ…」

無意識に腰を揺らして、僕の指を前立腺に当てようと貪欲に快楽を求める体。

「ふふ、腰動いてるよ。2本じゃ物足りないの?」

「っ!!ちがっ…ひ、うっ!あ、あっ」

揶揄してやれば、兄さんは羞恥に顔を赤らめて否定する。

その噛みあわない言動が、堪らなく僕の欲を煽ることも知らずに。

少しの滑りを助けに、3本目の指もぬぷぬぷと容易く飲み込んでいく。1本目の指を入れてから前立腺には一度も触れることなく抜き差ししたり内壁を引っ掻いたり。

紅く色付いた胸の突起に吸いつくと、ぴくん!と内壁が歓喜に収縮した。

「っあ!あぅっ…んう…!っぁ、」

「こっちも最初より敏感になったよね。」

初めて兄さんの体に触れた時よりも、少し腫れたようにぷっくりして紅くなった。
ぴんっと斜め上を向いて立ち上がるそれは、女の乳房なんかよりもずっと可愛らしくて、卑猥に見える。

「っ知らな…っひんッ」

女と比べられるのを嫌がる兄さんは、乳房が無い胸を愛撫されるのも嫌いらしく、「女じゃないんだから」「そんなとこ触るな」なんて言っては拒絶する。

舐められただけでナカを締めつけるくせに。

吸われただけで甘い声を上げるくせに。

「あ、そうだ。」

胸から口を離した僕は、思いついた名案を口に出すことなく、にこりと笑った。

「な、んか…へんな、こと…考えてる、だろっ」

指をゆっくりと1本ずつ抜くたびに、ひくりひくりと声が詰まる。

「失礼だな。兄さんのことしか考えてないよ。…ねぇ兄さん、また、手だけでいいから縛ってもいい?」

兄さんは少し呆れたような顔をして「またぁ?」なんて言いながらも小さく頷いてくれた。

拘束癖のある僕は、時折兄さんの四肢の自由を奪いながらセックスがしたくなるのだ。
しょうがないな、なんて顔をしながら兄さんが両腕を出す。
そんな兄さんだって拘束されるほうが乱れるのだから、拘束趣味…もしくは被虐趣味があるのだと思うけど、指摘すれば恥ずかしがって逆切れするのが落ちなので黙っておく。

「今日は後ろがいいな。」

机の一番下の引き出しからロープを取り出すと、一瞬眉をひそめた兄さんに「おねがい」と念押ししてみる。

後ろで腕を拘束した時は、正常位ですれば背中の下敷きになる腕が痛くて、バックですればシーツに押しつけられる顎が痛くて、騎乗位は恥ずかしいらしい。
あまり好きではないのだと文句を言いながらも、僕の「おねがい」を突っぱねることに成功したことのない兄さんは、今日もまた渋々頷いてくれた。

このロープは対悪魔拘束具で、兄さんの力を持ってしても引きちぎったり解いたりはできない。

「ちょっと苦しいけど、ごめんね。」

背中側で両腕をしっかりと縛った後そのまま後ろに倒すと、自分の両腕で背中を圧迫することになった兄さんが一瞬息を詰めた隙に、両足の間に体を割り込ませた。

「っあ…、ッ、」

前を寛げて出した自分の怒張を濡れた入り口に押しつければ、びくりと体が強張る。
怯えるような眼に小さく笑うと、圧し掛かるように耳に口を寄せた。

「…入れて欲しいくせに。」

大人しく拘束されたくせに、まるで被害者みたいに怯えたような眼をするなんて卑怯だ。
僕の言葉に顔を赤らめて、唇を噛んで否定するように睨んでくる兄さんの視線を捕えたまま、ぐ、と腰をゆっくりと押し進めて行く。

「っふあ…あ…あっ…」

開いた唇から洩れたは堕ちた声がぽろぽろと零れ落ちた。



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