◎ 断罪の鐘
内臓を押し上げるように体の中を付きあげられて、ただただ怖かった。
怖いのに、さっき志摩が指で触れたところを擦りあげられれば、頭が痺れるほどの快感が、まるで電流みたいに腰から脳天まで駆け抜ける。
自分の目の前では、勝呂が俺のモノを口に入れてる。ぬるぬるの勝呂の口の中は、柔らかくて熱くて、ざらざらした舌がそこらじゅうを這う。そんなの、汚いのに、口になんて。
離してもらおうと体をよじれば、制するように根元のほうを軽く咬まれた。
あたまが、真っ白になる。
「お、くむら、くん、っ」
余裕のない声で志摩が俺を呼んだ。
「ひッ――!!あ、あうぅ…っ!!あ、つ…ッ」
お腹の奥底で、じゅわって熱いものが広がる。なに、これ。
「…いややとか怖いとか言いながら、ちゃんとイけとるやんか。」
勝呂が俺の目の前でごくりとなにかを飲み込んだ。
なに、か。
「――ッ!!!す、すぐろ…っ!まさ、か、」
言葉の途中で、志摩がずるりと抜けていく感覚に思わず息を止める。
「飲んだで、お前の。」
舌を見せるように勝呂が口を開ける。紅い舌の上には、微かに俺の出したものが残っていて、かああと一気に顔が熱くなる。
俺の、あんなものを、飲んだ、なんて。
そして友達の口の中に出してしまったこともショックだった。恥ずかしすぎて勝呂の顔が見れない。
「あ…あかん、奥村くん寝ころんで、はよう」
しゅるりと手首のネクタイをほどかれて、少しホッとしたのもつかぬ間、その腕を引かれて後ろに転がされる。
そして床に寝ころんだ俺の頭の上から、志摩が覗きこんできた。
「俺の、こぼしたらあかんえ、」
優しい、酷く優しい声だった。
*
真っ赤な内壁を少しだけ覗かせたまま、こぷりと白濁が漏れる。
志摩の精液だとわかっているのに、その卑猥な光景にごくりと喉を鳴らした。
堪らず奥村の両足を抱えあげると、志摩が悪戯を考えついた子供のような顔をして、奥村の両足首を掴んだ。
「っや…!!い、やだ、あ!離…っ離せ、しまっ!」
掴んだ両足首を奥村の頭の横へ持ってきて上から押さえつける。白い双丘と紅い入り口が晒される格好に、奥村が嫌がって暴れる。だけどいくら馬鹿力の奥村でも、こんな不安定な態勢では力が入らないのか、自由になった手をばたつかせて床を叩いた。
「奥村…いくで、」
そんな抵抗にもならない抵抗など無視するかのように、志摩のモノより一回りほど太い自身を、ぬめる入り口に擦りつけると、そこはひくひくとまるで飲み込みたがっているかのように蠢いて俺を誘うのだ。
「うあ、あ…あぁああア!!」
セックスをするのは初めてだった。狭くて、熱くて、ぬめっている、他人の胎内。自慰とは全然違う、強烈な快感。頭がくらくらしそうだった。
「坊の、俺より太い?でも俺のが奥まで届くやろ。なぁ奥村くん、わかるもんなん?」
返事など余裕のない奥村に、返事など求めてなさげな志摩が色付く胸の突起を楽しそうに指で弄ぶ。
「ひあ゛!う、やあぁあーー!!」
ず、と少し膨らんだ部分の壁をカリに引っ掻けるようにして何度も往復させれば、奥村の足の内股が何度も痙攣してはとろりと自身から蜜を零す。
苦しそうな声と否定の言葉とは裏腹に、正直に反応する体が厭らしい。
もっと快感を与えるべく奥村の自身に手を伸ばせば、怯えるような涙に濡れた瞳が俺を見た。
「気持ちよぉしたるだけや。」
「や…っ触んな…ッんぁあう…!!!」
腰を揺らしながら、動きに合わせて硬く張り詰めたソレの裏筋をなぞるように擦る。くぷくぷと先走りを零す先端も親指の腹で擦ってやればさらに蜜を零す。
「あう!っあ――、あー!」
だらしなく開いたままの唇からは、赤子のように意味のない音が紡がれる。
だらだらと口端から零れる唾液を舌ですくい取るようにして、志摩が奥村に口づけた。
「う――!ん、んううっ」
もう抵抗することも忘れたのか、奥村の両手は掴めない床に爪を立てて快感に耐えている。
狭い入り口の窄まりと、体内の熱くうねる内壁に追い上げられて、ずんっと下肢が重くなった。
「奥村、イけ。ナカで出したるから――、」
まるで彼がそう望んでいるかのように口走る。
「ぅんン―――!!!!」
がくがくと奥村の全身が大きく跳ね、びゅるびゅると自分の精液で自分の腹を汚していく。俺も我慢などできるわけもなく、そのキツい締めつけに、飛沫を奥の奥に注ぎ込んだ。
はあはあと荒い息が静かな部屋に響く。
ずるっと自身を引き抜いても、志摩は奥村の足を離さなかった。
「志摩、」
制するように名を呼べば、だめだというように志摩は首を横に振った。
「こんなだらしない入り口、すぐに坊と俺のン、零してまうやろ。」
こぽりと白濁をあふれさせるそこを恍惚と眺める志摩は、なぜか笑っている。
重力に沿って俺と志摩の精液が、体の奥へ奥へと流れ込んで行くのだろう、奥村がぶるぶると体を痙攣させた。
「ひ、うっ…は、はな、し…っ」
胸の辺りまで飛んだ奥村の飛沫を舌に乗せる。俺に入れられて、俺に奥を突かれて、そうして達した証を。
ぺちゃぺちゃとそこら中を舐めて綺麗にすると、ようやく志摩の手が奥村の両足を自由にした。
くしゃくしゃになって放られた奥村の下着とズボンを履かせてやる。奥村はただぼうっとしたように、俺にされるがままだった。
上半身も同じように、志摩の手でカッターシャツを着せられている。
尻尾はどうしていいのかわからなかったから、出したままにした。
のそりと奥村が起き上がる。
蒼い瞳に射抜かれて、俺は声が出なかった。
怒り、悲しみ、憐れみ。そんなものが一緒くたになったような。
同じように志摩を一瞥したあと、ポケットから鍵束を取り出してよたよたと立ち上がり、振り返りもせず出ていく。
バタン、と閉じられた瞬間、まるで全てが嘘だったかのように部屋の中に静寂が訪れる。
「はは、はっ…何がしたかったんやろぉな、俺等。なァ、坊」
志摩が額を押さえながら呟く。
傷付けて、その心に傷跡としてでも残りたくて。
「奥村は…俺等を許してまうんやろうな…」
あの眼に射抜かれた瞬間、理解してしまった。
許すつもりなのだ、彼は。
怒りも悲しみも全てを飲み込んで。
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後編へ続く(雪→燐)
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