◎ 昼も夜も(1/2頁)
あったかい手が、何度も頭のてっぺんから耳の後ろまでを撫でる。
「ん…」
「奥村、そろそろ起きぃ」
低くて、でも優しい声。
起こす気なんてないような、柔らかい声。
頬に唇の感触が落ちてきて、くすぐったくて目を開けた。
もう日課になっているかのように、眠ってしまって誰も居ない教室で勝呂に起こされる。
違うのは、塾の教室か、学校の教室か。
「すぐろ、ンっ」
ちゅう、と唇を吸われて、そっと目を閉じた。
勝呂って実はえろいんだ。
皆の前ではバカだのアホだの言うくせに、二人になるとすぐにこうやって俺を甘やかしては、キスしたり触ってくる。
嬉しい、けど。
塾のある日は寮の門限まで自主トレまでするくせに、塾がない日は学校が終わってからずうっとくっついている。
外に遊びに行きたいけど、外ではこうやって二人でひっついて居られないから、嫌なんだって。
そんな甘いわがまま、許しちまうに決まってんだろ。ばか。
「はよ、帰ろうや…」
そして。
雪男が任務で帰ってこない日は、二人で旧寮へと帰る。
「…ま、また…え、えろいこと、すんの?」
「するで。なんや、嫌なんか?」
ほら、勝呂ってえろい。
目を泳がせた俺に、勝呂が小さく笑う。
「ち、ちがっ!そうじゃ、ないけど…っ」
「顔真っ赤にして、何考えとんねや、」
ふに、と唇にかさついた指で触れられて、余計顔に熱が溜まる。
「べつに何もっ!考えて、ないっ!」
「ほな、はよ帰ろ。いくで。」
俺のポケットから手慣れたように、旧寮への鍵を取り出した勝呂に手を引かれ、扉をくぐった。
「ンっ、あ、す…すぐろ…っ、先、ふろっ」
「いらん。お前の匂い、興奮する。」
首筋を舐めあげられながらそんなこと言われて、恥ずかしくて頭が爆発しそう。
でも、ふわりと香った勝呂の汗の匂いに、じわりと熱が溜まっていくのを感じて、俺も勝呂のせいで変態になっていってるんだと思った。
Tシャツをたくしあげられて、胸の突起を吸われる。女の子じゃねぇのに。
「あ、っふぁ…ンっ」
「乳首、ほんま好っきゃなぁ。燐?」
恥ずかしい。ばか。そんなこと言うなっ。
心の中で悪態をつきながらも、こういう時にしか呼ばれない名前を囁かれれば、その言葉すら言えなくなる。
「そんなことな、い」
く、と顎を掴まれて、勝呂の鋭い眼で真っ直ぐ見られる。
「ちゃあんと、ゆうてみ。」
ずるい。ずるい。勝呂の顔も声も指も、俺が好きなの知ってるくせに。
ぎゅう、と爪先で乳首を抓られて背筋がびりびりした。
「あ、っそれ、ッやぁ…っ」
「嘘ついたぁあかんゆうたやろ、」
小さく笑った勝呂が、俺の耳をぬるりと舐めた。
俺と雪男の「家族」の匂いの部屋に、勝呂の匂いが混ざっていく。
すごくいけないことをしている気になって、それに余計ドキドキしてしまう。
「ほんなら、コレ、なんや?」
「んあぅ!」
ぐり、と股間を膝で押し上げられて、思わず情けない声が漏れた。
「あっ…知らな、あぅ」
そのまま制服のズボンの上からずりずりと足で擦られる。荒い布地に当たる先端が痛い。痛い、のに。
「あ…やあっ…すぐろ、あ、っや――!!」
びくびくんっと勝手に体が跳ねて、じわじわと下着が熱いので濡れていくのが分かった。
「…まさか、こんなんでイったりしとらんよなぁ?」
あまりの恥ずかしさに顔を横に逸らせば、べろりと頬を舐められる。
「う、うー…っだって、す、すぐろが…っ」
「お前のコレがはしたない節操なしなんやろ?」
「ひうっ!!」
服の上から強めにソコを握りこまれて、思わずちょっと縮みあがる。
「ほら、はよう脱がな、ズボンまで染みてまうで。」
そんなこと言いながらもぐにぐにと揉む手を離してくれなくて、俺はただ声を殺すしかできない。
「ぬ、がして…っ」
きっともう遅い。ズボンまでべちゃべちゃになってる気がする。
カチャカチャとベルトを外す音、ジッパーを下げる音、足からズボンを引き抜かれる音。どれもわざと聞かされてるくらい、ちゃんと耳に届いてしまう。
外気にさらされた濡れた下着が、ひやりと冷たくなっていく。
「ひうっ」
下着の中に手を差し込まれて、自身をやわやわと揉まれると、にちゅ ぬちゅ と粘着質な水音が部屋に響く。そして下着から引き抜いた汚れた指を俺の目の前に翳して勝呂が哂う。
「ようこんだけドロドロにできんなぁ?」
ねっとりと勝呂の指に蜘蛛の巣のように糸が絡まる。
「や…っんぐ、う…!うー!」
そのねちゃねちゃの指を口に突っ込まれて、3本もの指でぐちゃぐちゃと口の中を掻き回された。
自分の精液を舐めさせられて、じわりと涙が浮かぶ。だって、不味い。
「自分で出したモンは、自分で綺麗にせえよ。」
ずるい。低く、色を含むその声に命令されると、もう何も考えられなくなる。
ちうちうと指に吸いついて、少しも残さずに舐め取ると、勝呂は指を引き抜いて俺の頭を優しく撫でた。
「もっと…もっと、撫でて…」
もっと、その大きな手に撫でられたくて、そう口にすれば、勝呂がにやりと笑って言った。
「ほな、ゆうこと聞けるな…?」
ぞくりと背筋が痺れた。きっと恥ずかしいことをさせられるって知ってるから。
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