◎ 蝶と華(3/4頁)
まるで見ていたかのように現れたフェレス卿に案内されて、本日2度目の理事長室へと通され、紅茶を飲んでいる。
兄さんから大方の話は聞いて、涙目になっていたのが志摩君が原因だと知った。
僕の中で変わったこと。それは、昼までとは違って彼に苛立ちなど感じなかったことか。
彼も兄さんを完全に受け入れることができないのだと、安堵している。
「志摩君は…塾生達は皆、友達としてはとても理解のある方だと思うよ。」
「うん、大丈夫だ、解ってる。皆、俺のことを仲間として見てくれてるって、こう、伝わってくるっていうのかな。…なんかうまく言えねぇや。へへ。」
祓魔塾生として仲間で居られても、普通の高校生と同じ生活はできない。
兄さんが昔から、ずっと昔から欲しかったささやかな友情は、もう手に入れることはできないのだ。
「僕なら兄さんを全部、愛してあげられるよ。家族としても、弟としても、同級生としても、恋人としても。」
忘れなよ。兄さんを理解出来ない彼のことなど。
そっと顎に手をかけてこちらを向かせると、不思議そうに呆けている兄さんの、薄く開いた唇にキスをした。
ぴくんっと肩が揺れた瞬間、舌を隙間に割り込ませた。
「んっ…んぅっ??」
すぐ近くで漏れる甘い声に煽られるようにより深く口内を蹂躙していく。
「んっ…、んっ、ぅン、」
ぽたぽたと、兄さんの口端から溢れた唾液が顎を伝う。
くちゅりと小さな水音と共に離した唇同士を銀糸が繋いだ。
はふ、と蕩けたように熱い息を吐く兄さんにまた何度もバードキスを送る。
「まったく。私の存在を忘れてもらっては困るんですが。」
呆れ声の、けれど楽しそうな声が頭上から降ってくる。
そっと兄さんの手を取ったフェレス卿が、恭しくその指に口づける。
「それでは、私は君と同じ悪魔として、君を愛しましょう。」
そうだ、僕は、兄さんの『悪魔』の部分だけを解りあうことができない。
ちらりと一瞥され、にまりと笑った男が指をぱちんっと鳴らした瞬間、僅かにくらりと脳が揺れた気がした。
「な、にを…?」
「正直になれるだけです☆ …貴方も、彼も。」
フェレス卿の言葉に腕の兄さんを見れば、はあっと熱い息を漏らし、まるで熱があるかのように肌が上気している。
紅茶に、何かし込んであったのか。ぼうっとする頭で本能の赴くまま、僕は兄さんの首筋に食らいついた。
「んんっ!あ、ゆき、っ…」
「愛してるよ、兄さん」
右手の指を絡め取るように、自分の指と重ねる。
首筋から耳裏まで舐め上げながら、空いた左手でぷちぷちとボタンを外していく。
露わになった胸元に唇を滑らせ、シャツを脱がせるように脇腹に手を差し込めば、手の冷たさにぴくりと兄さんの体が跳ねた。
「ぅあ、んンっ…あ…」
ぴちゃぴちゃという音に視線を上げると、フェレス卿がねっとりと1本1本丁寧に、兄さんの指に舌を這わせている。
どうしてか、この男には苛立ちも焦りも感じなかった。
まるで珍しいお菓子を食べるかのように、彼は兄さんを味わっている。
僕が隣でどれだけ執着心や独占欲をむき出しにしていても、興味がないように。
再び深いキスをしながら脇腹を撫でると、鼻にかかる甘い声が漏れる。この行為の意味をちゃんと理解しているのかは謎だったが、あの日のフェレス卿の言葉を不意に思い出した。『悪魔は快楽に弱い』と。特に兄さんのような、悪魔に覚醒してわずかしか経っていないような悪魔は特に。
そして人でもある兄さんは、『愛』に弱いのだ。
キスに意識を集中させているうちにベルトを外し、ズボンを足から引き抜いて放り投げる。
芯を固くさせて下着の中で頭を掲げ出した兄さんの自身を、掌でやわやわと揉みしだく。
「んんっ!!あ…ゆき…っ、そんな、とこっ…」
どんどん掌の中で固さを増していく熱に、堪らなくなって兄さんの足の間へと体を滑りこませた。
床に跪いて、兄さんの竿を下着の上から軽く噛んでみる。
「んああっ!」
びく!と跳ねた太股に挟まれ、一瞬噛む力が強すぎたかと反省したが、次の瞬間にはじわりと先端部分の下着に染みが出来るのが見えた。
「兄さん、やらしい…」
舐めたい。
欲望のままに下着をずり下ろし、ふるりと勃ち上がる性器を躊躇いも無く口の中に導きいれた。
「ふああ、あっ…」
じゅわ、と舌の上に広がる先走りが甘い気がして、舌先で尿道の入り口をぐりぐりと擽る。
「んくっ!!あっあっ、それ、やあ、あ」
親指で裏筋を擦りながら先端を吸えば、あっけなくびゅるうと大量の精液が口内に吐き出された。
はふはふと荒い息を吐く兄さんが、茫然と僕の喉が嚥下するのを見ている。
「……っうええ??ゆきっ、なっ…飲ん…っ!?」
「飲んだよ?…愛してるもの。兄さんの全てを。」
かああと羞恥で真っ赤になるその初心さに、兄でありながら自分よりもずっと幼い子供を穢しているような気分になる。
「もっともっと、愛させて…」
「んんう、!」
太股の内側の、一番柔らかい肉を食むと、吸い上げて紅い鬱血を咲かせた。
滑らかな傷一つない肌。古傷さえ何一つ残ることないその体はやはり人の域を超えていて。僅かばかりの時間でも、そこに証を残す優越感を。
「んっ、んん、っあ、」
何度も何度も吸い上げて、日に当たることのない白い肌に痕を残していく。
またひくりひくりと、兄さんの自身が熱を持ち始めた。
「ンあう!!」
びくんっと跳ねた体に、高い嬌声。驚いて顔を上げれば、フェレス卿が兄さんの頭を抱えるようにして舌を耳の小さな孔の中まで差し込んでいた。
「忘れないでくださいね☆ わたしのこと、」
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