09 Prayer-4 | ナノ


Prayer(4/5頁)


そっと、金兄の手が伸びて、髪を留めているピンをもう1つ外した。

ぎくりと表情を強張らせれば、金兄がにやりとわらう。

「金、兄、っ」

奥村くんからは見えるはずもなく、かたかたと小さく体を震わせている。

「廉造、燐くんの眼ふさいで。」

「―っ、」

ひくりと喉を震わせた奥村くんが、縋るような眼で見上げてくる。

「れんぞー、」

ゆっくりとした楽しそうな、けれど急かすような金兄の声に、まるで条件反射みたいに手が動いた。

「し、しまっ、」

両手でしっかりと奥村くんの両目を塞ぐ。

にい、と哂った金兄がそっと後ろから奥村くんを抱きしめ、左手は奥村くんの自身をそっと包み込む。
右手の指先にはピンを持ったままで、その潰れたU字になった方をそっと先端へと近づけた。

「動いたらあかんえ。」

ぞっとするような優しい声だった。


「ひ あ あ゛ぁあ゛、あぁあ゛―――!!!」

痛いくらいに俺と金兄を咥えこんでる入り口が締まる。

奥村くんの溢れた涙で、俺の手が濡れていくのが分かった。

「い だい゛、あ゛、やああ゛!!」

ぐりゅぐりゅと指先で転がすようにピンを尿道の中で回転させれば、そのたびに奥村くんはがくがくと体を跳ねさせる。


「痛みと快感は紙一重やで〜、燐くん。」

いや、紙一重っていうかもうごっちゃにしてるやん、金兄。
心の中でツッコミながらも、現実ではもう声をかけられないほど金兄が楽しそうで。


あまりにも奥村くんが辛そうで、思わずさっき舐めていた胸へと口を寄せる。

ぴちゃぴちゃと舌を這わせれば、小さく「んっ」と声が上から零れてきた。

「ふふ、廉造やっさしー」

「ふうひゃい、」

「んんうっあ、そこ、で、喋らな、っああう、んっっ」

もうひとつの特別な性感帯。そっと手を回して、奥村くんの腰の辺りをまさぐる。
腕と一緒に縛られている尻尾の、付け根をぐにぐにと優しく揉めば、ぐにゅぐにゅと中の肉が柔らかく蠢いた。

「はふっ、は、あ、あ、だめ、らめ、あ、あぁぁああっ」

ひくんひくんと内股が震えたと思ったら、びくびくと全身を痙攣させ、先端からはこぷりと僅かだけ透明な精液を漏らした。

「…奥村くん、イったん…?」

「…あっ…う、…っ」

余韻が引かないのか、ぴくぴくと体を震わせたまま、目尻を紅く染めて小さく頷いた。


「ふふ、気持ちよさそお。…俺らも気持ちようなってええやろ?」

「あっ…だ、だめ…いまは、っひう!」


「廉造、寝転がれ。」

奥村くんの言葉を無視するように、俺にどさりと奥村くんの体を預けてきた。
そのまま押されて、ベッド倒れ込む。手足を縛られて動けない奥村くんは、まるでカエルみたいに俺の上に張り付いている。
耳の真横ではあはあと苦しげな吐息と喘ぎ声が聞こえて、ぞくぞくした。

「動くなよ、廉造。」

抱きあった俺らの上に覆いかぶさるようにして、金兄が態勢を変えた。

まるで俺まで金兄に組み敷かれているような、最悪な態勢。

「――っふ、あ、」

ずるずると金兄が自身を引き抜いて、その感覚に思わず声が漏れた。

「…っな、やばいやろ。」

「…っ、くそ、」

「ひあああっ、あっ、あ、」

今度はぐちゅんっと奥まで突き上げる衝撃で、奥村くんが鳴く。確かにやばい。挿れてるだけでも気持ちええのに、金兄が動くたびに裏筋擦られて、奥村くんのやらしい声が耳の横で響いて、息までかかって。

びくびくと跳ねる体を押さえるように、腰に手を回した。


ぐちゅぐちゅと大きな水音。きっとさっき出した精液が中で掻き混ぜられているんだろう。
ぞわぞわと、自分でピストンする時とも、フェラされた時ともまた違う、ぞわぞわとした射精感がこみ上げる。

「…っ、ぐ、あかん、っ」

とぷとぷと、まるで勝手に絞り取られるように射精したのが分かった。

「んあぁあっ!!」

少し遅れて奥村くんがまたびくびくと体を震わせて、射精することなく絶頂を迎えている。

「――っぅ、」

そして金兄も、ぶるりと体を一度震わせ、どぷどぷと注ぎこんできた。
熱くて、ねっとりした金兄の精液が俺のモノにまで絡んできて最悪だと思った。

(抜きたい、)

「金兄、重い…」

ただでさえ奥村くんの全体重が乗っているのだ。その上から被さるように金兄の体重をかけられればかなり重い。

「あー。…よ、っと。」

「んぐ、あ、あぅっ」

ただ退いてくれればよかったのに、奥村くんの背に回る縄を引くとまた抱きしめるように腕の中へと戻す。
抜かずに動かれたせいで、ぐじゅ、と中で擦られて思わず息を詰めた。

「…っ、つか金兄、まだすんの?」

「え、当たり前やん。」

その言葉にげんなりする。いや、そんなのを通り越して驚くわ。
俺が旅行行ってる間、ずっと奥村くんで遊んどったんやろ。
悪魔の血を引く奥村くんさえ、俺が着いた頃にはぐったりしとったのに。

「何、奥村くんに飽きたん?気持ちようないん?」

金兄の言葉に、ぴくんと反応した奥村くんが、「あ…」と哀しそうに呟いて、無い非を認めるかのように俯いた。

なぜかツキンと心臓のあたりが小さく痛む。体を起こして向き合うと、まるで弁解するように口を開いた。

「や、気持ちは、ええんやけど。」

気持ちいいのは認めるけど、異質すぎるのだ。どう説明するかな、と考えていると、金兄が「あ!!」と大きな声を上げた。

「乳首のピン取れてるやん〜」

俺の上に被さった時にでも取れたのか、布団に落ちたピンを拾う。まるで子供みたいに無邪気なそのしぐさに、酷く怯えたのは奥村くんだった。

「や…やっ…もう、やめっ…、いやだ!金、造さんっ…」

「うん、もっと怯えて。もっと泣いて。もっと煽ってや、燐くん。」

歌でも唄い出しそうな楽しそうな声だった。

「あ…やあああっ!!ひう、いた、いたい、っ」

またパチンと熟れた乳首をピンで挟まれて奥村くんが鳴く。

「そっちだけちゃうで、」

「うああ゛あぁぁあ゛ア!!」

勃ち上がる先端に挿したままの方のピンを、金兄の指がぐじゅぐじゅと弄る。

「ひ、っも、やめ、て…や、あ゛!」

にまりと金兄が笑う。

ぴたりと手を止めると、後ろから奥村くんの顎を掴んだ。

ぐっと顔を上げさせるようにすれば、涙やらでぐちゃぐちゃになった顔が俺を見た。


「ほんだら、ねだりぃや、廉造に。1個だけ、なんでも叶えてくれるって、廉造が。」

また勝手に。そう呆れながらも、金兄が楽しそうに奥村くんの耳元で囁くのを黙って聞く。

「ほら、はずして下さいって。…それとも、動いて下さいってお願いする?」

金兄が がんっと腰を一度だけ突き上げると、また「ひあ゛っ」と苦しそうな声が上がった。

「、っ……なん、でも?」

囁いているのは金兄なのに、その金兄に顔を固定されたままの奥村くんは、俺にそう問うた。震えながら、怯えながら。

『もうやめて』

そう言えば終わりになる。


「うん、何でも聞いたるよ、…1個だけ。」


だから、間違えたらあかんで。

金兄を止められるのは きっと今だけ。


震える奥村くんがぎゅっと目を瞑って。

震える唇がゆっくりと開いて。

1つだけの願い事を。


「き、…っきす、して、ほしい、」


一瞬、日本語が理解できなくなったのかと思った。
ぽかん、とした顔で、俺と金兄が奥村くんを見降ろした。

そんな無言の俺等に不安になったのか、瞑っていた瞼が開かれ、澄んだコバルトブルーが俺を見上げた。


「…しま、と、…キス、が、した、い…」


どくんっと心臓がバカみたいに跳ねて、かああっと赤面したのは、俺の方だった。



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