贖罪




※勝呂の思考が原作とは異なります。
IF話として読んでいただければ。



無謀とも取れるほどに真っ直ぐで、素直で。

どうしようもなく惹かれるこの想いに、いっその事、自覚などしなければよかったのに。


――すぐろ、かっけー!

――すげぇな、すぐろ!


自分で自分にイラつくほど無意識に目で追ってしまう。

仔犬のようにじゃれつかれて、ウザいと言いながらも跳ねる心臓に気付いたこと。

自分だけを見て欲しいと思い、自分を頼って欲しいと思う、そんな感情が何なのかを気付いたのに。

ようやく、自分で自分の気持ちを認められたのに。



『なんで…っ、サタンの仔がここに居るんや…!!』



どこにもぶつけられないこの気持ちが、崩れていく音が聞こえた。











「すぐろ…?」

怯えたような、拙い声が鼓膜を揺らす。

薄暗い部屋で、きっと奥村の視界は僅かな光もないだろう。
ヘアバンドを目隠しにして、ネクタイで両手首を縛って。
さらに脱がせたシャツを手首にぐるぐると何重にも巻いていく。

「…っやっぱり、俺が…憎い?」

ぺたんと床に伸びたまま動かない、漆黒のそれ。悪魔である象徴かのような尻尾。

憎いかと聞かれて、何も答えられなかった。

『憎まなければならない相手』なのだ。
何人もの仲間たちの、復讐相手の、あの蒼い炎を継いだ息子なのだ。


なんで、お前なんや。

「なんでなんや…」

俺の言葉にびくりと体を震わせた奥村は、悲しそうに、悔しそうに唇を噛みしめて、顔を伏せた。

目を隠していてよかった。
あの綺麗な瞳から零れる涙を見てしまえば、きっと心が揺らいでしまう。


『勝呂』の跡取りとして、許すわけにはいかないのだ。


抵抗すればすぐに引きちぎることができる手の拘束も、目隠しも、奥村は外そうとしなかった。
まるで『血』の罪を覚悟しているかのように。


お前のせいなんちゃうやろ。そう、言ってやりたいのに。


家を守るために切り捨てなければならないこの想いを。

何度捨てようとしても捨てきれないこの想いを。

押しつけるしかできない俺を。


そっと奥村の両耳を、自分の両手で塞ぐ。

「すまん、…許さんでええ。今日限りで、この想いはちゃんと捨てる。せやから…せやから、…っ」

受け止めてくれ、なんて。奥村に聞こえていないと解っていても、言葉に出来なかった。そんなことを言う資格などないのだから。

「…すぐ、ろ?」

不安げな声が俺の名を紡ぐ。この声が好きだ。お前の声で名前を呼ばれるのが一番好きだ。
そんな、行き場をなくして口の中で彷徨っている伝えられない言葉を、奥歯を噛みしめて砕いた。
決して言葉になどならないように。
















「やだ…っ、すぐろ、ぅああっ!ひ、あっ」

ぬぷぬぷと卑猥な音が聞こえる。
指を1本だけ含ませた後孔は、唾液を送り込んで挿入したにもかかわらず、狭くぎゅうぎゅうと締めつけてくる。

うつ伏せにさせて腰を高く上げさせた態勢で、奥村は縛られたままの両手首を額に当てて必死に耐えている。

「うあ、あ、あぁっ」

2本目をゆっくり差し込んでいけば、震えた声が鼓膜に刺さるように聞こえた。

お前がサタンの子でさえなければ。俺が勝呂家の跡取りでさえなければ。
…なんて、今らさどれだけ思ったって無意味なことだ。

「ひ、っう、…う、あ゛」

捩じ込むように指を増やすと、また苦しそうな声が漏れる。

健康的な白い肌と、自分の指の隙間から覗く紅い内壁が情欲を煽り、思わず喉が鳴った。
2本の指を広げて隙間を作ると、そっと舌を伸ばしてもぐり込ませる。

「うああっ!?や、っすぐ、ろ…っひぁぁっ」

内部を舌が這う感覚に、怯えるように高い声が上がった。

唾液を中へ送り込めば、指を動かすたびにぬちゅぐちゅと卑猥な音がする。

うねる内壁は熱くて、粘膜を舐めれば全てを暴いているような気分になる。

「や、っそれ、や…だっ…あっ!」

高く掲げた腰が揺れ、悲痛な声に舌を抜いたけれど、太股の間からふるりと立ち上がる奥村の自身が見えて、どくりと自分の腰が重くなるのを感じた。

(気持ち、ええんや…)

想いすら伝えることもなく。本来受け入れることのない場所で。

ただの体の反応だとしても、たまらなく嬉しかった。






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