六花の (5/5頁)

怯えてたのは、兄さんもだった。


僕が居なくて泣くなんて、僕が居ないと寒いだなんて、そんなの、まるで、

「僕のことが好きみたいじゃないか…」

期待して絶望を味わうなんて、もう嫌なのに。


「…っ、すき、だよ…」

ぽつりと兄さんが呟いた言葉に、苦笑が漏れる。

「弟」としての、「兄弟愛」だけじゃ満足できないんだ、ごめんね。


そっと体を離せば、腕の中の兄さんは驚いたような眼で、僕を見上げた。

「っ…また、出ていくのか…?」

引きとめるように腰に手が回り、まるで逃がさないとでも言うように力が込められた。

「兄さん…」

「どこにも行くなよ…っゆきお、雪男…っ」

それは、とても残酷な言葉だ。


「『弟』として兄さんの隣に居れるようになったら、帰って…っっ!」

言い終わらないうちに、背伸びした兄さんの唇が、僕の唇に押しつけられた。

近すぎて視点の合わない距離で、兄さんが真っ赤な顔をしているのだけがぼやけて見えた。

合わせられた唇は震えていて、熱かった。

暫くして熱が離れて、僕の視点が兄さんを捕えた時、兄さんは泣きながら、けれど微笑んでいた。

「…『弟』じゃなくていい…っ、雪男が…傍に居てくれるなら。」

「…っ」

脳がくらりと揺れた。

「ゆき…ッんんぅ…!」

まるで呼吸すら飲み込むように、性急に、深く深く口づけた。
熱い口内を掻き回して、ぬめる舌を絡め取って、唾液を流し込んで。
とぎれとぎれに鼻を鳴らして小さく声を漏らす兄さんが愛おしすぎて。

がくんと足が折れても、逃がすことなく後頭部を押さえつけながら、ずるずるしゃがむ兄さんに覆いかぶさるようにしてキスを続けた。

「んっ、んん、ぅ、あ、はぁっ、は、ッ」

蕩けきって真っ赤になった兄さんの口を少しだけ離してやれば、荒い息が唇にかかる。

「ぁ…っ、ゆ、ゆっくり…っ」

「ごめん無理。…兄さんが煽ったんだよ…?」

「っ…あっ、あ…!」

耳に舌を差し込めば、高い声で鳴いてぶるりと体を震わせる。

すぐ近くにあるベッドに移動する時間すら勿体ないような気がして、冷たい床に押し付けて兄さんをひたすら貪った。


「っあ!!あぁ…ぅ、」

ぷくりと立ち上がった胸の突起をシャツの上から噛むと、もどかしそうに兄さんの腰が揺れる。

左側の突起は、シャツの裾から手を入れて直接ぐにぐにと捏ねくり回す。

「兄さん、胸好きだよね。」

「…なっ!?な、なんだよそれっ…んう!」

制服の上から兄さんの自身を握りこめば、それは上を向いて布地を押し上げている。

「だって乳首噛まれて勃起するじゃない。」

「あ、あっ、し、しらな、っんア!!」

ぴくんぴくんと僕に翻弄されながら、皮膚を桜色に染めていく兄さんが可愛くて。

「ごめん、あんまり余裕ないかも…」

「へ…?」

しゅる、とベルトを外すと、呆けている兄さんの腰に手をかけ、ズボンと下着を一気に下ろした。

「ひゃっ!つ、つめた…っ」

むき出しになった下半身が床に触れ、その冷たさに白い肌がぶわりと鳥肌が立つ。

「冷たいよね、ごめんね。こっち…立ってられる?」

腕を引いて膝立ちにさせると、僕の両足を跨がせ、自分の唾液で指を濡らし、そっと兄さんの後孔に押しあてる。

「うあ…あ…っ!」

ぬぷ、と性急に含ませたそこは、指1本もぎちぎちに締めつけて。

前立腺までぬめる指を進ませると、くちゅくちゅと何度も内部の膨らみを擦る。

「あっ、あっ、あ、やあっ、っ、んあぅ!!」

2本目の指を増やせば、内壁は僕の指を思い出したようにうねり出した。

「早く…入りたい。一つになりたい。好きだよ、兄さん…。愛してる。」

きゅうっと締めつけがキツくなったことに笑みを零せば、兄さんが真っ赤な顔で睨んで来た。

「っ…ばか。…い、いいよ、来いよ…雪男、」

「っていうか、兄さんが腰降ろしてもらわないと…」

僕の足を跨ぐようにして膝立ちしているのだ。太股の裏側を手でひっぱると、兄さんが心底びっくりした顔で真っ赤になって膨れ面をした。

「な…っ、う…、きょ、今日だけ、だからなっ」

ぷるぷる震える足を支えてやれば、やっぱり恥ずかしくなったのか、ぎゅうっと首にしがみ付いてくる。

「…ふふ、手伝ってあげる。」

そう言って、自身の先端を後ろの入り口に擦り寄せれば、ひくんと入り口が戦慄いた。

「っ…ふ、う、っあ、」

じり、じりと先端が中に埋め込まれていく。数週間ぶりの感覚に、まだ先端だけなのに達してしまいそうになる。

「にい、さ…っ」

「あ、あぁ、ゆき…っ」

堪らなくなって、腰を掴むと力任せに引き下ろし、腰を穿つように動かした。

「ンあ――ー!!!」

先端から、一気に一番太い根元まで咥えこんだ体は、全身痙攣するようにびくびくと跳ねさせる。

「兄さん、今ので…イったの?」

どろりと汚れた二人の腹部に、兄さんが真っ赤になって俯いた。

「だ、だって…しょうがねーだろっ…っひゃ、あぁああ!」

あまりに可愛らしい反応に、我慢できずに挿入したまま立ち上がれば、浮遊感に吃驚した兄さんが必死でしがみ付いてきた。

「あう!あ!ゆき…ぃ…っ、おく、だ、だめ…っ」

「っごめん、ちょっと、我慢して…っ」

僕だってぎゅうぎゅうに締めつけられて、兄さんの足は僕の腰に絡みついてきて、兄さんの腕は僕の首に回されている、っていうギリギリな状況。
でも、抜きたくない。兄さんから少しでも離れなくなかった。

数歩あるけばたどり着いたベッドに、どさりと繋がったまま兄さんを背中からおろすと、そのまま貪るように腰を擦りつける。

「ひあっ、あ、あぁあ、っんんぅ!!」

「っは、にいさ、もう、っ」

結合部からはぐちゅ、ぬちゅ、と卑猥な音が響いていて、余計に煽られるように腰を動かす。

「あっ、あ、っあ、ゆき、ぃ…っ!」

「っ……っ、りん、ッ」

名前を呼んだ瞬間、兄さんの体がぶるりと震えて、内壁が奥へ誘いこむようにうねり、堪らず兄さんのナカを穿ちながら、何度も何度も中に精を放った。












「し、信じられね…っ」

兄さんが窓の外を見て愕然としながら呟く。

確か僕がここに戻ってきたのは10時頃だったはずだ。

なのに窓の外はもう夕焼け色に染まっている。

「…それは僕も思う。…ごめん、」

一度も抜かず、それこそ兄さんが途中少し気絶してしまった間もずっと、兄さんのナカに入っていた。

「頭んナカも、体んナカも、雪男でいっぱいすぎて、っあ!」

ナカに入れたままの自身がまた固さと大きさを取り戻したことに気付いてか、ひくん、と兄さんが反応して、ぶるぶる震えて涙目で見上げてきた。

「も、もう無理だからなっ、ばか!」

「だって兄さんが可愛いこと言うんだもん。」

ぐちゅ、と一度浅く抜き差しをすれば、蕩けたような顔をするくせに。


「…愛してるよ、兄さん。」

『兄』としても、『家族』としても、『恋人』としても。

僕の全て、僕の唯一。


「…っ、おれも…あいしてるよ、ゆきお」


拙い声は、俺の涙腺を壊した。

「泣くなよ、ゆき…」

心配そうに見上げる目尻にキスをして、そっと頬に添えられた手を掴んではまた口づける。

「嬉し涙だからいいの。」

僕の涙を唇で拭って、しょっぱい、と言って笑ってくれる貴方に。


昔も、今も、未来も捧ぐよ。











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完結です!なんだかごっちゃりしてる気がしましたが、書き終えてみれば自分の中ですっきりしてしまいました。
サイト開始から置いていた長編なので、初完結です。うおお…!
読んで下さった皆様、ありがとうございました!!!

六花:雪の異名。




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