◎ Innocence(3/5頁)
ちゃんと、志摩じゃないって分かってる。
分かってるのに、どうして拒めないんだろう。
こんなの、だめなのに。
どうして嫌だって言えないんだろう。思え、ないんだろう。
「ああぁっ、ひんっ、う、あ!」
痛いほど冷たくされたお腹のナカに、焼けるように熱い楔が入ってくる。
「っは、」
俺の頭の横に両手をついて、金造さんがぶるりと震えて熱い息を漏らすのに、俺は喜びすら感じていた。
「うあ、あっ、あぁっ」
自分のお腹からぐじゅぐじゅと酷い音がする。掻き混ぜられるように抜き差しされて思わず金造さんの背中に手を回した。
「ふふ、かわえぇな、燐くん。」
「あ、あぁ…っき、んぞ、さん…っ、ぁあう!」
金造さんの名を呼べば、ナカに入った熱いものが どくりと波打ってまた大きさと固さを増す。
「たまらん、っ燐くんの、ナカ。ふふ、フェラも前より上手なったし、廉造喜びよるんちゃう?」
「っあ、!」
「ッ、は、『廉造』って名前でこんなけぎゅうぎゅう締めつけれんねや。妬けるわ〜」
だって、勝手に体が動くのだ。志摩のだと勘違いした体が、勝手に。
「だ、って…っあ、ああ、や…もうっ、」
「でも、今セックスしとんは俺やで。間違えなや。」
がっと前髪を掴まれて、噛みつくようにキスをされる。
同時に前立腺を抉るように突き上げられて、頭の中が真っ白になった。
「んぅ―――!!!」
がくがくと何度も体が跳ねて、触られてもいないのに射精してしまった。
自分で出した熱いものが、どろどろと自分の腹にかかる。
もうお腹の中は冷たくなんてなかった。
それどころか腹の中も、口の中も、頭の中まで熱くて熱くて堪らなくて、ぐらぐらと脳みそが揺れている気がした。
「はぁっ、はぁっ、は、っんぅ、あ、んんっ」
酸素を取り込もうと大きく開けた口の中も舐められて、また塞がれる。
近すぎて焦点の合わない視界に、金色の髪が揺れていた。
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アホみたいに口を開けて、だらだら涎を零しながら必死に酸素を取り込んで。
呼吸の自由すら奪うようにまた口づける。
苦しそうな呻き声が口の中から耳に届く。
ちゅぷ、と唇を離し、繋がる銀糸がぷつりと切れると、体を起こして下肢を見る。
燐くんの自身は射精した後も、萎えることなくふるふると勃ちあがったままで、まだ薬が効いていることが分かった。
にま、と口角を上げて小さな痙攣を繰り返す体内から自身を引き抜くと、こぽこぽとかき氷のシロップみたいに鮮やかな水色の液体が零れ出る。
そこに混じる白濁を指で掬うと、燐くんの口元に持っていく。
口を開けたままの燐くんの舌に塗りつけてやれば、僅かに眉をひそめて舌を奥に引っ込めさせた。
「どんな味?甘いん?」
「にが、い、です…。」
「ふうん。こんな甘ったるい匂いしとんのになァ。」
溶けたアイスは、凍っていた時からは想像できないほどに部屋中に甘ったるい匂いを振りまいている。
(さて、すっきりしたことやし、始めよか。)
床に置いていた鞄を取ると、着替えを取り出して窓際の並んだ机の上に放り投げる。
そして燐くんの頭の真横に、鞄をひっくり返して中身をぶちまけた。
がちゃがちゃと盛大な音を立ててシーツの上に現れた色とりどりの玩具を見て、燐くんの目が大きく開かれた。
「…っ!!や、っ」
逃げようとして体を起こしかけた燐くんの両手を掴み、ベッドに縫い付けるように押し倒す。
「なに、いやだっ…金造さんっ!!」
「暴れんなや。燐くんが暴れた分、廉造が酷い目合うことになるんやから。」
びくん!と押さえつけている腕が硬直して、ぎゅっと拳が握られる。
「金造さん…っ金造さん、へ、変なこと、しないで、ください…っ」
「はははっ!変なことなんかせぇへんよ。すんのは気持ちえぇことだけやんか。」
深い海みたいな、綺麗な瞳から大粒の涙がぼろぼろと零れ落ちた。
「き、きもち、いいこと、も…いや、だ…っ」
「何ゆうてるん。さっきまであんだけ喘いどったくせに。なァ、燐くん?」
かたかたと細い手首が震えだす。
いやいやをするように首を振るたび、ぽろぽろと零れる涙が綺麗だった。
押さえつけている手を離すと、必死に俺の下から這い出そうともがく。
「…廉造のな、眉尻に傷あるやろ。あれなァ、昔、指輪したままドツいてしもたらパックリいってもぉてん。……廉造の顔に傷増やしたぁないやろ…?」
ひく、と喉が震え、痩躯は逃げることを完全に諦めたように力なくシーツに沈んだ。
(あーあ、嘘ついてしもたやんか。)
それでも燐くんを言葉で拘束するには、最高の嘘だった。
そっと両手を取ると、細い両手首に手枷を嵌める。
もう暴れたり逃げたりしないということは分かっていたが、いっそう怯える表情が見たかっただけだ。
そして俺の理想通り、燐くんはキツく唇を噛んで震えていた。
「ふふ、似合うとるよ」
真っ白な肌の子には深紅の拘束具が似合うが、燐くんみたいな健康的な白い肌には漆黒の拘束具がよく似合う。
外側がエナメル質でできたそれには、両手を繋ぐように太いチェーンが2本伸びていて、5センチほどは自由がきく。
そのまま両手を取ると、毒々しいピンク色をしたバイブを持たせた。
愕然とした顔で、涙を零しながらふるふると首を振って拒否する燐くんの耳元で、小さく囁いた。
「拒否権なんかあらへんねんで…?」
舐め取った涙は、なぜか酷く甘い気がした。
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