◎ Etude(4/5頁)
――別に、いっこも嘘ゆうてへんもん。
『甘い飲みモン』ってゆうただけやで俺は。
ジュースやとは一回もゆうてへん。
そんなことを思いながら、燐くんにキスをする。
チューハイ2杯でふらふらし出した燐くんは、真っ赤な顔で必死に応えるように舌を伸ばしてくる。
廉造とあれだけひどいセックスをしながら、キスもしたことがなかったとは。
さすがに本気で驚いた。
けれど、キスひとつにしても『はじめて』を奪うというのは何よりも快感に感じるものだ。
この歳になれば、ファーストキスを奪うなんてそうそう無い。
アルコールのせいもあるのか、拙くぎこちない舌を、俺の舌に絡めてくるのがたまらなかった。
飲み込むことを知らない唾液が燐くんの顎を伝ってぽたぽたと服にしみ込んでいく。
「ほら、俺のん脱がしてぇな。」
キスだけではあはあと息を乱している燐くんの後頭部に手をかけて己の下半身に視線を合わさせると、小さく震える手が俺のベルトを不器用に外し、そこでぴたりと止まった。
「あ、あの…」
「ん?」
「どうしたら、」
戸惑って見上げてくる眼は、捨てられた仔犬みたいだ。
――ま、あながち間違っとらんけどな。
捨てられかけの仔犬、か。
脱がせるだけでちんたらされても面倒だと思って自分で適当に脱いで、ベッドに腰かける。
「っあ…」
床に座り込んだままの燐くんの前に自身を曝け出すと、こくりと小さく喉が鳴るのが聞こえた。
根元に両手を添えて、ぴちゃりぴちゃりと仔犬が舐めるように何度も竿をなぞるように舌を這わせる。
しかし単純すぎるその舌の動きには到底高まることなどできそうにもなかった。
口に含まれてからも、ぎこちない唇にゆるゆると包まれるだけで、まぁ心地よいけれど快感と言えるほどの刺激にはならない。
(あー…、髪の毛掴んで思いっきし喉の奥突いてやりたい。涙目になってえずきながら俺の咥えて泣いて――あぁ、考えただけでぞくぞくする。)
しかしここでまた恐怖を植え付けるのも面白くない。
「ふふ、やっぱりへたくそや。」
ぷは、と半勃ちの状態の俺のものを口から出した燐くんが、縋るように見上げてくる。
「手も、唇も、舌も、喉も…全部使うんや。」
「ぜ、ぜんぶ?」
「教えたるから…な?」
---
手で擦りながら、唾液をためて先に垂らして、口に入れて、歯を立てないように、それから――
体が熱くて、熱くて、ちゃんと考えられなくなる。
「喉の奥まで飲み込んでみ…?突いたりせぇへんから。」
「…っ、ん…ン、ぅ」
言われた通りに、ゆっくりと金造さんのモノを飲み込んでいく。
怖い、けど。
一番奥に、トンと先端がたどり着く。
ひくひくと飲み込むように、勝手に喉が痙攣した。
「唇すぼめて。そう、吸いながらやで、」
じゅぷじゅぷとやらしい音が鳴る。
はぁっ、と上から熱い息が聞こえて、妙に嬉しくなった。
うまく、できてる?
息を詰めた金造さんの腰が揺らめいて、くしゃりと髪に指が絡められた。
見上げると、下唇を噛む金造さんと目が合う。
「っ、えぇよ…」
低い声に褒められて、下半身がじんじんした。
「ん、ぅむっ、ん、」
指を絡ませて竿を擦りあげながら、先端をきつく吸い上げた。
「――っ、」
ごぷ、とぷ、と熱くて少し苦いどろどろした液体が何回かに分けて吐き出され、口の中がいっぱいになる。
目を瞑って、絡みつく濃厚なそれを飲み込んだ。
「はぁっ、まだ…離したあかん、最後、吸うて。」
そう言われて、先端にキスするみたいに、ちゅう、と吸ってみた。
「…ふふ、でけたやん。」
「はふ…、お、おれ…ちゃんと、」
初めて、無理やり喉の奥突かれたりしないで出してもらえた。
ちゃんと、口で、できるようになったんだ。
「ちゃんと、でけたよ。」
よしよしと金造さんが頭を撫でて、褒めてくれた。
「…ごほうび、あげやななぁ?」
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