崩壊の音(3/5頁)




「っンむ…っう」

何かが逆流してくるような感覚に、一瞬で頭が真っ白になった。

ちゃんと考えられるように酸素を求めれば、その口も塞がれる。

ぬるりと入り込んできた何かが、雪男の、弟の舌だということに気付いたのは、舌を絡められた時だった。

痛いと気持ちいいが混ぜこぜになって、頭の中がぐちゃぐちゃになる。

口を離そうと首を捩れば、力強い手で顎を掴まれ、正面に戻された。

「愛してるよ、兄さん。ずっと、ずっと昔から…これからも、ずっと。」

真っ直ぐに、紳士的だと思うほどに誠実な声が鼓膜に届く。

「っ雪男…!どうしたんだよっ…!!ちゃんとっ、聞くから…だから…、こんなっ」

必死に宥めるように、諭すように。

兄として振る舞えば振る舞うほど、雪男の表情は強張っていく。

「あぁ、そうか。違うな。…愛してるよ、燐。」

この世で誰よりも聞きなれた雪男の声で、一度も聞いたことのない音を紡がれる。

「ゆき―――」

そしてまた口が塞がれ、舌が歯列を割って咥内に入り込んできた。
雪男の舌が生き物のようにぬるぬると咥内を這いまわる。

引っ込めた俺の舌を探すようにさらに奥まで突っ込まれて、思わず拒むように閉じた俺の鋭い歯に、雪男の舌が傷ついたのが分かった。

じわじわと口中に血の味が広がる。

「ぅぅう――!!」

雪男は全く気にしていないかのように俺の咥内を探り続けていて、これ以上傷つけまいと抵抗をやめた俺の口の中を蹂躙する。

そして口端から溢れそうになった、もうどちらのものか分からなくなった唾液と雪男の血が混ざったものを思わずごくりと飲み込んだ瞬間、体中の血液が沸騰したように熱くなった。

「あ…あ…ぁ…なに、っ」

どくん、どくん、と自分の心臓の音が耳の傍で聞こえるように感じる。

ざあざあと体中の血液が、いつもの何倍もの速さで駆け抜けている気がする。

ぐにゃりと視界が一瞬歪んで、脳ミソまで熱くてどこか溶けたような気がした。

「あぁぁ…ぁ、」

「やっぱり血液の方が良いみたいだね。」

また、雪男が分からない言葉を発した。

じわじわと何かが体中に浸食していくような、奇妙な感覚が全身を駆け巡る。

「ひ、う、ぁ…ゆき…」

怖くて怖くて。
助けを求めるように弟の名前を呼んだ。

「大丈夫だよ。僕が助けてあげる。」

雪男の声を聞くだけで、ぞわぞわと全身を快感が這う。

だめだ、ゆきお、俺、へんだ。














オス猫がメス猫のエストロゲンフェロモンに反応するように。
兄さんに打った薬は、僕のDNAに反応して強制的に『発情期』を作るもの。

多少の唾液ではあまり効果がなかったようだが、血液は強力だったようで、ぶるぶると体を震えさ始めた。

「ああ…あ…っ」

完全に勃ちあがった自身からは、とろとろと蜜を零している。

「ここ、気持ち良さそうだね。」

「ひあ、あ、っ」

先端を撫でただけなのに、びくびくと動けない体を跳ねさせる。

「今度は一緒に気持ちよくなろうね。」

「ひ、っやぁああ!!やめっ!」

固く尖らせた舌を、キツく閉じている入り口にぬるりと差し込む。

ぎゅうぎゅうに締めつけ、熱を持ったみたいに熱い胎内。

誰も、兄さん自身でも触れたことのない胎内。

そのナカに舌を差し込んで内壁を舐めれば、高い声が上がる。

下肢がずくりと重くなる。

「やだ…やだぁああっこんなの、こんな、やめっ…」

蕩けた頭で、気持ち良さそうな顔で、まだ否定の言葉を零す兄さん。

溺れてしまえばいいのに。


ごめんね、さっきの薬、もっと強く作用するように改良してあげなくちゃね。


そんなことを考えながら、先走りを掬った指を、唾液に濡れた入り口に忍ばせる。

「や、あっ、あっ、ぅぁあ!!!」

キツく締めあげられながらもずるずると根元まで含ませれば、びくびくっと強い痙攣が起きた。

「あ…あ…っなんで…」

兄さんは、あっけなく白濁を吐き出していた。

茫然と自身を見つめている兄さんも、可愛い。

「かわいいけど、一緒に気持ち良くなろうって言ったのに。」

僕は悲しいよ。だから、今度こそ一緒に、ね。

そんなトコロに可哀そうだとは思ったけれど、質のいい縄だからそこまで痛くないかもしれない。

「ぃあぐっ!!や゛!!あぁあ゛ああ゛!!」

余っていた縄を、そそり立っている兄さんの自身に巻き付けた。

「いだ、い゛、ひぐっ」

「ごめんね、兄さん…ごめん。」

でも、泣きじゃくってるけど、ソコは萎えることなく、固さを保っている。

実はマゾヒストだったのか、薬のせいなのかは分からないけど、良かった。

「待っててね、兄さん。」

そう言って、後孔に今度は2本纏めて指を差し入れると、「あっ」と蕩けた声が聞こえた。




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