溺れる魚(2/3頁)
なんでか分からないけど、志摩が怒ってる。
志摩以外の男なんか好きになったことないのに。志摩以外の男と友達以上に仲良くしたことなんてないのに。
そこまで考えたところで、ぐりゅ、と綿棒をナカで回されて頭が真っ白になった。
「ィあ゛ぁああ!!!」
強制的にイかされたみたいに、勝手に体が跳ねて、勝手に涙が零れ落ちる。
「あぐっ…ゃだ、っ」
「あぁ、こっちも弄って欲しいん?」
ぬるりと後孔に指を差し込まれて、その感覚に脳内が揺れた。
いつもみたいにぞわぞわするだけじゃない。内壁をなぞられただけで、前立腺を押し上げられた時みたいにびりびりと背筋を快感が駆け抜ける。
「やあぁあ、あ、なん、でっ、ひぅ…!!」
「よう効くなぁ、コレ。ふ、そんな気持ちええ?」
ぬぷぬぷと入り口あたりで抜き差しを繰り返されただけで、足が跳ねあがる。
「…イきっぱなしやんか。まだ指1本やで?」
「も゛、やだ…っひぐ、う、しまぁ…くるし、っ」
快感が強すぎて苦しい。指を抜かれた後も、じんじんと疼くように熱を持っているのが分かる。
「ほんなら…苦しいのんに、慣れやななぁ…?」
「え、?」
ひやりとした何かが、指が入っていたソコに触れた。
ぐぐ、と押される感覚がして、冷たいソレが押し込まれた。
「っああうぅ…!!や、っなに、入れっ…」
「奥村くん、キスしたいからこっち向いてや。」
俺の言葉を遮るように、志摩にそんなこと言われたら、意識がそっちに行ってしまう。
唇を舐められただけで溶けそうなほど気持ちよくて、頭がじんと痺れた。
「ん、っンぁ、…は、ふ」
視点がすぐに定まらないほどの近さで、志摩が楽しそうに笑うから、どくどくと心臓が早鐘を打つ。
「しま…もっかい、」
「うん。でもな、覚えてる?今日は…おしおきやねんで。」
望み通りに優しい唇が落とされて、志摩の言葉の意味を考えていると、体の奥から揺さぶられるような感覚に、思考が焼き切れた。
「やああぁあぁっあ゛――!!」
せっかく唇を塞いでローターのスイッチをオンにしたのに、その衝撃から逃げるように暴れ出した奥村くんの爪が頬を掠った。
ぴりっとした痛みに自分の頬を撫でれば、僅かに切れたのか血が滲んでいる。
クスリがキツすぎたのか、もしくは悪魔の体には一層効果のある成分なのか。
小さいローターだというのに、暴れ方が尋常じゃない。
一度スイッチを切ると、全身を痙攣するようにびくびくと跳ねさせて、ぐったりとシーツに崩れ落ちる。
奥村くんの体をうつ伏せにさせるようにして、机の中から退魔用の札を取り出すと、両手を引いて後手にその札を巻きつける。
「あううっ」
「大丈夫や。痺れるだけのモンやから。」
不安げに身を捩って見上げてきた奥村くんを横向きにさせると、足も同じように一纏めに札で拘束する。
逃げられないように手足を拘束したせいで、怯えるように足を縮こまらせたその姿を見て、なぜか俺は酷く安心していた。
「罰を与えるんも、許しを与えるんも、俺だけなんやで、――燐。」
スライド式のスイッチに手をかける。
そして躊躇うこともなく、『強』まで一気にスイッチを押し上げた。
「あ゛あぁぐ、ぅあア――!!」
さっきのように手足をばたつかせて気を紛らわすこともできずに、快感に耐えることもできずに、達することもできずに。
体中を強張らせて、息も整わないのかひゅ、ひゅ、と叫び声の合間に引き攣れた呼吸音がする。
『弱』の目盛りまで下げてやれば、ぼろぼろと涙を流しながら、やめて、ゆるして、とめて、たすけて、とうわ言のようにひたすら繰り返して懇願してきた。
「し、ま、ひぐっ、あ、おね、がい、」
使いなれた携帯を開くと、レンズを奥村くんの方に向けた。
ぴろりん、なんて場にそぐわない音を立てながら、携帯にその痴態を次々と収めていく。
「や、やぁ、あ、やだ、っしま、やめっ…」
可愛い泣き顔も、綿棒が刺さったまま勃ちあがらせているソコも、ローターのコードが覗く熟れた後孔も。
「ほな、止めたるわ。」
振動を止めないままコードを引っ張ってやれば、胎内で蠢き続けているそれが引きずりだされる感覚にまた咽び泣く。
「ああぁぁああ!!や、やぁぁあ!!」
充血した内壁が僅かに捲れて、抜き去られるのを引きとめているようにも見えた。
は、は、と荒い息を繰り返す奥村くんの手足の札を剥してやる。
まだ痺れが残っているのか、ぎこちない動きで、それでも自身に突きたてられている綿棒を引き抜こうと、そこに手が伸びた。
「あかん。」
パシリとその手を払いのけると、奥村くんがまたひくりと喉を戦慄かせて泣きだす。
「しま…しまっ…」
「イきたかったら、…わかるやろ?」
奥村くんの痴態を見続けて張り詰めた自分のモノの先端で、後孔をぬるぬるとなぞってやる。
「あ…あっ…ぅう、し、しま…っ」
「あかん。ちゃんと言い。…あぁ、今日はちゃあんと証拠残しといたるから…」
今度はムービーに切り替えて、録画ボタンを押す。
「や…そんなの、っやだ…」
「ほんならずうぅっとそのままやで。」
うー、と子供のように唸りながら見上げてくる。
「ほら、自分で足持ちぃ。」
入り口を何度も撫でるように自身を擦りつけながら、優しい声音で指示を与えてやれば、躊躇う震える手が両足に伸びた。
恥ずかしいのか閉じた両膝の裏に手を差し入れて、僅かに持ち上げるように掲げる。
「自分で足開くんや。」
「あっ、あっ、」
狭い入り口に先端だけを押し込むと、快感に蕩けたような声が上がった。
内壁は熱でもあるかのように熱くて、じっとりと滑りを帯び、誘いこむように纏わりついてくる。
そして僅かな侵入の刺激だけで、強張って閉じていた両膝からふにゃりと力が抜けた。