◎ 恋は盲目(1/2頁)
「奥村、雪男くんっ、あの、これ…」
小さくて、髪が長くて、白くて、可愛らしい子だった。
待ち合わせの中庭で、ぎりぎり女の子の声が聞こえる距離で。
俺の手には弁当が二つ。
なぜか、逃げてしまいたいと思った。
なのに。
「…兄さん?」
「…っ、あ、わり…」
「え、っあ、…すみませんっ、あの、じゃあ、これっ」
可愛らしい薄ピンクの封筒を雪男に渡すと、女の子は走り去ってしまった。
「…なんだか人も多いし、屋上行く?」
『首席の奥村雪男が告白されている』。それだけで人の視線を集めるらしく、俺達の周りには、僅かに人だかりができている。
「…それより、ソレ、どうすんだよ。」
雪男の手には、手渡された手紙。
「あぁ…返事はちゃんとするけどね。」
そう言って、雪男は手紙を内ポケットに仕舞った。
できるなら、手紙に聞きたい。
雪男の心臓、今、ドキドキしてるのか?
何も言えず、先に歩き出した雪男の背中を見ながら歩き出した。
内緒で手に入れた屋上の合鍵で、誰も居ない屋上に入る。
――ごめんね、君には悪いとは思うけど。
決して口に出すことなく、心の中で、手紙の持ち主に謝る。
手紙を目で追いながら唇を噛みめる兄さん。
そうだ。僕はこの兄さんを見たかっただけだから。
澄み渡った青空の下、弁当を食べ終わった兄さんが、じっと僕の胸元に視線を留める。
「、っ」
口を噤んだまま近づいてきた兄さんに、壁に押し付けられるようにして、キスをされた。
僕の足を跨ぐようにして太腿の上に座わると、尻尾が甘えるように腕に巻きついてきて、思わず小さく笑みを漏らせば、兄さんがふくれっ面で顔を真っ赤にして睨んできた。
「わ、笑うなっ!」
「ふふ、だって珍しいね。どうしたの?」
そう聞けば、また口を噤んでしまう。
ちゅっちゅと柔らかい唇が何度も落とされ、甘んじてそれを受けていれば、今度は首筋に口づけられた。
そしてネクタイが外されて、ぷちぷちとシャツのボタンが外されて、可愛らしいリップ音が首筋から胸元に降りて行く。
(…まさか、ココでする気…?)本当に、まさかだ。
僕は場所が何処だろうがどんな状況だろうが、兄さんを愛することに羞恥なんか感じないけど、兄さんはちょっと電気が明るいと「待って待って無理無理」とあたふたするのだ。
そんな兄さんが――
今度はカチャカチャとベルトを外す音が聞こえる。
「兄さん、」
「お前は、動かなくていーから、っ」
そっと下着の中に手を突っ込まれて、外に出された僕の自身に熱い息がかかって、ぺちゃりと熱い舌が先端に僅かに触れる。
そして意を決したように、むぐ、と温かい粘膜に包まれた。
「は、…っにいさん…」
髪を梳き、頬と耳を撫でてやれば、真っ赤になった顔で、僕のモノを咥えながら見上げてきた。
「いつもと、っ違うね」
「んむぅ、ぅ、ッ」
暗闇の中での姿は妖艶だが、青空の下で見る兄さんは幼くて、酷くいけないことをしている気分になる。
「っ、ぷは、ぁ」
完全に勃起したところで、口を離された。
「は、は、っ」
荒い息。真っ赤な顔。切なげな眼。震える手。
震える腕で自分のベルトを外しにかかる兄さんの手を、思わず掴んだ。
「兄さん、どうしちゃったの。」
「…っいや、なの、かよっ…」
ぐし、と涙を手荒く拭う兄さんを宥めるように優しく頭を撫でる。
「…そんな悲しそうな顔でされるのはね。どうしたの?おしえて…?」
緩く抱きしめると、兄さんはそっと、僕の上着のポケットを指でなぞった。
「…いつか、お前に、か、かのじょが、出来る日が…来るんじゃ、ねーかって…っ、おれ、かわいく、ねーし。いつも、俺、いやだとか、そんなのばっか、言う、から…」
ぞくりと小さく快感が走った。
手紙ひとつで、こんなに嫉妬してくれるなんて。
「バカだなぁ、兄さん。彼女なんて要らないよ。兄さんが居れば。」
そう言ってそっと震える腕を包むように抱きしめてやる。
そうして耳元で優しい言葉を紡いであげる。
「でも、たまには今日みたいに積極的なのも嬉しいかも。」
「――っ!!あ、も、もう授業、始まる、よなっ!!じゃぁ――」
いきなり現実に戻ってしまった兄さんを、逃がさないとでも言うように、回した腕に力を込めた。
「ね、兄さんがしようとしてたこと、最後まで、シて?……ほら、これで授業なんて行けないし、ね?」
ぐ、と固いままの自身を兄さんの太腿に擦り付けるようにすれば、真っ赤になったけど、羞恥に耐えながらズボンと下着をずり下ろすその姿に、思わず自分の唇を舐めた。
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