すぱいらる!!(2/2頁)

スキヤキ鍋を空にして、4人でわいわいと平凡な会話に花を咲かせていれば、満腹になった奥村の目がとろんとしてきた。

「お前なぁ、子供か。」

「うー、ねむい…すぐろー」

拙い声で名前を呼ばれて、僅かに頬が赤くなる。

「ちゃんと風呂入って寝ぇや。朝から入っとる時間ないやろ?」

「うん、」

目をこすって、のろのろと立ち上がると、『じゃーふろいこ、』と歩き出す奥村に続いて、風呂場へと向かった。



「うおお!すげーな勝呂!」

楽しそうにはしゃぐ奥村は、どうやら眠気も吹っ飛んだようで、ぺたぺたと俺の胸の辺りを触っている。

「ま、まぁ鍛えとるからな…」

こいつの褒め言葉には嘘やお世辞が無いところが好きだ。
ぺたぺたと腹筋や背中を触られて、恥ずかしいが、正直、嬉しい。

「雪男もすげーと思ってたけど、勝呂もすげーな!!」

その奥村の言葉に若先生を見やれば、鍛えた体はしなやかそうな筋肉に覆われていた。

そして、任務で受けた傷だろうか、体中に残る薄い傷痕が、なぜか物凄く大人に見えて、思わず唇を噛む。

俺は、奥村と並んで、サタンを倒せる存在になるって決めたんや――

決意を固めるように奥村の方を見る。

「っうぐ…!!」

楽しそうにぱたぱたと跳ねるのは、奥村の、悪魔の尻尾。

細い腰、白い肌から伸びる漆黒の尻尾は、なぜか、とても卑猥に見えて、思わず変な声が出た。

「わ〜奥村くん、尻尾触らして〜!!」

「うぎょっ!!や、し、しまっ、ンぁっ」

志摩が包むように緩く握った手を、付け根からつつ、と滑らせたせいで、びくびくと奥村が体を跳ねさせる。

――っていうか、おま、なんちゅう声っ、

思わず視線を反らした瞬間、す、と静かに若先生が俺の横を通り過ぎた。

完璧な笑顔で。

「志摩くん…すみません、ちょっと授業で必要な材料の準備を手伝っていただきたいのですが…」

「え?なんでっしゃろ?」

若先生の人の良さそうな笑みに、思わず普通に答えた志摩だったが、次の瞬間には顔を引き攣らせた。

「これの泥を洗い落していただけませんか?」

にこにこと若先生が差し出したのは、透明の瓶。

中には――大量のミミズがうにょうにょと蠢いていた。「――――ひぎゃぁぁぁああ!!!」












「…はっ!!」

「お、起きたかー?」

「おぐむら゛ぐん!!なんやめっちゃ悪夢見てんけど!!」

ミミズがな、大量のミミズがな、と手をわきゃわきゃさせながら説明する志摩に、それ現実だぜ、と教えてやった方がいいのか、黙ってた方がいいのか。

悩んだ末に俺は黙っててやることにした。

「奥村、布団干しといてくれたんか。」

志摩と喋っていると、ふかふかの温かい布団に気付いてくれた勝呂に声をかけられた。

「ん?おー、きもちーだろ!」

「おう、ありがとぉな。」

自慢げに答えれば、素直に礼を言われて、なんだかそわそわしてしまう。


「雪男はまだ寝ねーの?」

「うん、この資料纏めてからにするよ。」

げんなりした顔をすれば、隣で志摩も同じ顔をしていた。

うん、やっぱり俺達じゃ雪男の気持ちは理解できないみたいだ。


でも雪男もいい肉買ってきてくれたし、今日のことは楽しみだったんだと思う!



4つ並べた布団に入って、ごろごろしながらいろんなことを話した。

塾に入った時のこと、授業のこと、試験のこと、小さい頃のこと、そして、未来のこと。


楽しい。嬉しい。

こうやって、話し合える仲間が居るってことが。


「たのし、なぁ…」











「ほんでな、…ってあれ、奥村くん?」

「あかん、寝とるでコレ。」

「普段はとっくに寝ている時間だからね、」

そう言う若先生の声は、今日一番優しかった。

「そろそろ僕も寝ようかな。」

眼鏡を外して目頭を押さえた若先生は、奥村くんを一番端の布団に寝かせると、その隣の布団に潜り込んだ。

((…まぁ、そらそうやろなぁ…))






*


亜璃渚様・りさ様、リクエストありがとうございました!!

りさ様リクの『お泊まり会』的な雰囲気で、メンバーに亜璃渚様リクの志摩・勝呂を参戦させていただきました!

こねこたん仲間外れにしてごめんね…!ちゃんと大好きだよ…!!この醜い争いに巻き込みたくなかっただけなんだぁぁぁあ!!

そしてやっぱり雪男様を勝利させてしまいました…(笑)



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