ボーダーライ (1/5頁)


欲に終わりがないことを、改めて知った。



守りたくなった。

触れたくなった。

知って欲しくなった。

僕だけを見て欲しくなった。

兄さんの中に僕を刻みつけたくなった。



最初は、ただ守られていた僕が、純粋に兄さんを守れる強さが欲しかっただけだったのに。












「兄さん…」

一糸纏わぬ姿にさせた兄さんの首筋に口を寄せ、何度も何度もキツく吸いついて痕を残すも、暫くするとすうっと消えてしまう。

「イ…っ、ぃた、っ」

皮膚をちぎってしまわないよう、ぎりぎりの力で首筋を噛んで歯型を残す。

それすら、窪んだ皮膚は戻り、赤みは消えて健康的な白い肌へと戻った。


僕の証を刻みつけたいのに、兄さんの体はそれを許さない。

それならば、その心に。


「っなに、…ゆき、っ」

「じっとしてて、兄さん。」

ネクタイをそっと兄さんの眼に巻きつけた。

「ゆき、お…っ」

ぎゅっと外れないように結ぶと、その上から何重にも包帯を巻く。

完全にその深蒼色の瞳を塞ぐと、兄さんは怯えたように唇を震わせた。

「ゆき…ゆきお…」

安心させるように、白い頬に口づけを落とす。

「うん、だいじょうぶ。」

そっと兄さんの両手を取って、その震える腕にもくるくると包帯を巻いた。

「あぁ…後ろで縛った方が良かったかな。」

ぐ、と僕の胸を押すように抵抗するその腕を掴みながら、耳元で囁く。

「やだ…や、っ…雪男、っあ…!」

腕をくぐるようにして淡く色づく胸の飾りに吸いついた。
視界を塞がれているせいで僕の行動がわからないのか、びくりと大げさなほどに跳ねる体。

白い頬と首筋が朱に染まっていく様に、欲情してじわりと下肢に熱が溜まっていく。

「は…ぅ、ぁ…っん、んンっ」

「いつもより敏感になってるね。やっぱり見えない分感じるんだ?」

かあぁっと一瞬で耳まで赤くなった兄さんに気をよくして、唾液でぬるぬるになった乳首をぐにぐにと指で押しつぶすと、また嬌声が上がった。












抵抗しようと思えばできた。
腕の包帯なんて、少し力を入れれば引きちぎることなんて簡単なのに。

なぜか何一つまともに抵抗できないまま、雪男に翻弄されていた。

「ふあぁ…っあ、や…や、っ」

「腹筋ぴくぴくしてる。気持ちい?」

ずっと熱い舌が這っていた胸から一瞬雪男が離れたと思ったら、腹部を噛まれて臍に舌を差し入れられる。

「やめっ、ヤだ…っ、雪、そんなとこっ」

ぞわぞわする。ネクタイと包帯を二重に巻かれているせいで僅かな光すら入らない視界は、雪男の動き一つ捉えらない。
別の生き物のように雪男の舌が這う。

臍の小さな窪みに舌を入れられると、ナカまで侵入されるようなぞわぞわした感じがして思わず身を捩った。

「あうっ!ンぅ…っ」

今度は腰骨、そしてまた離れたと思ったら太股に。

つつ、と舌が太股の付け根まで上がってきて、思わず雪男の髪を緩く掴んだ。

「何期待してるの?」

雪男の言葉にまた顔が熱くなる。

「してな、…っ」

「うそつき。」

「ひうっ!」

ふうっと冷たい息が自身にかけられる。それだけのことなのに、びくりと足が痙攣するように勝手に跳ねた。

「期待してるんでしょ?ココ、勃ってるよ」

自分のモノに雪男の息がかかる。その僅かな感覚にすら、全神経が集中してしまう。

「そんなとこでっ…喋んな、ぁっ」

「ふふ、ぴくぴくしてる。まだ何もしてないのに、ね?」

雪男の言葉に、先端から零れた先走りが、竿を伝うのが自分で分かった。

「ひあぁぁっ!!」

急に熱い舌に裏筋を舐められて、イきそうになるくらいの快感が一気に背中を駆け抜ける。

「あぁ…あっ…」

「零れたから勿体ないと思ったんだけど…そんな気持ちいいんだ?…ねぇ、もっとちゃんと舐めて欲しい?」

一舐めされただけなのに、はぁはぁと息が上がる。
立てた膝が小さく震えだした。

ちゃんと舐めてもらえたら、どれほど気持ちいいだろう。

ごくりと思わず喉が鳴って、けれどそんなこと言うわけにもいかずに唇を噛む。

「…あぁ、それとも…こっち?」

「っあ!」

乾いた指で入り口を撫でられただけなのに、ひくりと戦慄く後孔に恥ずかしさが増す。

「でも…、兄さんは欲張りだから両方かな。」

「あぁあう…!!」

後孔の縁をカリカリと爪で引っ掻かれながら、熱い舌で自身を舐めあげられて、真っ暗な視界がちかちかした。
根元らへんの裏筋を指で摩られながら、先端を熱い粘膜に包まれる。
雪男の口内だと頭では理解できるのに、なぜかいつもより感覚が鋭利になったみたいに感じてしまう。

イきそうになった寸前でぴたりと雪男の舌が止まって、ずるりと口内から引き抜かれる感触がした。

「ゅ、き…?」

離れていった熱に、見えないと分かっていても雪男の姿を探して視線を彷徨わせてしまう。

「兄さん、僕のも舐めて…」

ぐい、と後頭部に手が回されて引っ張られ、不安定さに思わず手をシーツに落として支える。
そうすれば熱くてつるつるした肉が、俺の唇をなぞった。

ソレが何か、すぐに分かってしまった。




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