を孕む薬
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「ぁ、っあア――――!!!」

指とは全く違う、質量のある、それ。

熱くて、別の生き物が入り込んできたみたいに、どくどくと脈うっている。

「ひ…ぁ…あ…」

また達したのか、と。自分の体なのに、どこか傍観するようにぼんやりそう思った。

ひくんひくんと絶頂の波に合わせて後孔が勝手に締まり、意識が朦朧としてくる。


そして息が整いかけた頃、ずぐずぐと嫌な熱が、またナカから生まれた。

「っぁ…っ、っ」

「っは、…兄さん…っ」

雪男が何かに耐えるように、眉間に皺を寄せた。

でもそんなことを気にしていられないくらい、ナカが熱くて、ぴりぴりして、そして、むず痒くて――

「ふっ、く、ぅ…」

雪男のモノを締めつけるように内壁を締めれば、僅かにそのむず痒さが軽くなって。

「っあ…」

「兄さん、それ、気持ちいい。…動いてないのにイっちゃいそう。」

そう言われて初めて意識的に何度も締めつけていることを自覚した。

「っや、み、見んな…っ」

はぁっ、という雪男の熱い息が首筋にかかって、それにすらびくりと反応してしまう。

じくじくとした感覚は去ってくれる様子もなく、どんどん追いつめられていく。

僅かに動くだけでナカは快感を呼び、思わず「ゆきお、」と切羽つまった声が漏れた。

「動いて欲しい?」

低い声で哂うようにそう言われれ、恥ずかしさに歯を食いしばって首を横に振った。

そうでもしないと、頷いてしまいそうになるから。

「そう。腰揺れてるから、動いて欲しいのかと思った。」

「―――ッ!!ちが、」

じっとしていればそのじくじくした感覚に耐えられそうになくて、逃げるように腰を捩ってはやり過ごしていた。

言われてみれば隠せるはずないのだけれど、指摘されれば否定するしかない。

否定しなければ、何かが崩れてしまう。


「言ってくれたら、兄さんの好きなことしてあげるのに。」

熱に浸食されるように、脳がぐにゃりと一瞬歪む。

「は…ふっ、っ、ぬ、けっ」

目をできるだけキツく瞑ってそう言うと、雪男は優しい声で「違うよ?」と諭した。

「兄さんが、今…今すぐ、して欲しいこと…なに?」

ゆっくりと、促すように、雪男の言葉が脳みそに直接響く。


だめだ、だめだ、


振り払うように何度も左右に首を振れば、ずるりと半分ほど雪男のモノが引き抜かれた。

「ひぅ…あ!!ぁ…あ…!!」

ゆっくりと内壁が閉じていくのがわかって、そして、閉じた内壁同士が触れたところから、熱と痒みが一気に襲ってきた。

「うぅあ―――!!っやああ!ゆきおっゆき、っ!」

熱くて、じくじくして、痒くて、たまらなかった。

脳がどろどろと溶けていくみたいに、何も考えられなくなった。


助けて欲しかった。


「兄さん、どうして欲しい…?」

止めのように、雪男の声が真っ直ぐに入ってきて、理性を破壊した。


「…ッぅ、…うご、いて…っ、ゆ、き…っ!!」

雪男の熱い舌が口の中に入り込んでくる、その感覚さえ、酔いしれるほどに鋭利な快感だった。

「ひぐっ―――!!」

熱い内壁を擦りあげられながら一番奥を突きあげられて、悲鳴みたいな声が漏れる。

「兄さん、…燐、っ燐」

「あっ、あ、あぅ、あ、あぁぁ」

気持ちいいだとか、そんなのを通り越した感覚だった。

揺さぶられるままに声を上げることしかできず、意識が朦朧とする中、必死で雪男の首に震える手を伸ばした。


きっと、この雪男の中の、どっかに居るんだ。

俺の、『弟』が。













あられもない声をあげる兄さんが、綺麗で可愛くて、可哀そうだった。

思考さえ奪うほどの快楽の波に襲われているであろう、その体はずっと痙攣していて、過ぎる快感にずっと涙を零している。

「燐、っ」

それでも名前を呼べば、応えるように首に手が回されて、兄さんの胎内に、僕が浸食できる一番奥に、熱を吐きだした。

「っ…ゅ、き、」

兄さんの眼は、何かを探すように、僕の眼を真っ直ぐ見ながら、けれども僕を見てはいなかった。

無性に悲しくなって、力一杯、兄さんの体を抱き締める。

まるで、すがり付くように。


「兄さん…僕を…っ」


僕を見て。

僕を愛して。



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雪男は兄弟を越える全てになりたくて、燐は唯一の血縁である兄弟の繋がりを守りたくて。そんな二人。



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