を孕む薬
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「おはようございます。奥村雪男です。体調が悪いので今日は休みます。すみません。」

まったく体調なんて悪くない上に、悪そうなフリもせず学校に電話を入れると、教師は少し戸惑ったように『そう、お大事にね』と言った。

ぴ、と無表情のまま通話を切ると、塾の方へと足を向けた。











「ただいま、」

「雪男!お前、メール見てねぇの?学校休んだのか?」

今日は悪魔薬学の授業がなかったから、兄さんと顔を合わすのは朝以来だ。

『兄』の顔をして、兄さんは責めるように僕の肩を掴んだ。

きっとお昼御飯の時に僕が居ないことを知ったのだろう、お昼にメールが入っていたけれど、返さなかった。


「これ、作ってたんだ」

試験管に入ったそれを見せると、不思議そうな顔をした。

「ぱっちてすと、全部だめだったんじゃないのか?」

「うん。だから違うもの作ってた。」

僕が笑いかければ、兄さんが不安そうな顔をする。

どうして?


「兄さん…」

近づけば、後ずさるように逃げる。

どうして?

「…燐、」

キスをしようとすれば、ぐっと胸の辺りを押し返された。

どう、して。


「ゆき…お、やめよ、もう、…こんな、こと。」

俯いた兄さんが、ぽつりとそう呟いた。


「こんなこと、って?」

「っ、それ、は…、っキス、とか、ほかの、こと、とか…」

とぎれとぎれの声が、僕の中のストッパーを外していく。



ダンッと、大きな音を立てて、兄さんの体をベッドに縫い付ける。

「痛っ…!」

近づいてしまえば、兄さんは僕を傷付けることを躊躇って、暴れられなくなるから。

「っふ、ぅっンッ!!」

噛みつくように口づけて、舌を差し込むと、キツく食いしばられていた歯が全く侵入を許さなかった。

執拗に唇を味わった後に離れれば、真っ赤な顔をした兄さんが、避けるように横を向いた。

「っアぅ!」

首筋に噛みついて、右手でベルトを、左手でシャツのボタンを外そうとすれば、両手とも兄さんの腕に掴まれた。

「やめ、ろっ、ゆき…!」

さすがに、本気の馬鹿力を出されれば全く手を動かせなくなる。

「いいよ。殴っても、蹴っても、舌を噛み切ってくれてもいい。」

唇が触れるか触れないかの距離でそう言い放てば、兄さんの瞳が揺れて、僅かに僕の両手首を拘束していた手の力が緩まった。

震える手に掴まれたまま、シャツの上から腰を撫で上げ、乳首を何度も引っ掻くようにすれば、う、と小さく声が漏れる。

ぐにぐにと押したり、緩くさすったりしているうちにぷくりと立ち上がってきた突起を、爪先できゅっと押しつぶせば、「あ、」と口が開いた。

その瞬間を見逃さず、ぎりぎり触れないでいた唇に貪りつくと、また歯を食いしばってしまう前に舌を割り入れる。

「ん、んっ…!!」

喰らいつくすように舌を伸ばし、上顎をちろちろと舐めれば、それだけでびくびくと体が跳ねる。

親指で左の乳首をぐりぐりと刺激したまま、ベルトを外そうとすれば、その金属音に怯えるように手首を抑えていた力が強くなった。

「ん――!!」

舌を引っ込めたままの兄さんに、一通り咥内を蹂躙すると、舌を引き抜いてやる。

「っふぁ、や、め…っゆきお、っ」

説得力の無い、目尻を朱に染めた涙目で睨まれて、余計煽られるように下肢が重くなる。

「兄さん、手、痛いよ…」

そう言えば、びくっと手が添えられるだけの抵抗になる。

カチャカチャという、リアルに脱がされている音が嫌なのか、兄さんは何度も何度も「やめろ」と言う。



それが、傷付けることに怯えた兄さんにできる、唯一の抵抗。




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