01総受け
対・勝呂竜士の場合
昼以降、自販機コーナーを周ってみたが誰にもあわず、結局塾の時間になってしまった。
体育実技の授業は毎回ハードだ。
1時間以上、みっちり悪魔との戦い方を教えられる。
ハードだけど、一番好きな授業だ。
「はい、じゃあ今日はここまでー」
解散の声に、バタリと全員が座り込んだり、大の字になって転がった。
一応体力には自信のある俺は、大の字になって寝転がりながら息を整えているものの、頭の中では今日特売のスーパーのチラシ内容と、今晩のメニューのことを考えていたりする。
そんなことをしているうちに、座っていた勝呂がタオルで汗を拭くと、カバンの中を見て小さくため息を吐き、財布を取り出して出口へと歩き始めた。
(キラーン!!)
なんてナイスタイミング。
神様が、今だ!行け!ゴー!と言ってるに違いない。
少しの時間差で追いかけるようにして出口へ向かうと、予想通り、休憩室の隣の自販機でスポーツドリンクを買っている勝呂が視界に入った。
後ろからそっと近づく。
(勝呂って雪男と身長同じくらいだよな?)
今度こそぶつけねーぞ、と決心して、水分補給真っ最中の勝呂の肩に、ひょいっと背伸びして顎を乗せた。
(よし!俺カンペキ!)
「ぶっふぉ!!っな…!!」
びっくりさせてしまったみたいで、盛大に吹き出した勝呂に、ごめん!と心の中で謝りながらも、『小悪魔』ミッションのためにそろりと腰に手を回す。
「っお、おく、むらっ」
「すぐろ…喉かわいた…」
実際に喉はカラカラだったので、本気で水が飲みたかった。
「しゃ…しゃーないな…」
ここで一悶着あってから渋々買ってくれるか、もしくは追い返されるかだと覚悟していたら、拍子抜けするくらいにあっさりとスポーツドリンクを渡された。
「え…?」
本当に、あっさりすぎて思わず掌に乗ったそれをまじまじと見てしまう。
「飲んで…いいのか?」
「さっさと飲めや!/// 運動のあとは水とかお茶よりもこういう、」
うんちくが始まったので、心の中でサンキュ、と礼を言ってから、とりあえず先にカラカラの喉を潤させてもらうことにした。
確かに、運動のあとの冷たいスポーツドリンクは、体中に染みわたるように美味い。
「ぷはっ、うっめー!!」
「普通のスポーツドリンクやぞ。そんな、」
「ほんとに美味い!だって、すぐろに、もらったやつだから…」
確かテレビで言ってた。『奢ってもらったら尚更美味しく感じる』。
まさにそうだ。いつもより美味い気がする。
「…っ!!///」
3分の2ほどを一気に飲むと、向こうの方で勝呂を呼ぶ子猫丸の声がした。
「あ、呼んでるぞ?」
「お、おう…。」
何か言いたげのまま、走りだした勝呂に、あ、と思い出したように声をかけた。
「勝呂!」
「っ、なんや?」
「ありがとな!」
ちゃんとお礼を言ってなかったと思って。
なぜか顔を赤くした勝呂は、小さく「おう」と言って、走り去ってしまった。
みっしょんこんぷりーと!
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1日で3回もミッションをクリアしてしまった。
そしてなぜか次の日から毎日、
2限目と3限目の間には志摩がいちごみるくを持って教室に現れ、
昼は水筒を持っているので、雪男が食堂で食後のデザートと紅茶を買って来てくれるし、
塾が終われば、勝呂から「これ飲んどけ」とスポーツドリンクを渡される。
塾が無い日にはメフィストの所に行って、珍しいケーキとか和菓子をもらって。
やっぱり、悪魔の俺は『小悪魔』の素質もあるみたいだ。
(だって悪魔より小さいんだもんな!)
*
こんな燐たんも好き…!振り回されたい!
END☆
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