◎ 恋の心音(4/5頁)
木々が鬱蒼と茂っているように見えて、下はきちんと手入れがされていて、木の間からは綺麗に花火が見える。
「ぅ、わぁー…!!」
ドドドンッという、体に振動が伝わるくらいの、大きな花火。
奥村くんは大きな蒼い眼にチラチラと赤や緑や黄色の火の欠片を写して、輝かせていた。
綺麗やな、と素直に思う。
花火より君の方が綺麗やで、なんて言葉、言ったことはあったけど思ったことは無かった。
今日初めてそう思ったのに、そんな嘘臭いセリフ、言えなかった。
言えなかったから、かわりに後ろから抱きしめた。
「しま…?」
「好きや、奥村くん。」
「――っ」
耳朶を口に含めば、ぴくりと肩を震わせて、食んでいる皮膚が熱くなるのを感じた。
「こんなに、ぜんぶ、好きになったん…奥村くんだけやねん…」
まるで懇願するような自分の声は、奥村くんに出会うまで、自分でも知らなかった声音で。
欲しくて、欲しくて、こっちを向いてくれてたって不安で、傍に居てくれてたって縋りたくなる。
そうしてキツく抱きしめれば、腕から逃れるように奥村くんが離れた。
振り返ったその蒼眼が俺を射抜く。
「奥村くん?」
「志摩、何がそんな不安なんだよ。俺が不安にさせてるのか?」
何が、と問われれば うまく答えられなくて、言葉に詰まっていると、ぎゅう、とキツく抱きしめ返された。
「教えてくれ、…どうすれば、志摩が不安じゃなくなるのか。」
「…キス、して」
「なっ……、ッ」
そう言えば、一瞬言葉に詰まったものの、少し視線をさまよわせた後、覚悟を決めたようにぎゅうと目を瞑った奥村くんが唇を押しあててきた。
大事にしたい想いと、束縛したい欲求が自分の中で巡って、僅かに欲求が嵩を増す。
「っン…!しま、っン、んぅ!」
舌を差し込んだ俺にびっくりしてか、後ずさった奥村くんを逃がすまいと木の幹に押しつけるようにして、ひたすら咥内を貪る。
さらに膝を奥村くんの両足の間に割り入れるようにすれば、びくりと体が跳ねた。
浴衣がはだけたそこから触れる、肌の感覚がどんどん理性を奪っていく。
「っあ、しま…」
唇を放して首元に吸いつく。少しでも長く痕が残るように、強く。
首筋から鎖骨まで、舌を滑らせて何度も、何か所にも印を残していく。
胸元からするりと手を差し入れてその滑らかな肌に手を伸ばせば、制すように震える手が俺の手首を掴んだ。
「しまっ…こんな、とこ…でっ…」
「欲しいんや、奥村くんが。…どうしても、今。」
だってな、こんな奥村くん、誰も知らんのやで。俺以外。
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