◎ Dice(2/6頁)
正十字駅の近くのホテル。その8階へと登っていくエレベーターの中で、奥村くんが緊張したように笑った。
「志摩の兄ちゃんに会うとか、すげーキンチョーするっ!」
アホやなぁ、今からひいひい鳴くことになるんに。
「806…あ、ここや。」
ノックをして暫く待てば、カチャリと扉が開いて、酒臭い金髪が覗いた。
「…おー、入れや。」
「あ…の、お邪魔、しますっ!」
その声に金兄がピクリと反応して振り返る。
「…何や、そいつ。」
「は、はじめまして、奥村燐です…!」
律儀に挨拶する奥村くんと金兄の間に割り込んで、金兄の耳元で「この子やで」と言えば、苦虫を噛み潰したような顔をして「はぁ?」という返事が返ってきた。
うん、予想通りや。
とりあえず、飛び蹴りされる前に金兄をその気にさせな殺されてまうやんか。
「ちょ、金兄落ち着いてぇや!ほら、奥村くんも頑張って!」
「へ…?お、おれ?」
奥村くんに近づくと、羽織っているシャツを脱がせて、そのまま手首のあたりで後手に拘束する。
トンッと背中を押して布団に転がすと、文句を発しかけた口を掌で覆うように塞いだ。
「んん…!?」
「あ、金兄、結界は?」
「もう貼っとる。つか、マジでそいつ?ないわーお前、」
Tシャツを捲って尻尾を外に出せば、金兄が息を詰めたのが分かった。
「なんや、これ…」
「ゆうたやろ?奥村くん、悪魔と人間のハーフやねんて。」
遠慮なしに金兄が尻尾を掴む。
「んぐぅ!!」
「あ、尻尾は急所らしいから、気ぃつけたってや、」
へぇ、と言ってにやりと笑った金兄は、どうやら少し興味が出てきたらしく、揺れる尻尾を捕まえたり離したり、遊びはじめた。
「んふぅぅう…!」
痛みのせいか、目尻には涙が浮かんでいて、「離せ」と懇願の眼が見上げてくる。
「奥村くん、暴れんとってや。金兄キレたら俺がボコられるんやから。」
そう言えば、びくりと体を強張らせる。
明るい室内でカチャカチャと奥村くんのベルトを外してズボンを剥ぎとった。
「うわ、マジかいなお前。」
「まぁまぁ、一回ヤってもーたら出来るもんやで、金兄。」
「なんやその上から目線腹立つわー。手どけぇ廉造。」
ぺろりと上唇を舐めた金兄の眼の色が変わった。
まさか、や。
あの女好きの弟が男に走ってるとは思わんかった。
結界貼っとるからどんだけ声上げても外には漏れんし、と思って手を退けさせたが騒がれる様子はなく、怯えた目が見上げてくる。
ぞくぞくと背筋に甘い痺れが走った。
「し、志摩の兄ちゃん、…こんなの、冗談、っっッ」
「燐くん、ゆうたっけ。金造や。覚えやー。」
尻尾をぎゅうと握りながらそう言えば、目をキツく瞑って必死に頷いた。
うーん。いけるかも。
元々かいらしい顔しとるし、痛みで歪んだり怯えたりすれば、その表情からは女には無い色気を出しよる。
まー女とアナルセックスはしたことあるし、大丈夫やろ。
「奥村くん、後ろほぐす間、金兄の舐めたって、」
「…は…、?」
本気でその意味が理解できないのかしたくないのか。
四つん這いに――いや、燐くんは後手に縛られてるからケツだけ上げた格好で、俺の前に伏せさせる。
必死に肩で起き上がろうとしているのを手伝うように、胸の下に枕を入れてやった。
いや、はよ舐めて欲しいだけなんやけど。
ケツの方では廉造が燐くんのボクサーパンツずり下ろして、ポケットからローションを出して中身をぶちまけている。
お前、用意周到やな。
それを見ながら前をくつろげて、まだ反応もしていない自身を燐くんの口元に持ってく。
「ほら、咥えてぇな。」
結ばれた唇に先端を擦らせるようにすれば、燐くんはあまり身動きの取れない態勢のまま、廉造の方に視線をやった。
「奥村くん、はよ。」
廉造の言葉一つで、観念したようにそっと口を開く。
完全飼われとるやんか。
なんや欲しなってったなァ…
「って、へったくそやな、ジブン。」
「せやねん、奥村くんフェラだけは上手ならへんねん。」
拙くてぎこちない舌の動きを暫く見守っていたが、不意に、おもしろいことを思いついた。
「廉造、燐くん上向かして。」
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