◎ Dice(1/6頁)
※3P・強制ふぇら注意
「奥村くん、こっちくるー?」
坊と子猫さんは、予習だの復習だの自主練だので寮にはあまり真っ直ぐ帰ってこない。
やっぱり変態さんにはついて行かれへんわ。なんて思いながらも、窮屈な共同生活の中で好きに動けるのは俺にとっても好都合だった。
二人の遅くなる旨のメールを読んだ俺は、そのまま奥村くんに電話をかけて誘えば、少し緊張した声で、それでも嬉しそうに「い、行く」と返事が返ってきた。
――何されるか分かっとるくせに。
こうやって、部屋に呼ぶのは初めてではない。
塾で待ち合わせして鍵で戻れば早いのだが、あの旧寮から走ってこっちに向かっているだろうその姿を想像すれば、息を切らして来る方が可愛らしそうな気がして放っておくことにした。
引き出しからローションを取り出して、枕元に放る。
10分ほどで到着するだろうから、ベッドに寝転がって待っていると、大音量の煩い音楽が着信を知らせた。
「この曲…」
無理やり設定させられたその曲は、すぐ上の兄貴が好きなバンドの曲。
滅多に鳴ることのないその音にディスプレイを見れば、予想通り『金兄』と表示されていた。
「はい。…なん?」
『おぉ、廉造ォ、学校どや?』
「…そないなこと聞きたいわけちゃうんやろー」
聞こえないように小さくため息を吐くと、そう返す。
『ははっ。遠征で近く来とるんや。なんや急にこっち泊まることになってなぁ。女寄こしてー』
悪びれもせずそう言うと、『今日の気分は〜』とか勝手にべらべら喋り出す。
実の弟に女紹介せぇてどういう神経やねん。
しかも一晩だけで縁切れる女。俺15やで。
そう思いながらも、「誰おったっけ」と頭の中で携帯のアドレスを思い浮かべる。
(さすがに今の彼女貸すんは嫌やしなぁ。)
そこまで考えて、ふと。面白い案が浮かんだ。
「金兄、超レアなん、どぉ?悪魔と人間のハーフとか。」
『はァ?マジでゆうとんの?…なんそれ、美人なん?かわいいん?エロいん?』
「まぁ、そら見てからのお楽しみで。…ほんで提案やねんけどさぁ、貸したる代わりに、…俺も混ざってえぇ?」
他の兄貴達と比べて、道徳観やら倫理観やらがすっぽり抜けている金兄は、こういう時にだけ気が合う。
ぎゃはは、と下品な笑い声が携帯の向こうから聞こえて、泊まるホテルの名前だけ告げられると、ブチリと電話は切れた。
(まぁ好み似とるから顔は問題なくクリアやろうし、悪魔と人間のハーフゆうんも面白がるやろうし。)
相手が男だと知ってブチ切れないことだけを祈っとこう。
「ま、俺がいけてんから金兄はいけるやろ。」
考えるのが面倒臭くなってきたので、携帯と財布とローションをカーゴパンツのポケットに突っ込んで部屋を出た。
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