螺旋 (1/3頁)
※雪男の口調が荒いです・無理矢理系
いつからだろう。
いつも独りで喧嘩ばかりしていた兄さんが、友達に囲まれて楽しそうにしているのが「良かった」と思えなくなったのは。
「なんだかイライラしてるにゃー?」
ぐにぐにと無駄にデカい乳を押しつけてくる上司にため息を吐くと、「どけよ」と小さく制して去ろうとする。
「にゃははー怒ってるぅ〜。お前しばらく帰れてねぇんだって?」
「うっせぇな。任務だからしょうがねぇだろ。」
イライラを抑えることもできず、シュラにあたる。まぁ、この人はそんなこと気にしないだろうけど。
こうやって任務で帰れない日は、兄さんがどうやって過ごしているかだけが気になる。
きっと、塾のみんなと楽しくやっているだろうけど。
それが、許せなくなってきたのは、いつからだろう。
神父さんと、修道院のみんなと、僕と。
それだけが兄さんの世界だったのに。
「ただいま…」
「お、雪男おかえりー!飯食った?」
布団に寝そべりながら、足をぱたぱたさせてマンガを読んでいる兄さんに、聞こえないように溜息を吐く。
「あんまりお腹空いてないけど…今日のご飯何?」
「今日はさ、塾のみんな呼んで鍋したんだよ!雪男の分、先に分けて置いてあるぞ」
あぁ、イライラする。
僕が硝煙の匂いの中に居る間、兄さんは僕が居なくても楽しく笑ってたんだ。
――僕が、居なくても。
僕の中で、何かが軋む音がした。
どんっ、と。気付いたら壁に拳を叩きつけていた。
「っゆ、きお?…どうしたんだ?」
「うるせぇな…」
「な、に…怒ってんだよ、ちゃんと雪男の分とって…」
「んなこと、どうでもいいんだよ」
ゆっくりと近づくと、兄さんは怯えたような目をした。
志摩君や勝呂君や子猫丸君には笑いかけたんでしょう?
しえみさんや神木さんにも。
だったら僕にも笑いかけてよ。
ねぇ、兄さん。
兄さんが呼んでいた僕のSQを放り投げると、鈍い音を立ててそれは床に落ちた。
「ゆき――っ」
兄さんの上に馬乗りになって、声を上げようとしたその口に、自分の唇をまるで喰らうように重ねる。
舌を差し込めば、兄さんは息を詰め歯を食いしばって侵入を拒んだ。
「口、開けろよ」
「――っ」
強情なその姿にまた苛立って、ガリ、と下唇を噛めば、兄さんが痛みに顔を顰める。
ネクタイを緩めると、兄さんの両手を上に引き上げるようにして、両手首に巻きつけた。
「何す、っ雪男!」
じたばたと下で抵抗を続ける兄さんのせいで、うまく結べない。
「暴れんな、イライラする」
思いっきりネクタイを左右に引っ張ると、合わせるようにした両手首がぎゅうと締まった。
「――い、たっ、」
Tシャツを手首まで脱がせ、縛ったネクタイの上からさらにそれで固定するように括ってやれば、兄さんがびくりと震えた。
「抵抗するなら、すれば?その自制の効かない力なら、外せるかもね。」
ひくり、と兄さんの喉が震えて、僕はなぜか哂っていた。
僕は兄さんのほとんどを知っている。
どんな言葉に喜ぶのか、どんな言葉に傷つくのか。
唯一知らないこと、それを埋めるために。
「兄さんは今から、僕とセックスするんだ。」
頭の悪い兄さんでも、ちゃんと理解できるように。
「なっ…!やめっ、ゆきお…ゆき…っ」
ひどく怯える兄さんが愛おしくて、そっと震える唇に口づけを落とした。