軋む心臓 (1/4頁)
ぼくと兄さんと神父さん。
僕の家族。
歪み始めたのは、兄さんが覚醒したから。
…それとも、もっと前から?
軋む心臓
「うぎゃ!ちーこーくーすーるぅぅ!!」
ドタドタと近づいてくる足音と声は、この建物では僕以外には兄さんしかいない。
「おはよう、兄さん」
ウコバクの作ってくれた朝食を食べながら朝の挨拶をする。
毎朝の光景だ。
毎朝こうやって学校へ行くまでの時間を過ごす。
学校ではクラスが別なので、兄さんにはたまにしか会わない。
夕方は塾で教師として対・悪魔薬学を教え、
夜は祓魔師の仕事に出ることが多々ある。
帰って兄さんの作った食事を食べ、部屋に戻る。
入学して1カ月ほどで、そんな平日が普通になっていた。
今日も同じような日常だった。
兄さんと一緒に夕食をとっている最中に、招集がかかった。
「戻るのは11時過ぎるから、電気消して寝てていいよ。」
着替えながらそう伝えると、そっか、と小さく呟いてそっぽを向いてしまった。
そんな兄さんの尻尾はうなだれている。
「寂しいの?」
「は!?ま、まっさか!お前居たら課題やらされるからな!お、俺も任務行けねーのが悔しいだけだ!」
「うん。僕が居なくても課題はしてね。」
「げえっ!!」
「帰ったらチェックするから、課題終わったら僕の机に置いておいてね。じゃ、行ってきます。」
にこりと笑みを浮かべたまま、扉に任務待ち合わせ先の鍵を差し込んだ。
きっと今頃、閉じた扉の向こうで、悪態ついたり、僕の物まねしたりしてるんだろう。
そして静かになって、寂しくなって、布団を抱きしめて眠るんだろう。
(かわいいな。もっと僕が居なくて寂しがってよ。)
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