む心臓
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ぼくと兄さんと神父さん。

僕の家族。


歪み始めたのは、兄さんが覚醒したから。


…それとも、もっと前から?




軋む心臓




「うぎゃ!ちーこーくーすーるぅぅ!!」

ドタドタと近づいてくる足音と声は、この建物では僕以外には兄さんしかいない。

「おはよう、兄さん」

ウコバクの作ってくれた朝食を食べながら朝の挨拶をする。

毎朝の光景だ。


毎朝こうやって学校へ行くまでの時間を過ごす。

学校ではクラスが別なので、兄さんにはたまにしか会わない。

夕方は塾で教師として対・悪魔薬学を教え、

夜は祓魔師の仕事に出ることが多々ある。

帰って兄さんの作った食事を食べ、部屋に戻る。

入学して1カ月ほどで、そんな平日が普通になっていた。



今日も同じような日常だった。

兄さんと一緒に夕食をとっている最中に、招集がかかった。

「戻るのは11時過ぎるから、電気消して寝てていいよ。」

着替えながらそう伝えると、そっか、と小さく呟いてそっぽを向いてしまった。

そんな兄さんの尻尾はうなだれている。

「寂しいの?」

「は!?ま、まっさか!お前居たら課題やらされるからな!お、俺も任務行けねーのが悔しいだけだ!」

「うん。僕が居なくても課題はしてね。」

「げえっ!!」

「帰ったらチェックするから、課題終わったら僕の机に置いておいてね。じゃ、行ってきます。」

にこりと笑みを浮かべたまま、扉に任務待ち合わせ先の鍵を差し込んだ。


きっと今頃、閉じた扉の向こうで、悪態ついたり、僕の物まねしたりしてるんだろう。

そして静かになって、寂しくなって、布団を抱きしめて眠るんだろう。

(かわいいな。もっと僕が居なくて寂しがってよ。)



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