宵闇の檻 (2/3頁)
キシ、と。
暗闇で何かが動いた音がして、目を凝らすも雪男のベッド近くは月明かりが届かず真っ暗で、一帯に視線を泳がせていると雪男が信じられない名前を呟いた。
「動かないで下さい、と…警告したはずですが?」
雪男は暗闇に銃を向けていて、今度は明らかに誰かが息を飲んだのが分かった。
誰かが――雪男の言葉が真実ならば、志摩が。
「奥村くん…」
漆黒の中から聞こえたのは、まぎれもなく志摩の声で。
「しま、…っっア!ゆき…!!」
ぬるりと自身が熱い咥内に導かれて、高い声が漏れる。
「い、っいやだ…っ!雪男、離っぁう…!!」
じゅぷじゅぷと頭を上下するように舌と唇で扱かれれば、瞼の裏側がチカチカして、すぐにでも達してしまいそうだった。
「あ…や、あっ…やめ、っも、もぅ…っ」
びくびくと内腿が痙攣し出した瞬間、口淫をぴたりと止められる。
「っゆ、き?」
「…兄さん、志摩君が見てるのにイっちゃうつもりだったの?」
「――っっ!!」
そんな、と言葉を失う。
裏筋をつつ、と指の背で撫でられて、ぞくぞくと快感が這う。
先端をぬるぬると先走りを伸ばすようにされれば、そっちに意識が行ってしまいそうになって。
「は、ぁう、…っア!」
つぷり、と後孔に指を差し込まれて、びくりと体が跳ねる。
いつも、していること――そうとは言え、今は暗闇の中に志摩が居る。
本当に――?
「あっ、ぁ…っんンぅ…っ」
さっき声を聞いたはずなのに、視覚で確認できないまま前立腺を擦られれば、あの志摩の声は雪男のいたずらなんじゃないかとさえ思ってくる。
そう、思いたい。
だって、表の顔以外を他人に見られるのを物凄く嫌う雪男が、こんなとこ、見せるはずない。
「ふぁ…あ、っあ、あ」
「兄さんって見られて感じるの?」
「ちが、ぁッ!うぁっ…ン!」
きちゅ、と狭い入り口を広げるように2本目を入れられて、自分の体が雪男の指を締めつけているのが分かる。
「ね、志摩君も兄さんに『こういうこと』、したいんだって。…ねぇ、志摩君。」
「…っ先生、はは、悪趣味すぎません?」
躊躇うような志摩の声に、一気に現実に引き戻されて咄嗟に雪男に「はなせ!」と怒鳴って腕を暴れさせたものの、その腕は空を切った。
「っィあ゛!!」
まだ2本目も慣れていなかったソコに、無理やり3本目の指が侵入してきて、入り口が引き攣れて痛みに潰れた声が出る。
「ちょお、若先生いっつもそんなやり方なん?奥村くん、俺のこと選んでくれたら大事にしたるよ?」
「はは、図に乗らないで下さい。」
「うぐ、っい、いた…ゆき、っ」
それでもばらばらに動く3本の指に、前立腺を代わる代わる押し上げられて、じわじわと快感が痛みを消し去っていく。
「っあ…ふ、っ」
今度は親指で、後孔と睾丸の間をぐりぐりと摩られて、ぞわぞわと鈍い快感が腰を疼かせた。
「――ンっ」
ずるっと指を3本とも引き抜かれ、雪男の熱いモノが押しあてられる。
「ぁ…」
来るであろう衝撃に、開いたままの口からとろとろと唾液が落ちるのを止められない。
だけど、雪男は入り口に僅かに先端をくっつけるようにしただけで、それ以上動く様子はなく、見上げると優しくほほ笑む雪男が俺を見降ろしていた。
「兄さん、僕を選んで。」