哀惜の掌 (6/6頁)
足を左右に開いて、右手の指を前から自分のナカに埋めて、少しだけ怯えたような表情で、けれども蕩けた真っ赤な顔で見上げてくる兄さんは、ひどく淫媚で美しかった。
「指、抜いちゃだめだよ。」
「ふぁ…ゅ…き?」
「奥いっぱい突いてあげるから、自分で前立腺ぐりぐりするんだよ。」
え、と固まった兄さんの両膝の裏を掴んで、肩に付くくらい折り曲げさせると、斜め上から押し込むように律動を始めた。
「あうう…っ!あ、やぁ、っあ、あぅ、あ、あ!」
律動に合わせて自分の指がいつもより深く前立腺を押し上げているのだろう、兄さんの自身からは、まるで射精をし続けているようにぼたぼたと精液が零れ落ちて、鳩尾のあたりに白濁の水たまりを作っている。
「あ、やああ――っあ、ぅあ!!」
「っはぁっ、イきっぱなしみたいに、ナカ…っずっと痙攣してて、っ…」
ずぐずぐと短い律動で奥を付き続けていると、言葉を失ったように、羞恥を忘れて兄さんは喘いだ。
「ああぁう…あ――!!や、あぁ――っ!」
射精感がこみ上げて、キスをしようと体を沈めると、より深く刺さったのか、虚ろな目をして、がくがくと一層強い痙攣が起こった。
ぎゅうぎゅうと奥へと誘うような、絞り取られる感覚に、たまらず最奥で熱を吐きだすと、ぶるりと兄さんの身体が震える。
「あ…あぁぁ…あ…」
どぷり、どぷりと数回に分けて白濁を注ぎ込んで、ずるずると自身を引き抜くと、一緒にぬぷっと兄さんの指も抜けて、シーツの上に力なく落ちた。
ゆっくりと両足を下ろすと、荒い息をしている兄さんにキスをする。
虚ろな目は、視界に僕を映しながらも、僕と認識できていないように彷徨っている。
少し顔を上げさせて、口移しで水を飲ませると、落ち着いた兄さんはうとうとし始めた。
額にも、鼻先にも、目尻にも、頬にも。
何度もキスをする。
兄さんが優しい夢を見れるよう、優しく髪を撫でた。
そして兄さんの右手を恭しく取ると、ずっとナカに埋められていた中指を、自分の口の中へ含んで丹念に舐めた。
「愛してるよ、兄さん」
まるで応えてくれるかのように、兄さんの指がゆるりと絡まった。
優しい声がふわふわと俺を包んで、柔らかい口づけが何度も落とされる。
大きな手に髪を撫でられて、どんどん意識の深くへと落ちていく。
大きくて、何度もマメが潰れて硬くなった掌。
大切な家族の手だ。
ずっと守られてきた、大きな手。
守れるように、なくさないように。
まるで、すがるように、その手に自分の手を重ねた。
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