ハローミスターマイハニー | ナノ
すがくん。

起きて、と名前を呼ばれて薄目を開ける。朝ごはんできたよと覗き込んでくる彼女の目が思っていたよりもずっと近くにあって吃驚した。その腕を掴んで引き寄せると簡単に彼女がベッドにダイブする。

「スガくん!」

寝ぼけないでー!困ったように腕の中で抗議の声をあげる彼女が可愛らしくて、思わず笑うと「あっ起きてるな!?」とまた抗議された。彼女が俺に遠慮しなくなったのはいつからだったろう。昔の彼女はいつも俺に対してどこか遠慮をしていて、こんな風には怒ってくれなかったなと思う。それを思うと腕に抱えた幸福があんまりにもいとおしくて、参る。

「今起きた」
「うそ!もう、早く起きて」
「ん、もう少し」
「朝ごはんだってば!」
「ありがとう」
「台詞と行動が噛み合ってません」

しばらく抜け出そうともがいたあとで、諦めたように彼女はそっと抵抗をやめた。もう少し、なまえも。だめ押しのようにささやく。大人しく俺に抱きしめられている彼女は呆れたようにスガくんてば、と呟いてからもぞもぞと俺に頭をすり寄せた。

「お味噌汁、冷めちゃう」
「また温めればいいんじゃない」
「…知らないよ?」

二人、まどろむように抱きしめあって目を閉じる。こんなに幸せでいいのかなって時々不安になるよ。可愛くて優しい、俺のこいびと。まだ少し幼さの残る横顔にキスを落とすと、照れたように笑ってみせた。君がいればそれだけで、それがいわゆる幸せってやつなんだろうなぁって思うよ。それじゃだめかな。わかんないけど。ねぇ、すきだよ。




せかいはうつくしい


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