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手を繋ごう。

そう言って差し出す手は、いつも、少しだけ震える手に握られる。わたしよりも大きくて、骨ばっていて、あちこちでこぼこしていて、硬い。スガくんの手はいつも少しだけ、震えている。

「緊張してる」
「…だめ?」
「ううん」
「……寒いね」
「うん」

口元をマフラーで隠して、ぼそぼそと彼は話す。わたしと二人でいるとき、スガくんはみんなでいる時のような笑顔はあまり見せない。いつもニコニコして明るく笑う普段のスガくんと、わたし用のスガくんは、少しだけ違う。どっちかが嘘とかいう訳でもなくて、どっちも本当のスガくんで、わたしはどんなスガくんだってすきだなぁ、と思う。

触れる手は冷たくて、わたしが温めてあげたくて、だけどわたしの手もスガくんと同じくらい冷たいからいつも困るんだ。それでもぎゅうっと握っていたらやがて二つの手はおんなじ温度になるに違いない。

いつだって手を繋いでいたいと思う。スガくんの大切な手。チームのボールを繋ぐてのひら。どこもかしこもマメだらけで、それを指先に感じる度にわたしは何だか泣きそうになる。つよい、てのひら。努力の証だ。

指先からどうか何かが伝わりますようにと思いを込めて、握った手に力を込めた。冷えきった二人の手はそれでもじんわり温かい。無言のままさくさくと歩いていると、しばらくして隣でスガくんが口を開いた。

「…そっちこそ」
「え?」
「緊張してる」
「……ばれちゃいますか」
「ばれちゃいますよ」

スガくんと一緒にいて緊張しないときなんかない。恥ずかしくって少しだけ繋いだ力を弱めると、それを見透かしたみたいにスガくんがわたしの手を捕まえる。

ごめんね。ごめんね。いつだって緊張してるのは、わたしもおんなじなのです。震える手はお揃い。冷たい手も、お揃い。そう考えると何だかわたしたちってお似合いのカップルかもしれないね。

「ねぇスガくん」
「なぁに」
「すき」
「…俺も」



おいしい可愛い愛してもいい?


title にやり
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