小説 | ナノ 掃除当番とは何と面倒な作業だろうか。と、ゴミ袋を捨てに出かけながら思う。そもそも毎日掃除を強制される割に学校というやつは汚い。ほこりだらけだ。まことに不思議でならない。もはや掃除などしてもしなくても変わらないんじゃないだろうか。

「お、みょうじじゃねぇか!」
「…西谷じゃないか」
「何してんだ?ゴミ捨て?」

そんな不毛なことを考えながら歩いていたらクラスメートに話し掛けられた。西谷は人懐っこく首を傾げて言う。低めの身長もあいまって、その姿は可愛らしい。どことなく小動物みたいだ。だけどわたしはその人物を許す訳にはいかない。なぜなら、

「何してんだじゃないよコラ、お前も掃除当番でしょーが」
「えっ」
「サボりやがって」
「マジか!全然知らなかった!!スマン!」
「全然知らなかったじゃないの!あんたとわたし当番同じでしょ!どうせ部活のことしか考えてないんだろー!」
「いや、それ以外のことも考えてるぜ!ちょっとは!」
「じゃあ掃除当番のことも考えてくれよ…」

嘆いていると西谷が「ん」と手の平を差し出してきた。二つあるゴミ袋の中から、燃えないゴミを手渡す。それでも西谷はもう片方の手にゴミ袋を持ち直すと、もう一度「ん、そっちも」とまた手を差し出した。

「え?ふたつとも?」
「おう、掃除サボった詫び!」
「心がけは褒めてつかわす」

だけどさすがに二つとも持たせる訳にはいかないから、と断ると西谷は不満げに口を尖らせた。

「女子にそんなもん持たせる訳にはいかねぇだろ!」
「そう思うなら最初から掃除当番サボらないでもらえるかな」
「忘れちまったモンは仕方ねぇ!でも悪かった!だからほら、それ、貸せ!」
「…やだ」
「なんで!」
「だって二つとも西谷が持っていっちゃったらわたしが西谷と一緒に行く理由がなくなっちゃうでしょ」

そう言ったら西谷はきょとんとした顔でわたしを見つめて、それから、「何だそんなことか」と言う。何だとは失礼だと思う。

少しだけむっとしているわたしのことは気にせずに、西谷はわたしの右手から無理矢理燃えるゴミを奪って、さっきの燃えないゴミとまとめて二つの袋を右手でまとめて持った。二つとも一つの手で持てちゃうなんて、西谷は意外と手が大きいんだなと思った。わたしにはそれができない。ぼーっとその一連の動作を見つめていたら、西谷が空いた左手をわたしの方に差し出してきた。

「ん」
「え?」

本日三度目のその動作。これ以上何を渡せというのか。意味がわからなくて首を傾げてみせると、西谷は焦れたようにわたしを急かす。

「だから、手だよ!手、貸せ!」
「手?え?」

意味がわからないなりにわたしも右手を差し出して、その左手にのせた。そしたら西谷が力強くその手を握って、わたしはびっくりしてしまって、呆然とするばかりだ。

西谷はわたしの手を握ったまま引っ張って、ゴミ捨て場に向かおうとする。大人しくついていってはみるけれど、やっぱり不思議だ。すると、不意に前を行く西谷が振り返った。

「これでいいんだろ」
「は?」
「お前も一緒に来る理由、できただろ」

西谷。
君は馬鹿かもしれないなぁと、今さらのように思う。でもそれに反論もできやしないわたしも存外馬鹿だから、人のことなんて言えないんだ。ああ、あっついなぁ。


青春について30字以内で定義せよ

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