おお振り | ナノ
「…ん?」

暖かな日差しの中目を覚ました。今日はゆっくり寝たなーなんて考えながら目を開ける。
そして、見開いた。

「かっ、和さん」

横でスヤスヤと眠る和さん。そんな彼に驚いて自らの状況を確認する。

「動け、ない」

腰には和さんの腕が巻きついていた。ここで重要なのが服を着ているかどうかだ。大丈夫、着ている。別にやましいことをした記憶も事実も無い。

「和さーん」

小声で眠る彼を呼ぶ。こんな近くで和さんを見る事もないのでまじまじと様子を窺う。

「なんか、色っぽい」

ふと、そう感じた。安心しきって寝ている彼から聞こえる寝息という名の吐息に不意に眉間に寄る皺。

「和さん、起きないとキスしちゃいますよ」

ぐっ、と近づく。和さんの体温を感じ、あったかいともう一度目を閉じる。いや、本来の目的がある。目を開ける。和さんはまだ眠っているようだ。

「しちゃいますからねー」

一度してみたかったのだ。別に男を襲いたいだとか満たされていないわけではない。しかし、このよくある体験をしてみたかった。
更に近づき、和さんの形のいい唇に触れるだけのキスをする。

「え、和さっ!」

触れるだけでは済まなかった。私の腰にある手とは逆の手が私の頭を固定し、深いキスが降ってきた。

「おっ起きてたんですか!」
「ああ」

ちなみに、最初からな、と和さんは悪戯っぽく笑う。嫌な予感が背筋をはしる。あの恥ずかしい独り言が全て聞かれていた。羞恥で死にたくなる。

「おはよう、黎」

おでこにキスされ、一気に体温が上がった。



目覚めに甘いキス
(で、この状況はなんでしょう?)
(お前が可愛い事するから理性が、な?)
(な?じゃないですって!)
(ちょ、和さん!和さっ、!)

10/12/11

prev/next
back




- ナノ -