「榛名と何話してたんだよ」 俺からの第一声はそれだった。彼女はその問いに困ったように笑ったが俺には昨日見た彼女と榛名が仲睦まじく話している姿が忘れられなかった。 「私には隆也だけだよ」 彼女は不安そうな目でそう言った。じゃあ、何故今更学校も違う榛名と会う必要がある。俺は内心嘘だ、と呟いた。 「……なんで榛名なんだよ」 なんでよりにもよって榛名なんだ。なんで俺が大嫌いでたまらない相手なんだよ。込み上げてくる嫉妬というどろどろとした感情を抑えきれない。 ここが外だというのにも関わらず俺は彼女の腕を引いてその身体を抱き寄せた。そして、彼女の抵抗も小さな悲鳴も気にせず唇を奪う。 「っ!……っ、あ、いやぁ、!」 唇に鋭い痛みと口内に鉄の味が広がる。 「、そんなに俺が嫌で榛名が好きなのかよ」 「ちが、うっ、」 「榛名とキスは出来て俺とは出来ないのかよ」 昨日の光景がフラッシュバックする。嫉妬嫉妬嫉妬嫉妬。俺だけの物なのにその瞳に別の男が映るのが許せない。榛名とキスしたその唇が許せない。怯える彼女を再び抱き締める。耳朶を口に含んで舐めあげた。 「……逃がしては、やらねえよ」 彼女の手を引き帰路についた。どこへ行くかはもう決まっている。予定が少しだけ早まっただけだ。愛しているからと言い聞かせ歩を進めた。 「隆也、どこ行くの?」 「二人だけの場所」 「……いいよ。連れてって」 後ろで手を引かれるがままの彼女が笑っているのを俺は気付くことはない。 嘘つきな世界と心中 榛名さんとキスしたのも、浮気したのも全部嘘。だって隆也ってば千代ちゃんと浮気しているじゃない。千代ちゃんの隆也を見る顔は乙女だ。私だけの隆也なのに。そう思うだけで嫉妬が沸々と湧きあがる。愛してるから、私だけのものだから。きっと隆也もそう思ってる。一緒に死んでしまうならその愛は永遠で私達も永遠になる。歪んだ愛だけど私は幸せよ。手を繋いで歩みだした。 |