other | ナノ




外場村、兼正の屋敷に私は居る。最近村の人がどんどん死んでいく。お年寄りが多いから寿命かなと思ってた。だけど、違った。原因は村に伝わる起き上がり。この村では火葬はしない。そのため死人が起き上がるとされている。それは屍鬼と呼ばれる。屍鬼は日光に弱く、昼間は眠ってしまう。人の血を吸わなければ生きてはいけない。しかし、その反対に人狼は違った。稀に生まれる特異体質。日光も受け入れ、人と同じ食事で生きることができる。

「お母さんもお父さんもお兄ちゃんもお婆ちゃんもお爺ちゃんも」

皆起き上がった。遺伝するって本当だね、と私は私を後ろから抱き締める辰巳さんに呟いた。砂子が言ったのだ。起き上がりは遺伝する。その中から人狼が生まれる事がある。私はそのせいか人狼となった。

「君は純血さ」

ただし、屍鬼としての。彼が試した。私の家族を一人ずつ襲った。私はそんなことを知らずに兼正の使用人としての辰巳さんに恋をした。気付いた時には遅かった。辰巳さんは私が好きになるよりもずっと好きだったと言ってその歯を突き立てた。辰巳さんの読み通り私は死ななかった。死なずに死した。絶望や嫌悪感は全く無かったんだ。言葉通り、永遠に一緒となった。

「私が人狼で辰巳さんも人狼。その子供ってやっぱり人狼?」

最近そんな疑問が過る。人狼の子は人狼なのか。問題は子が成せるのかだ。人狼は死んでいないし生殖器がまだ使えるのか分からない。

「十中八九そうだろうね。人狼ではなくとも起き上がることは間違いない」

そうして、彼は優しく笑って私を押し倒した。

「でも私たちの子に歯を突き立てられる?」




血が混じりその血は純血となる




子供できるかな、僕は君が居ればいい
家族全員人狼だったら幸せになれるのかな


11/05/21 屍鬼

prev/next
back



- ナノ -