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あれ?セルって確か大量殺人犯じゃなかった?最近生前の知識で思い出した。

「ん?どうした?黎」

横に居るのは誰だっけ?そう呟くと私はセルだな、なんて返ってきた。うーん。横、というよりも私を無理やり膝の上に乗せている彼はセルだ。正真正銘大量殺人犯。私が何故彼と一緒に居るかというのは話せば長くなる。親より先に死んでしまった私は容赦なく地獄へ送られた。他よりは軽い刑罰は受けている時にセルに出会った。良く言えば出会った。または遭遇してしまった。

「あ、の。セル、さん?」
「なんだ?」
「どうして私と一緒に居るんでしたっけ?」

自分でも変な質問だとは思った。そんな質問に彼は愉快そうに笑った。世界を恐怖のどん底に陥れた人には見えない。話とは全く違う。レディファーストは当たり前で落ち着いた物腰で冷静な口調。いつでも余裕があるといった感じだ。

「どうして、か」

ふむ、と彼は顎に手を当て考え始めた。しばらくしてああ、と言ったのでその顔をまじまじと見つめる。

「私が黎に好意を持っているからだろう」

真顔で言いのけた言葉にぽかんとする。ん?私に?

「からかっていると怒りますよ」

そう告げると彼はむっとした表情をみせた。え、何この展開。

「私の言葉が冗談に聞こえる、と?」

やばい。怒った。どうしよう。殺されるかもしれない。ああ、お母さんお父さんごめんなさい。私はまた死んでしまうようです。なんてネガティブ思考を突き進んでいると手を取られた。

「それは心外だな」

あ、れ。怒ってない?目の前には優しく微笑むセルさんが居て。疑問が浮かぶ。握られた手が解けない事から怒ってはいるのかと思う。でも、何?

「では、私の愛がどれ程か教え込んでやろう」

ぐっと身体が寄せられ首筋に息がかかる。なにを教え込まれるんだ。不安がよぎったが私は笑った。そんな私を不思議がったので私は一方的に握られた手を握り返した。

「セルさ、ん」
「ん?」
「分かりやすく、教えて、くださいね」

ふっと笑ったセルさんと顔が真っ赤な私。



握り返したのは愛だった



(大量殺人犯を愛してしまった私をお許しください)
(人外を愛してしまった私は地獄へと堕ちるのでしょうか)
(その時は私が一緒だ、と彼が笑った)


11/4/30 DB

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