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仕事中のエイジの服の裾をくいっと引けば、エイジの口から絶えることなく発せられていた声がぴたりと止んで、ぐるりと振り返った。「どうしました?」と優しい声が私を呼ぶ。その一連の動作が嬉しくてエイジに抱きつくとエイジはよしよしと私の頭を撫でた。彼の大好きな漫画を描くという仕事。睡眠も削る程大切な事を私の我が儘で邪魔しているにも関わらず、エイジは笑っている。

「エイジ、抱きしめて?」
「黎から甘えてくるなんて珍しいですね」

エイジは少し驚いた顔をした後、私をそっと抱きしめる。ぎゅっとエイジの体温が伝わってきて顔が綻んだ。

「大好き、」

えへへと抱きつく腕に力を込めればエイジがびくりと肩を揺らした。エイジを補給できたし私もお仕事頑張ろうと離れようとすればエイジの腕がそれを許さなかった。じゃあもう少しだけ、とエイジの胸に顔をうずめる。落ち着くなんて眠気に襲われていれば、かたんと音がした。音の方へ目を向けるとエイジの私を抱きとめていない右手が原稿を片付けている。

「漫画は?」
「随分書き留めてありますし、今日はやめましょう」
「……いいの?」
「今日は一日、黎と一緒に居る事にします」

エイジはそう笑って私の額に唇を落とした。



甘えたな君の為の休日



「漫画はいつでも描けますケド、黎がここまで甘えるなんて珍しいですから。それに、」
「う、ん?」
「僕も我慢の限界です」


2012/03/29 バクマン。



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