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「黎ちゃん、黎ちゃん」
「?どうしました?美奈さん」
「今日はおっぱいの日なのよ!」

げふうっと飲みかけだったお茶を噴いた。涙目でむせていると美奈さんはけらけらと笑った。おっぱいの日?何それ。噴いたという事実はなかったことにしてさも冷静に振る舞う。

「それって、どんな日なんですか?」
「だから、言葉通りおっぱいの日」

答えになってない気がする。くだらない日だなと仕事を再開する。美奈さんが後ろで何か言っているが構っていられない。カルテを片手に休憩室を後にする。今日も診察が入っているし仕事をしなければ。診察室に入れば、すでに宮田先生が椅子に腰かけていた。

「今日は遅かったですね」
「すいません。美奈さんと少しお話を」

今日の患者さんは、とカルテを宮田先生に渡し、私は診察の準備に取りかかる。

「どんな話をしたんですか?」

視線はカルテに向いている宮田先生が投げかけた。

「ええっと、今日は何の日か、ってですね」
「へえ?それで何の日ですか?」
「おっぱいの日、らしいです」

カチャカチャと注射器を用意してトレイの上で消毒をする。すると、宮田先生が動いた音がした。とくに気にせず仕事を続けていると、背後に気配がして振り返った。

「宮田先生?」

近い。近すぎる。怒っているのかと不安になる。いつまで消毒してるだとか来るのが遅かった原因がお喋りだということに怒っているのだろうか。再び、宮田先生、と声をかけようとした時、抱き寄せられた。

「え、!?」

するすると宮田先生の右手は私の腰を撫でていて危機感が走る。

「おっぱいの日、ですか」

腰を撫でていた手はあろうことか胸元まで上がってきて胸に添えられた。なんでこんなことに!と頭がパニックになっていると、宮田先生と不意に目が合った。そして耳元で意地悪く呟くのだ。大きくなったな、なんて。

「宮田先生!!」
「貴女が誘ってきたんでしょう?」
「そんなばかなっ!」

宮田先生は何故かとても楽しそうで私の胸を撫でた。うっ、手つきがいやらしい。

「せんせいっ、!」
「気分はどうですか?」
「んっ、あ、っ」

ここがどこだとか分からない程頭が麻痺する。ナース服の上からなのに、宮田先生の手が直接響くような。

「今日はいい日ですね」



サディスティックな笑みで



診察室のベッドに押し倒された。患者さん、と言いかければふと今日は外来が休みの事を思い出した。これも全ては宮田先生の罠。


11/08/01 警報
宮田先生はドSだと信じてる。


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