「なんつー面白そうな事、俺抜きでやってんだよ」
「うっさい黙って食べて」
「秋刀魚以外のおかず手抜きじゃん。異議申立て」
「仕方ないじゃん。梟谷のマネやってたんだから。文句あるなら明日の秋刀魚入りのお弁当無しね」
「結、クロのお弁当無しでいいよ」
「いじめかよ」

3人で食卓を囲む。秋刀魚焼くので精いっぱいで他のおかずが全然作れなかった。仕方ないじゃん、帰ってきたのちょっと前なんだから。流石にお湯入れるだけど味噌汁はどうかなとは思ったけども。作ってもらえるだけありがたいと思って欲しい。研磨なんか文句ひとつ言わないし!

「ちゃっかりアップルパイ作ってるあたり、俺のモヤモヤ感が半端ないんだけど」
「優先順位」
「俺のが低いってか」
「寧ろ最下位」
「お前俺の事嫌いなの?」
「…研磨、おいしい?」
「おいしい」
「無視止めろ。メシがアップルパイとか認めねーぞ」
「クロうるさい」
「本当にうるさい」
「お前ら…」

文句あるんならもうその秋刀魚下げるよ?というとクロは本当に黙った。黙々と食べていると、机に置いたスマホが鳴る。見るとメールだった。あ、国見君だ。

「お、もしや噂の国見君か?」
「なに噂って。なんで知ってるの」
「トビオ君から聞いた」
「飛雄め…」

早く読めよ、とにやにやするクロを無視する。研磨、眠いならお風呂入ってもう寝ちゃいなさい。アップルパイ片手に船を漕ぐ研磨に声を掛け、メールを開いた。

【こんばんは、家に着きました。電話しても良いですか?】

電話…この状況で電話は嫌だなぁ。ごめんね、と返そうとしたらクロにスマホを奪われた。ちょっと、プライバシーの侵害!奪い返そうとするが、クソ背の高いクロから奪い返せるわけもない。「えーっと、国見君の電話はー…っとこれか」そしてスマホを耳へ。おい待て、なんでクロが電話かけるの。

「あ、もしもし噂の国見君?俺、結のお友達の黒尾、以後ヨロシクー」
「おりゃあ!」
「ご…っ!おま、脛は反則だろ!」
「え?もっと急所狙った方が良かった?」
「恐ろしいわ!お前!!」
「取りあえずスマホ返せ」
「クロ、いい加減にしなよ。さっさと帰れば?」
「お前ら俺の扱いほんとひどいな」

はいはい、帰りますよー。にやにやしながらクロは私にスマホを手渡した。帰る気無いでしょ、絶対。画面には国見君の名前と通話中という文字。マジで電話してるし。帰らなくていいから、とりあえずリビングから出るな、とクロに釘をさし、私は自室へと閉じこもった。

「も、もしもし…」
『あ、結先輩。吃驚しました』
「馬鹿がごめんね突然」
『いえ…彼氏ですか?』
「は?」
『あ、いやなんでもないです』

自分でも驚くほど低い声が出た。電話の向こうで多分びくついたであろう国見君の姿が想像できた。

「弟の幼馴染だよ」
『弟?』
「あ、うん。お母さん再婚して、弟ができたの。新しいお父さんの方の子供ね」
『どうせ可愛がりまくりなんでしょ、先輩の事だから』
「大正解だよ、これが可愛くて可愛くて」
『容易に想像がつきます』
「あははは!」
『…すこし、ずるいなって思います』
「うん?国見君は私の弟になりたいのかな?」
『それは嫌です」

迷わずに嫌って言われた。悲しい。

『弟は、いつになったって弟じゃないですか』

弟じゃ、嫌です。という国見君に悶えた。ヤバイ、ツボる。可愛い可愛い本当に可愛い。今すぐ抱きしめたい。ああ、もう。ずるいのはどっちだばかやろう。

<< | >>
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -