「とーびおっ!」

自分でも思うくらい明るい声が響き、次の瞬間「うわっ」という飛雄の声。ふふん、くるしゅーないくるしゅーないぞ!と意味のわからん言葉を吐き後ろから飛雄に抱きつき頭を撫でまわす。隣に居た金田一君と国見君は「またか…」と呆れた表情をしていた。むぅ、おねーさんはその反応つらいです。

「はなれろ!」
「えー、可愛い可愛い飛雄離したくない」
「あー!国見も可愛いって言ってただろ!国見に抱きつけよ!」
「え」
「え、いいの?」
「やめてください」
「にゃははは、駄目だってさ」

諦めなさい諦めなさい!むぎゅーっと、飛雄を抱きしめる。ちらり、視線を外すと国見君と目が合った。「やっぱり国見君にも抱きつこうか?」「結構です」残念だね。実に残念だ。

「あー!結ちゃーん!」
「さて、私は帰ろうかな」

及川の声がしたので私は慌てて飛雄から離れる。「じゃ、かきくトリオまた明日ね」と私は駈け出した。「ちょっと!結ちゃん逃げないでよ!」という及川の叫び声を無視する。明日、卒業式かぁ。長かった中学3年間が幕を下ろすよ。夕暮れを追いながら、ほろり涙がこぼれた。




▽△▽


北川第一に立花結さんという、それは不思議な先輩が居る。毎回毎回飛雄に会うと後ろから抱きついたり、及川さんを存在していないものと扱ったり。俺の事を可愛い可愛いと頭撫でるし、意味がわからない人だ。

「あ、先輩」

卒業式が終わり、生徒は放課になった。3年の先輩たちはあちこちで同級生と話し込んだり、写真を撮ったり。立花先輩も例外ではないだろうと思っていたので、1人で居る先輩を見つけてすこし吃驚した。

「あ、うん。国見君の言いたい事は良くわかるよ。結論から言うと及川から逃げてきたんだ」

あの人本当に立花先輩大好きだな。ちくり、と胸の奥が痛んだが無視をした。

「第一の生徒は殆ど青城みたいですね」
「及川も岩泉も青城だよ」
「俺も、多分2年後は青城ですね」
「代り映えない絵面だねー。それはそれで楽しそうだけど」
「あの、」
「うん?」
「立花先輩、卒業おめでとうございます」
「…おお、国見ちゃんにそう言われるとは思ってなかったよ」

ちゃん付けは止めてください、というとあー及川の呼び方移っちゃったーと立花先輩は笑った。ぎゅっと、拳を握り締める。

「あの、」
「今度は何かな?」
「抱きしめてください」

…きょとんとした顔の立花先輩。ああ、言ってしまった。顔が赤くなるのがわかった。視線を地面に向けるとふわり、立花先輩の匂いがした。

「国見君可愛い」
「可愛いって言わないでください」

抱きしめられた身体。俺は腕を立花先輩の背中にまわす。じわり、涙が溢れ出る。この人はもう、明日からここに居ないのか。

「泣かないでよー国見君」
「…泣いて、ない、です」
「どうして嘘を吐く」

立花先輩の指が、俺の涙を拭う。更に目尻が熱くなる。

「せんぱい、また、会いましょう」

それまで、どうか元気で。そういうと立花先輩は綺麗に笑った。

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