「俺さ、八雲が好きで好きで仕方ないんだけどさ」
「本人を目の前に言わないでよ恥ずかしい」
「ぶっちゃけ、俺と八雲の関係ってわからないよね」

友達以上ではあると自覚しているけど、俺は八雲に一度も「好き」とは言われてない。俺達は付き合ってるのか、それすら曖昧だ。別に構わないとも思っている。どうあっても、八雲の隣は居心地がいい。

「徹は私にどうされたい?」
「キスされたい」
「ぶっ飛ばすよ?そうじゃなくて」
「俺達って付き合ってるの?」
「…付き合ってる感覚ではあるよね」
「自覚は微妙だけどね」

公言は要らない。自慢…したいような気もするけど別にいい。俺は八雲と居れればそれでいい。そういうと八雲は目を丸くした。「徹って、彼女とかみんなに自慢しそうなのに」と。防衛線張るにはそれがいいけどね。八雲ってほら、友達いないから「うるさいよ」浮気される心配もないし。あ、飛雄は存在抹消してるから。

「浮気っていうアレはあるんだ」
「流石に及川さん以外の男と一緒に居るの見ちゃったら怒るかも」
「飛雄はセーフね」
「完全にアウトだよ!飛雄はホント許さない」

飛雄はバレーでも、人間関係でも敵だ。あの澄まし顔、一度ぶん殴りたい。

「ねー、とーる」
「なにー」
「私、飛雄好きだよー」
「飛雄マジむかつく。…あれ、もしかして遠まわしにフラれてる?」
「ふふふー」
「え、笑ってないでなんか答えて!」
「弟みたいでだいすき」
「だいすき、って言われてる時点で俺は飛雄を許さない」

徹の反応ホント面白い、と八雲は笑う。素を出すようになってから口は多少悪くなったけど前よりもずっと楽しそうだった。そんな冗談言われても気が気じゃないんだけどな。

「ねーねー、とおるー」
「今度はなーにー?」
「すきだよー」
「…うん?」
「なんでもない」
「いやいやいやいや!待って!待って!聞き間違いじゃないよね?俺の聞き間違いじゃないよね?」

いままで、一度も八雲から言われたことがなかった言葉。普通に聞き逃しそうになった。突然のことで頭が付いて行かない。たった一言の言葉なのに。

「八雲!もう一回言って!」
「え、やだよ」
「もう一回!もう一回!!」
「はははは」
「もういっかい!!!」

八雲は笑うだけだった。ああ、悔しい。録音したいくらいだ本当に。

「八雲さん」
「はーい」
「すきです、だいすきです」
「うん」
「ほんとにだいすき。あいしてる」
「中学生のくせに愛が重い」
「だって!」
「はいはい、私もすきですよー」

やっぱり、聞き間違いじゃないみたいだ。俺は、八雲を抱きしめる。八雲の頬が若干赤くなっているのはきっと俺の見間違いじゃない。


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