「岩ちゃん岩ちゃん、俺さ好きな子が居るんだけどさ」

最近良い感じに仲良くなってる気がするんだよねー！そういうと岩ちゃんはどうでもいい、と言わんばかりの顔をした。酷い、ちょっとは興味持ってよ。

「お前の取巻きん中に良い子でも居たのか」
「あはは、まっさかー！岩ちゃんも1年の時一緒のクラスになったことがある篠宮八雲ちゃんだよ」
「……は…？」

岩ちゃんがあっけにとられる。なに、そんなに驚くことかな？と言えば「お前っぽくない」と言われた。なに、俺っぽいって。「お前にはチャラチャラした女子がお似合いだ」と蔑みの目で見られた。え、なんで。

「篠宮大人しくて結構良いやつだから、お前見たいなやつと一緒に居るとか可哀想だろ」
「酷い！ていうかなんで八雲のこと知ってんの！？」
「お前1年の時同じクラスだって言ったろ」
「なんかそういうのじゃなくってさ！結構良いやつーとかなんでそんな事知ってるの！良い子だけども！」
「うるせぇクソ川」

なぁ、お前知ってるか？という言葉に首をかしげる。何を？そういうと溜息を吐いた。

「篠宮が不思議ちゃん、なんて呼ばれてる理由」

そうそう、なんで八雲が「不思議ちゃん」なんて呼ばれてるのか全く持って意味がわからなかった。どこが不思議ちゃんなのだろうか。

「あんときは互いに興味を持ってなかったんだろうけど、お前1年の時篠宮と隣の席になったんだよ。クラスの女子はお前の隣羨ましい、とか騒ぎたててたんだけど篠宮は全く興味皆無。それどころか迷惑そうな顔をしたから、女子たちの癇に障ったみたいで嫌味ったらしく「不思議ちゃん」ってあだ名が付いたらしい。友達という友達も居なかったみたいだしな」
「なにそれ超くだらない。それより1年時俺八雲と隣の席になったことあったの！？そっちの情報のが大切なんだけど！全然覚えてない…」
「まぁ、浮かれてたからな。初めの1ヶ月くらいだけだったし」

1年の自分をぶん殴りに行きたい。うあああああと叫び声をあげていると呆れた顔をされた。

「お前マジで篠宮の事好きなのか。本当に意外なんだけど」
「好きだよ、もうほんと八雲大好き。八雲に嫌われたら死ぬレベル。」
「きめぇ」
「なーんかさ、俺の性格と見た目？上勘違いされても仕方ないみたいなんだけどさ――俺、五月蠅い女子嫌いなんだよね」

岩ちゃんが息をのむ。ヤバイ、想像以上に低い声が出てしまった。取り繕うと口を開けようとした時「へぇ、及川さんって取巻きの女子嫌いだったんスね」と後ろから声が聞こえた。声を聞いただけでイラッとする。

「盗み聞きかなぁ？飛雄ちゃん。いつから聞いてた？」
「割と最初から」

ですけど？と平然と言うこのクソ可愛くな後輩をぶん殴りたい。聞いてんじゃねーよ。

「じゃあ八雲が及川さんの取巻きに嫌がらせ受けてるって知ってます？」
「は」

あー…まぁあり得ない話じゃないよな、と岩ちゃんが言う。え、なにそれ。八雲が虐められてるってこと？俺のせいで？なんで飛雄はそのことを知ってる？

「おい、及川落ち着け」
「ははは、大丈夫大丈夫。で、なに？飛雄は俺の代わりに八雲を守ってくれちゃったわけ？」
「え？いいや何にもやってないッスよ」
「は？」

知ってて何もしなかったのか。俺が言えた義理じゃないがその意をこめて飛雄を睨む。すると飛雄は不思議そうに首をかしげる。「あれ、知らないんッスか」と一言。

「今の状況割とノリノリで楽しんでますし、それにアイツ及川さん並みかそれ以上に性格悪いんで放っておいて大丈夫っスよ」

俺が性格悪いとか何言ってんだこのクソガキ。というか、え？


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