私は彼の言葉に応えてはいないのだが、果たしてこれはどういう関係なのか。あんなことが合って付き合っていないというのもおかしな話なのだが。
すっかり調子を戻した彼は生き生きとバレーをしていた。なんで私は体育館で彼の練習を見ているのだろうか。飛雄と目が合ったので小さく手を振った。ら、すごい剣幕で徹は飛雄を睨んでいた。

「飛雄ちゃんあんまり八雲に近づかないでクダサイ!」
「飛雄に当たらないでください」
「なんで飛雄ちゃんを庇うの!」
「かわいい幼馴染だもの」
「ずるい、俺も八雲と幼馴染になりたかった」

怒りに震えながらボール掴む徹。その姿をじっと見て飛雄は爆弾を投下する。

「なんだ、やっぱり付き合ってるんじゃないか」
「やっぱりって何!?やっぱりって何!?及川さんと八雲が付き合ってる噂流れちゃってるの!?昨日の今日で!?」

テンションが無駄に高い。いや、楽しそうでなによりです。若干こっちは疲れているんだけど。徹は私と付き合ってる認識、おーけー把握。もうどうにでもなってしまえ。騒ぐ徹を無視して飛雄と喋る。

「あの八雲が男友達っていうから彼氏なのかって聞いたら違うって答えるし」
「まだあの時は普通に友達だったよ。ていうかあのって言うな」
「あの友達が少ない八雲が」
「飛雄、喧嘩売ってるのかな?」
「藤乃って友達いるのか?」
「うるさいよ」
「…いないのか」
「ちなみにさ、さっきの言葉そのまま飛雄に言ったらどうなる?」
「……」

私のは意図的だけど、飛雄に友達がいないのは如何なものだろうか。幼馴染として心配です。

「及川さん放置するのやめてよ!というかなんで八雲も飛雄も名前呼びあってるの!八雲は諦めるとして飛雄ちゃんは八雲呼び捨てにするの止めて!」
「そうだね、同意だよ。先輩を付けなさな。後輩の飛雄くん」
「藤乃」
「こんのクソガキィ…」

マジギレするのやめなよ…大人げない。これが先輩か…と呟く飛雄。止めて、3年生全員を徹基準にするの止めて。

「おいお前ら練習しろ!」















「ねぇ篠宮さん。ちょっといい?」
「別に、いいですよ」

面倒だなぁ…練習を再開した徹たちを背に、私は女子生徒について行った。本当に面倒だ。どうしようか…。この時、飛雄が私の背中をじっと見ていたなんて、そんなの全然気付かなかったのだ。



「ね、いい加減及川君の近くにいるの止めてくれないかなぁ?」
「そーそー。及川君も八雲さんみたいな不思議ちゃんに付きまとわれちゃってさぁ…可哀想だよ」
「なんか呪われそうだしね」

くすくすと嗤う女子生徒達。どこのいじめ漫画ネタだ。絵に描いたような場面に笑いをこらえる。笑いをこらえて震えているのに、怯えていると思ったらしい女子生徒達は更に調子に乗り、あれやこれやと言葉を並びたてる。暫くして、満足したのか「また調子に乗ったらどうなるか分かるよね?」と言って去っていった。私一人で誰もいない校舎裏、ちいさな笑い声が木霊する。もう家帰って大爆笑したい。

「くっだらねー…」
「うっわ!吃驚した。え、飛雄いつから居たの?」
「割と最初から」
「え、結構前じゃない?練習大丈夫?」
「大丈夫じゃない」
「いきなよ練習」
「震えながら笑いこらえて悪口聞いてる八雲みて笑いそうになった」
「くっ…笑いこらえるの必死だったんだから!なんだろうねー、あのくだらない妄想劇は。「及川君が迷惑してるのよ!」あ、はい、そうですかみたいな」

本当に素だと性格悪いよな、という飛雄の言葉。失礼な。あっちの方がよっぽど性格悪いじゃないか。あ、いや餓鬼臭くて可愛らしい性格ではありますが。

「あんまり無理すんなよ」
「ちくちく針で刺されてる痛みだから大丈夫大丈夫」
「地味に痛ぇ」
「あんまりにも耐えられないようだったらマジギレするから大丈夫」
「それ大丈夫じゃねーだろ」



<< | >>
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -