「八雲怪我ない？」
「明らかに無いでしょう。むしろあっちの女子に怪我が無いか心配」
「ちょっと飛雄黙って」

実はこの2人仲が良いんじゃないかと思う。もーなんで飛雄ちゃんも着いてくるかな―。いや、なんか面白そうだったんで。ふっざけんなクソガキ。そんな会話が繰り広げられている。

「よく気付いたね」
「岩ちゃんが「篠宮が女子連中に引きづられていくの見たんだけど」って言ってきてね、慌てて八雲探したよ。何故か飛雄も一緒に」
「八雲大丈夫か？相手に怪我させてないか？」
「そっちの心配どうでもよくない？」
「2人とも実は仲いいでしょ」
「冗談止めて。飛雄ちゃんと仲がいいとか死にたくなる」

あーもうー。と抱きついてくる徹の頭を撫でる。バカップルかよ…と飛雄の視線。やっぱり恥ずかしいなぁこれ。

「助けに来てくれてありがとう」
「…うん」

怪我がなくてよかった、と抱き締める力が強くなる。ちょっとだけ背中が痛いのは秘密だ、大したことじゃないし。向こうにも同じことしてるし。「じゃ、俺部活行きます」と飛雄は去っていった。本当に見に来ただけか飛雄。私たち以外誰も居なくなった校舎裏。

「ねーねー八雲さん」
「なんですか徹さん」
「さっきの女子に俺の事好きって言ってたよね」
「……言ったっけ？」
「言ってた！嬉しかったんだけど。だいすき」
「すらっとだいすきっていうな」
「照れてる八雲かわいい」
「うるさいうるさい。早く徹も部活いきなよ」
「え、引退してるよ」
「え、そうなの？」
「校外ではやってるけど学校の方はね。またウシワカに負けて沈んでたんだから…八雲が応援してくれてたら勝てたかも…というのは冗談で。ほんと、悔しいよねー…。高校では絶対ぶっ潰す」

高校でもバレーは続けるんだ。純粋に凄いなぁと思う。「ねぇ、今更だけど八雲どこの高校受けるの？」と、あまり聞かれたくない事を聞かれてしまった。

「えーと…どこだったっけ。殴り書きしたから…うーん…カラス…烏野高校？だったかな」
「八雲さん一生のお願いです。青葉城西高校受けてください一生のお願いです俺八雲と高校生活送りたい！」
「徹合格できるの？」
「スポーツ推薦で決まる」

なんか思ってた以上に徹ってすごいんだな、と自覚した。

「で、お答えは」
「一生のお願いここで使っていいの？」
「一生のお願いが1回だって誰も言ってないよ」

なんという子供。しかし本当に真剣な眼差しに折れた私は「後で進路希望出しなおしてくるよ…」と言った私に満面の笑みを浮かべる徹。私が落ちる可能性は考えてないのだろうか。落ちる気は更々ないけども。ああ、徹に流されていく。


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