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きらきらお星さまが頭に直撃しました。




というのは冗談としておいて、仕事帰りに同僚と飲みに行った。まぁまぁ酒が強いメンバー(※一部を除く)で居酒屋へ。
そして全員いい感じに出来上がり、さて2軒目だと歩き出した。
私の前をでろんでろんに酔っていた同僚(男)が前を歩いていたのだが、階段を上っている途中、あろうことか落っこちてきたのだ。どうやら階段踏み外したようだ。

「おまッ!」

と誰かが声を上げ手を伸ばす、がその男大爆笑である。なに笑ってんだこの野郎!そいつの後ろに居た私は顔面に衝撃が走る。男の背中ではなく、肘が顔面を直撃した。そりゃあもう、勢い良く。痛いとかそういう次元じゃない。めっちゃ痛い。目の前で星が飛んだ。
勿論、それだけで終わるわけもなく私は顔押さえながら身体を宙に浮かせる。浮き続けられればどんなに良いことか。残念ながらここは星の瞬きが煌めく銀河でもなければ、どっかの科学館のような宇宙の無重力を体験できるという場所でもない。ただの街中、階段上。厳密にいうと階段落下中。とても笑えない。いや、いっそ笑うべきなのか。そうなのか。

「しきみ!」

仲の良い女友達が叫ぶ。痛みに何とか耐え、薄らと目を開く。思ったより遠くにいる女友達。ガタイの良い同僚に抱えられた私の顔に肘入れた阿呆。よく見たら同僚じゃなくて後輩じゃねーかくそ!
みんな目を見開いて私を見る。私は手を伸ばす。まぁ、届くはずもなくそのまま落ちて堕ちて落下。目の前いっぱいに広がる星空がとても綺麗だった。なんだか、手が届きそうで。本当に、宙を浮いているようで。まるで夜空を泳いでいるような気分だった。

目を瞑る。
息を吸う。
目を開ける。
口を開く。

「死んだらテメー呪うからな!」

捨て台詞は実にかっこ悪かった。


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「ふんがー!」

目が覚めて第一声。ふんがー!ちなみにドイツ語で空腹という意味らしい。意味わかっても意味わからん。なんか咄嗟に出ちゃう言葉、以上。
このところ毎日私は【あの時】の夢を見る。悪夢だ、まさに悪夢。何が悪夢ってそりゃあ…

「かっこ良くも無い男に肘打ちされて、身体密着させられた挙句突き落とされて死んだんだよ!?」

まさに悪夢。しかし神様、この程度では赦してはくれなかったらしい。


私はその日死んだのだが、結果的に生きていた。ただし五体満足…とはいかなかったらしい。なんだか見慣れた部屋とは違う、ちょっとおしゃれな部屋。可愛らしいネグリジェ(誰かに頼まれたって絶対に着ない)。装飾が施された鏡に映る自分らしき姿と目を合わせる。

とても、現実逃避がしたいです。

てへっ(はーとっ!)とウィンクしてみた。吐き気を催した。自分のキャラを見誤ってはいけない。深呼吸をする。目を瞑る。深呼吸…目を開く。もう一度鏡の向こうに居る私の姿を瞳に移す。何度見ても結果は一緒だった。つまり悪夢だった。鏡の国のアリス(わたし)は、私に優しくないようだ。



まさにロリ

あ、違う。そこまで幼くはないわ。10代半ばの自分の顔が鏡に映し出されていた。私の動きに合わせる様に鏡の向こうの私も動く。鏡の国のアリスは、紛れもなく反射された私の姿である。現実逃避終了。


「…なんで!?」

もう一度言おう

「なんで!?」

見た目は子供、頭脳は知らない。中身は子供から見たらおばさん(三十路手前)。どこぞの名探偵君より酷い。おばさん若返って誰得なのよ!叫びたい気持ちでいっぱいだった。

「なーんーでーよぉー!」

ベッドにあった可愛らしいクッションを放り投げる。机に直撃し、上の物が落ちたが気にしてられるか!うぉりゃああ!とクローゼットを開ける。英国風可愛らしい家具が更にむかつく!可愛いけど私の趣味じゃない!そして中身をみて絶望。


「…コスプレしろってか…」

制服一式、袋かぶって掛かっていました。一度クローゼットを閉める。デカイくせして主張するように制服だけ掛かってんじゃないわよ!
ふらふらと机に近づく。クッション投げて落ちたものを拾う。通帳。ん?通帳。書かれてる名前、My name。Oh…中身を見てみると、私が入社してからこの前までに貯め込んだ金額が記されていた。将来の為、とコツコツ貯めてきたウン百万。これはね、将来の為であって過去の自分の為のお金ではないのよ?

ぎゅっと通帳を抱きしめる。涙が溢れ出てきた。

「うぅ…あんのクソ後輩末代まで呪ってやる…」

最早呪いの言葉しか出てこない。
この後、若々しい母と父のエアメールを見て絶望で叫び声をあげるのだが以下省略。つまるところ、絶望人生第2ラウンドがスタートしたということらしい。アイツまじ呪う。

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