何か変わったかと言ったら…きっと何かが変ったし、変わってないと言ってしまったら、確かに何も変わってはいなかった。私はいつも通り、生きている。



「さて、高等部の校舎は今日一般入試で外部の人間が来ているが、お前たちは気にせずテストを受けろー」

一般入試当日、高等部の校舎では入試試験を取り行っている。中等部は進級テスト。義務教育で退学と言う事はないが、高等部のクラス分けに影響する。…ここでわざと点数を落としたら、白布君と同じクラスになれるのかしら?なんて邪念が頭を横切った。
なんで本条が普通科に居るんだ、なんて怒られてしまいそう。くるり、シャープペンを回す。こそこそと、隣の席の子が話しかけてきた。

「本条さん、なんだか今日は機嫌が良いですね」
「…そう、見えるかしら?」
「ええ、いつもより素敵です」

あ、いつも素敵なんですけどね!とその子は笑った。なんて反応していいのか分からず、取りあえず「ありがとう」と笑っておいた。
窓の外を見る。流石に高等部の校舎は見えない。早く、学校終わらないかしら。まだ1つ目のテストすら受けていないというのに、頭はそれでいっぱいだった。




▽△▽



「あ、」
「…どうしました?本条さん」
「いえ…」

テストも全て終わり、さて塾へ向かおうという所で私は気づいた。受験終わったら、白布君塾に来ないじゃない。…そうよ、ここの入試の為に塾に通っていたんだもの。私は、ずっとあそこに通い続けるけれど彼は…。

「あの、本条さん!」
「はい?」
「え、ええと…この後クラスの皆でご飯を食べに行くのですけど…よろしければ本条さんも…」

え?と周りを見渡すとクラスの何人かが私を見ていた。苦笑する。私、こういうのには参加したことがないのだけれど。小声で私は声を出した。

「私が行っても、みんなに気を遣わせるだけだわ」
「そ、そんなことないです…みんな、私も本条さんとお話ししてみたくて…」

段々と小声になる彼女に「ごめんなさい」と謝った。

「私、今日会わないといけない人が居るんです。ごめんなさい」
「…あ、そ、そうなんですね…失礼しました…」
「えっと…天童さん」
「は、はい!」
「きっと、高等部に上がっても一緒のクラスでしょうから、懲りずに誘ってくれると嬉しいです」
「え、あ…も、もちろんです!」
「今日はごめんなさい、それではまた明日」
「ま、また明日!」

ぶんぶんはち切れんばかりに手を振る天童さんに笑って手を振り返した。…さて、彼は何処かに居るかしら。あちらの試験はもうだいぶ前に終わってしまっているけれど。




「白布君」
「あ、本条」

彼は簡単に見つかった。もし居るとしたら校門か、塾だろうと思っていた。彼は校門前に居た。良かった、見つかって。私は彼に駆け寄る。

「待ってた」
「そう思った。どう?試験の塩梅は」
「…んとにレベル高いなここは。結構難しかった」
「そう?白布君なら普通に合格してると思うけど。あの程度」
「なんで内容知ってんだ」
「今日私たちがやっていたテスト、入試問題だもの。受験者と同じテスト受けて点数で高等部の組み分けするのが通例なのよ?」
「…実力主義って怖いな」
「そう?」

いつもの事だから特に気にしていなかったけど、これは普通の出来事では無いらしい。学年上がる時はいつもテストでクラス分けしていたから、特に気にした事は無かった。

「俺は勉強ほどほどに、バレーを真剣にやるよ」
「それでいいと思うわ、白布君は」
「…なぁ本条、ちょっとだけ体育館って見れないか?」
「バレー部?白布君牛島さんを見たいのよね?」
「ああ」
「じゃあ高等部の体育館ね…大丈夫だとは思うけど。案内しましょうか」

私と白布君は歩きだした。「牛島さん見たら絶対凄いって思うから」なんて少し楽しそうに話す白布君。…あんまり興味はないのだけれど。高校に入ったら、白布君は違うクラスで、バレー部に入って…近くなるはずの距離が遠ざかるように感じてしまう。…塾での時間が好きなのに。はぁ、と気付かれない様に溜息を吐いた。


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本条さんと同じクラスの天童さんは、某ゲスさんの妹さんです。

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