「わからん」
「…あの、これ中学の範囲なんですけど…」
「中学の範囲なのだろう?なら知る筈がない」
「……は、あ…?」
「中学でやるものは中学で、終わった事は全部忘れる」

ごめん琴葉ちゃん本当にごめん。頭が机に付くんじゃないかと思うくらいに天童先輩が頭を下げる。私は、最早笑いしか出てこなかった。


「意味がわかりません…」
「ああ、意味がわからない」
「……はは、はははははは」
「ちょ、琴葉ちゃん壊れた!?」

両手で顔を覆う。むりです、私には無理です。ははははは。とひたすら引き攣った笑い声をあげた。天童先輩は英語が出来ないと確かに言った…確かに、言ったが…まさか牛島先輩の英語能力の低さがこれほどの物だなんて、誰が想像できたことか…。


「よく1年から2年に進級できましたね…運動出来るからといって勉強免除というわけではないでしょう…?」
「俺らの同級生の勉強できる瀬見君にテスト前スパルタで叩きこまれたんだよ」
「その瀬見先輩とやらの心中をお察しします…。さぞ大変でしたでしょう…この人相手にするのに…」
「『なんでここまで解説して、わからないって言えるのかわからない』ってよく言われてたからね若利君」

この人、きっと英語という物を受け入れられない頭をしているんだわ。きっとそう。だから何をしたって無理なのよ、ええ無理なんです。私は瀬見先輩という方を尊敬します。よくこの人を進級させましたね、と。私は、もう

「で、本条ちゃん…若利君にえ」
「むりです無理です本当に無理ですすいません無理ですごめんなさい」
「そこまで嫌がるの…」
「子供に教えるより難しいと思います」
「子供の脳より知力が低い若利君の頭…」

私たちは無言になった。当本人牛島さんだけは何も気にせずに目の前にあるハヤシライスを口に運んでいた。凄いですね、この人。私もう食欲が失せてしまいました。





「お前ら、何やってるんだ?」
「あ、英太君。琴葉ちゃん、この人がさっき言ってた瀬見英太君」
「えっ!?」
「え?」

私は顔をあげる。キョトンとした男性生徒と目が合った。この方が瀬見先輩…!私は立ち上がり瀬見先輩の手を握る。「え、琴葉ちゃんなんて大胆…!」と天童先輩が言った。大胆?何がでしょうか。なにか、少し遠くからガタッ!と凄い物音が聞こえた。そんなことは気にせず私は真っ直ぐ瀬見先輩の目を見つめる。


「ええと、瀬見先輩?」
「お、おう…?」
「私、瀬見先輩を心のそこから尊敬します」

ビシッと牛島さんを指さす。相変わらず、牛島さんからは声が聞こえないのできっとまだハヤシライスを食べているのでしょう。


「よくこの人進級させられるレベルまで英語叩きこみましたね。尊敬です。ええ、心の底から尊敬いたします。すごいです」
「………は、」
「…あー…英太君。この子、女王様。特進1年生の本条琴葉ちゃん」
「あー…察した」
「流石英太君」

ぎゅっと瀬見先輩の手を握り締める。

「瀬見先輩って人にものを教えるのがとても上手な方なのですね」
「英太君最終的にブチ切れるんだよね」
「?怒ったら覚えられるんですか?」
「ちがう、そうじゃない」
「怒った瀬見は確かに怖いな」
「若利、黙れ」



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「そういえばさっきから1年の白布と、天童の妹がこっち見てるんだけど」
「すっごい睨まれてるねぇ…頑張って英太君」
「は?」
「きっと敵として見做されたよ」

壁破壊しそうなレベルで壁掴む栞と、すごい複雑そうな顔する白布君がそこに(…!)

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